日本酒の味を決めるようそは「米」と「水」にあります。
その半分を占める「米」は、普段私たちが触れている米とどのような違いがあるのでしょう?米によって本当に酒の味が変わるのでしょうか?
米の違いによる酒の違いもあわせて徹底解説します!
酒造好適米とは?
酒造りのために研究された米
「酒造好適米」は「酒米」とも呼ばれ、日本酒造りに適した性質をもつ米の総称です。
アルコールを作り出すのに欠かせないでんぷんの割合が多く、かつ醸した酒の雑味の原因になるたんぱく質の割合が少ないという性質があります。
一般には、食用の米としては適さず、逆に食用の米を酒造りに活かすのも技術的に難しいんだとか。
普段食べているお米との違い
酒造好適米は、食用のお米と全く違う性質を持っています。特に目立って違うポイントは「大きさ」「心白」の2つ。
・大きさ
酒造好適米は食用のお米と比べて一粒一粒が大きめ。
日本酒造りにおいては、「精米」といって米の表面を削る工程があります。米の粒が小さいと削り出すときに割れやすくなってしまうので、粒が大きくなるように品種改良されてきました。
・心白(しんぱく)
酒造好適米の特徴の2つ目は、心白の割合が大きいこと。心白とは、米の中心の白くて不透明な部分です。
心白にはたんぱく質の含有量が少ないので、心白だけを削り出して作った日本酒は雑味がほとんどないキレイな味わいになります。また、心白自体に麹菌が入りやすいという性質があるので、よい米麹が作れます。
食用の米に比べて、酒米は吸水率や麹の作りやすさが優れていることから、醸造適性が高いとも言われます。
日本酒造りにおいては、苦みや雑味の原因になるたんぱく質が多過ぎない米を選ぶのです。
覚えておくべき酒造好適米たち
有名な酒造好適米の魅力を一つひとつ丁寧に語り始めると、品種ごとに一本ずつ記事が書けてしまうほど深い魅力があります。
ということで、本記事では簡単に有名酒米をご紹介!
酒米を切り口にした飲み比べができるようになるだけで、日本酒の楽しみ方も倍になります。ぜひ覚えてみてください!!
酒米の王様・生産量日本一「山田錦」
主な産地は兵庫県
日本酒好きでこの名前を見たことがない人はいないでしょう。酒米では全国一の生産量を誇ります。
米質がやわらかいので良い麹を作ることができ、比較的高精米しやすいことから吟醸酒を造るのに向いています。
全国新酒鑑評会で上位を獲得する酒に使われていることが多いことから“酒米の王様”と呼ばれるようになりました。
山田錦を使用して造られた日本酒はまろやかでコクのある味わいになります。ちなみに「獺祭」も原料米には全てこの山田錦を使用しております。
酒米のNo.2 米王国新潟代表「五百万石」
主な生産地は新潟県
山田錦と並んで酒米の二大トップとして知られています。醪にしても溶けすぎないので、心白が大きいのが魅力的な品種。
淡麗でスッキリとした味わいの日本酒になります。
米が硬く脆いので、高精米したときに米が砕けてしまいやすいという特徴があるために、吟醸仕込にするのには向いていないと言われます。
突然変異で生まれた淡麗な「美山錦」
主な生産地は長野県
1978年、長野県の農場試験場で、突然変異で誕生したのが今の長野県を代表する「美山錦」。
美山錦で仕込んだ酒は五百万石に似た、スッキリとした味わいになります。
吟醸王国山形の酒米「出羽燦々」
主な生産地は山形県
「山形県がうんた酒造好適米にふさわしく、印象の強い名前にしよう」といって生み出されたのが「出羽燦々(でわさんさん)」。
美山錦の遺伝子を引き継いでいて、美山錦の弱点であった栽培時の丈が長すぎることから倒れてしまうことを回避するために造られました。
すっきりとキレのある酒を醸すのに適しており、出羽燦々で醸した吟醸酒は格別でしょう。
最古の酒米の逆襲「雄町」
主な生産地は岡山県
雄町(おまち)は酒米としては最古の品目であり、山田錦や五百万石のルーツとなった酒米です。
栽培が非常に難しかったことから、新しく出てきた山田錦や五百万石にシェアを奪われ、絶滅の危機に瀕していました。しかし、岡山県の酒造メーカーが中心となって救ったことで今、ここまで輝きを取り戻しています。
雄町で仕込んだ日本酒は山田錦よりも、豊かな味わいでコクがある酒を楽しむことができます。
新登場するサラブレッドたち
クラシックで生産量の多い酒造好適米だけではなく、最先端の研究から出てきた素晴らしい酒米で醸された酒を飲み比べるのも楽しみの一つですよね。サラブレッド、未来のホープともいえる酒米を紹介します!
山田錦×五百万石=「越淡麗」
越淡麗とは“山田錦”を母、“五百万石”を父とする酒造好適米。15年にわたる研究を経て2004年に誕生しました。
五百万石のデメリットを補い、山田錦と五百万石のいい所を掛け合わせたサラブレッドです。五百万石の弱点でもあった、50%以上精米できないことを克服しました。
品種の名前は”淡麗”でありながら山田錦を思わせる、濃厚で豊かで芳醇な酒を仕込める品種になっています。
美山錦×山酒4号=「酒未来」
幻の酒「十四代」を醸す山形県の高木酒造の高木社長が中心になって、「美山錦」と山田錦の血統である「山酒4号」を交配させて作った酒造好適米です。酒造会社自ら酒米の交配と育種を手掛けた例は他になかなかありません。
硬めですっきりとした味が特徴的です。
まとめ
食用の米と全く異なった特徴を持ち、醸造適性が非常に高いのが酒造好適米です。
今回ご紹介した品種以外にも、酒造好適米はもっとたくさんの種類があります!
ご自分の好きな日本酒の酒米を調べてみたり、気になった酒米で造られたお酒を飲んでみたり、いろんな楽しみ方をしてみてください。