ヨーグルトや味噌、醤油など、発酵食品には欠かせない存在である「酵母」。私たちが大好きなお酒も、酵母の力がなければ作り出すことができません。
酵母って本当に偉大…!
ということで今回は、「ワインの酵母」について詳しくご紹介していきます。
ワイン造りには欠かせない酵母
酵母ってどんなもの?
酵母とは、自然界に存在する小さな微生物類や菌類の総称です。酵母を英語にすると「イースト」。パンの材料として馴染み深いですよね。
実はパンだけでなく、ワインを造るときにもこのイースト(酵母)が必要になってくるのです。
酵母がワイン造りに必要なワケ
なぜワイン造りに酵母が必要なのでしょうか?
それは、酵母がワインの原料となるブドウ果汁にアルコールを発生させるからです。
ブドウ果汁の中には糖が含まれていますが、酵母はその糖をアルコールと炭酸ガス(二酸化炭素)に分解します。これがいわゆる「アルコール発酵(主発酵)」です。
なお、この酵母によるアルコール発酵のメカニズムは、19世紀のフランスで数多くの功績を残した科学者、ルイ・パストゥールによって解明されたと言われています。
酵母によって変わる味わい
酵母菌は、ブドウ糖をエサにして生息しています。
そのため、エサであるブドウ糖が多ければ多いほどたくさん働き、反対にブドウ糖が少なければその活動は緩やかになります。
ワインの一般的なアルコール度数である10~13度に到達するためには、酵母にたくさん働いてもらう必要があるので、原料となるブドウの糖度はとっても重要なんですよ!
そのため、ワイン農家の人たちはワインに適したブドウになるように様々な工夫をしています。
例えば、収穫を遅らせて完熟させブドウの糖度を上げたり、収穫したブドウを陰干しして水分を飛ばし糖度を上げたりしています。
このような農家さんたちの努力もあって、良質なワインが出来上がっているんですね。
甘口か辛口かを左右する
また、発酵をどのくらい続けるかによっても甘口や辛口の違いが出ます。
早い段階で発酵をストップすれば、ワイン中に糖がたくさん残るので甘口のワインに、長く発酵させるとワイン中の糖が少なくなるので、辛口でアルコール度数が高めのワインになるのです。
さらに発酵で使用する酵母が違うと、前駆体の分解方法も異なるので、ワインの香りや味わいにも影響を及ぼすことがわかってきました!
ワインをおいしくする酵母
酵母はアルコール発酵を行うだけにとどまらず、ワインをおいしくするという役割も担っています。以下では、ワインを美味しくするための製法をいくつかご紹介していきましょう!
バトナージュ
ワインを醸造する過程で、酵母や酒石などは澱となって沈殿します。その澱の中には、酵母由来の旨味成分が含まれているのです。白ワインを醸造する際には、その旨味成分をワインに抽出するため、澱とワインを撹拌するという手法がとられることがあります。この手法を「バトナージュ」といいます。
バトナージュを用いることにより、ワインの味わいは複雑でまろやかに変化します。酵母にはアルコール発酵だけでなく、ワインに旨味を与えるという働きもあるわけですね。
シュール・リー
バトナージュ同様、酵母がワインに旨味を与える製法に、同じく白ワインの醸造で行われたことのある「シュール・リー」製法というものがあります。
「シュール・リー」とは、フランス語で「澱の上」という意味。一般的に白ワインを醸造する際は、発酵終了後に澱を取り除くのですが、「シュール・リー」製法では澱を底に残した状態でワインを数カ月間保存します。そうすることで、澱の中の酵母からアミノ酸が溶け出し、ワインに複雑味や豊かなコクが加わるのです。
目に見えないほど小さな酵母ですが、その働きはとても偉大なものですね。
自然酵母と培養酵母、それぞれのメリットとは?
一口に「酵母」と言ってもかなりの種類があり、自然界に存在する酵母は数千以上いるとも言われています。
しかし、ワイン造りに使われる酵母は自然酵母と培養酵母の2種類のみ。この2つには一体どのような違いがあるのでしょうか?
自然酵母と培養酵母の違い
酵母は、自然界のあらゆるところに存在しています。
もちろんワインの原料となるブドウにも、酵母は付着しています。この酵母のことを自然酵母(野生酵母)といいます。
実はブドウの果汁というものは、そのまま放っておくと自然酵母がアルコール発酵を始め、自然とワインができあがるのです。アルコール発酵のメカニズムが発見される何千年も前から人々がワインを造りをしていたのには、このような理由があったわけですね。
放っておくと発生する自然酵母に対し、培養酵母はワインの醸造のために純粋培養された酵母のことをいいます。培養酵母は、生産者のこだわりや品質を安定してワインに反映させることができます。
それぞれのメリット
自然酵母はその土地のブドウに生息するため、その酵母を使用するとそれぞれの土地の個性がより出しやすいと言われています。ただし、酵母は上述したように何千種と存在しますが、ワインの醸造に適した酵母というのは、その中でもごく限られた酵母のみ。そのため、自然酵母では必ずしも思ったとおりに発酵が進むとは限りません。
これに対し、培養酵母は優良な酵母を選んで純粋に培養させたもの。いずれもワイン醸造に適した酵母になるため、味や質を安定化させることができます。さらに培養酵母は、生産者が目指す味や原料とするブドウと相性の良い酵母を選択できるので、味や品質の安定したワインを作ることができます。
現在では培養酵母を使用するワイナリーが圧倒的に多いですが、「自然酵母」と「培養酵母」のどちらが優れているというわけではありません。
自然酵母を使うか培養酵母を使うかの選択は、生産者の考え方次第のようです。
まとめ
ブドウや産地の違いがワインの味わいに影響をもたらすように、実は酵母もワインの味わいに違いをもたらす要因となるため、酵母は多くのワイン生産者の注目の的となっています。
小さな小さな微生物ではありますが、ワイン造りに欠かすことのできない酵母の働きは、本当に大きなものですね。まさに、ワインの縁の下の力持ち、といったところではないでしょうか。
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