数々の飲食店が軒を連ねる荒木町(東京・新宿区)の中で、今アツい視線を集める「science bar INCUBATOR(サイエンスバー インキュベータ)」。石畳の路地に建つ老舗割烹、ギター片手に店を回る流し……今なお江戸情緒漂うこの街でサイエンスとは、はて。もとリケジョとして行かずにはいられない。
【1】多くの人が交流できる空間を目指し、研究畑から飲食畑へ
英語辞典を開いてみると、incubatorには「ふ卵器」や「細胞培養器」という意味があるらしい。
北里大学理学部生物化学科を卒業後、理化学系商社を経て大学での研究に従事したオーナー・野村卓史さん。「研究者や一般の方含め、色んな人が交流できるような空間を『育む』という意味を込めて店名をつけました。巷では『理系バー』って呼ばれちゃってますけど(笑)」。
店内を見渡すと、思わず「なつかしい!」と声をあげてしまうものから初めて目にする専門的な機材までさまざまなアイテムを見つけることができる。例えば、お通しの干しいちじくが入ったプラスチック製のケース。主に遠心分離機を用いた実験に使われる「遠沈管(えんちんかん)」というのだそう。
次にこれ、箸置きになっているのは微量の試料を扱うときに使うマイクロチューブ、取り皿には細胞培養に使うシャーレ、と随所にサイエンスバーとしてのこだわりが見え隠れする。
棚に目をやると、一般向けの図鑑から専門書まであらゆるサイエンスな本がずらり。
さらに、なかなか着る機会のない白衣をこちらでは試着でき、ちょっとした研究者気分にお酒も進む。キッチンドランカーならぬラボドランカーの一丁上がり。
【2】試験管やビーカーがグラス代わり 熱燗はアルコールランプで
イチ押しはワインの飲み比べ。ワインはすべてワイン好きの野村さんが厳選したもの。イタリア産やフランス産、国産など、赤白それぞれレギュラー3種類と日替わり1種類の計8種類(税抜1800円、以下すべて税抜)がなんと試験管で提供される。
それを何とも愛らしいサイズのビーカーでいただく。
ワインは花のような甘みを感じるものから輪郭のはっきりしたものまで飽きさせないチョイスだ。飲み比べは4種類1000円、ボトルは3500円~。
また、アルコールランプで提供されるものもある。三角フラスコに入った日本酒「久保田 千寿」(850円・ハーフ450円)の熱燗だ。はて、最後にアルコールランプを使ったのはいつだったろう。ゆらゆらと青と橙に揺れる炎になんだかワクワクする。
(ビーカーがお猪口代わり)
卓上のリトマス試験紙で遊ぶこともできる。「たしか酸性だと青が赤に・・・あれ逆だっだかな」なんて思わずはしゃいでしまうこと間違いなし。
エイヒレ(600円)を炙るのにもアルコールランプが活躍する。
そのほかのメニューは専門業者から仕入れる生牡蠣(480円)や豆腐とトマトのカプレーゼ風サラダ(750円)、ブルーチーズ蜂蜜添え(650円)、ソーセージ赤ワイン煮(850円)など。
【3】本物の機材で分析する「遺伝子占い」
ドーパミンとセロトニンの型を調べることで、慎重・楽観・好奇心旺盛などの観点から性格を占う「遺伝子占い」(1回2000円)も好評だそう。実際の検査などで使われる機材を使った分析結果は2営業日以降、来店時もしくはメールで知らせてくれる。
店内奥には顕微鏡もあり、ねずみの胎児やカエルのひざの骨などさまざまなサンプルを見ることができる。どれも発生生物学を専門とする野村さんらしいチョイス。
(上画像はカエルのひざの骨)
一見寡黙そうだが丁寧に解説をしてくれる野村さんの人柄も魅力のひとつだ。「荒木町は色んなタイプのお店があってとても懐の深い街。文理問わず色んな方に来てもらいたいですね」。サイエンスとバーが絶妙に融合した「science bar INCUBATOR」は大人をワクワクさせてくれる空間だった。
※価格はすべて税抜き
店名 | science bar INCUBATOR |
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住所 | 東京都新宿区荒木町7 新駒ビル 1F |
電話番号 | 03-5925-8832 |
営業時間 | 18:00~翌2:00 |
定休日 | 日・祝 |
食べログHP | http://tabelog.com/tokyo/A1309/A130903/13171266/ |