リキュールを楽しむ場合、その殆どがテキーラをベースとしたカクテルです。もちろん、ショットやストレート、ロックなど、割材を使わずに飲まれることもありますが、基本的には蒸留酒ですのでアルコール度数が高く、さまざまなカクテルなどに使用されることが多いようです。
そんなリキュールのなかでも、かなりアルコール度数が高いということで知られているのが、「テキーラ」です。
とはいえ、テキーラのアルコール度数といわれてもピンと来ない方も多いでしょう。今回、ここではテキーラのアルコール度数やなぜアルコール度数が高いのかを解説します。ぜひ、参考にしてみてください。
意外に知らない基礎知識!蒸留酒とは?
蒸留酒とは、醸造酒をさらに蒸留して作るアルコール度数の高いお酒です。この説明だけでは、難しいと思いますので以下で「醸造酒」「蒸留酒」「混成酒」それぞれ3つの特徴と違いについて説明します。
醸造酒
ワインやビールを代表とする「醸造酒」は、ぶどうなどの果物や大麦といった原料を糖化させ、酵母の力を使い発酵させてアルコールを生み出しすお酒です。
そのため、原材料の味わいを比較的ダイレクトに感じられるのが特徴。ビールやワインの他に、日本酒、紹興酒、シードルといったお酒も醸造酒に区分されます。
蒸留酒
蒸留酒は、醸造酒を蒸留させて作ったお酒を指すカテゴリー。醸造酒を加熱、蒸発させたものを冷やすことでより純度の高いアルコーを生み出すことができるのです。つまり、醸造酒に比べてアルコール度数が高いのが1番の特徴となります。
代表的な蒸留酒は、この記事で紹介しているテキーラの他ウイスキー、焼酎、ウォッカ、ジン、ラム、ブランデーなどが挙げられます。
混成酒
混成酒は、醸造酒や蒸留酒に果物などの香味等を加えて作るお酒です。日本だと、自宅で作ることもある梅酒が代表的ですよね。
その他、カシスや各種リキュール類なども混成酒のカテゴリーに区分されます。
テキーラってどんなお酒?
テキーラは、メキシコが発祥となっている蒸留酒の1種。原材料にサボテンを使用していると勘違いしている方も多いようですが、実は間違い。テキーラの原材料は「リュウゼツラン」という植物です。サボテンに似た多肉植物のため、勘違いしやすいのかも知れませんね。
リュウゼツランは、テキーラの原料になるまで育てるのに非常に多くの時間がかかると言われています。平均して5年以上もかかるのだそう。また、長期間育てたリュウゼツランはテキーラに甘味をもたらすため、テキーラの中でも高級品として扱われる事が多いのです。
テキーラのアルコール度数は決まっている
「テキーラをショットで…」と、いっている人を見ると、「この人はお酒が強いんだろうなぁ」と、誰もが思うはずです。映画や漫画、テレビドラマなどでは、小さなグラスにテキーラを入れたものを一気飲みしてはくだを巻いて話しているキャラクターが登場しますが、それだけアルコールが高いのだろうと、ある意味で「恐ろしいお酒」というイメージがついてしまっているようです。
しかし、テキーラのアルコール度数は、35%~55%の間と法律で定められているのです。ワインなどと同様に、原産地呼称としてつくらているお酒なため、アルコール度数を60度や70度でつくることは違法となります。
さらに、殆どのテキーラはアルコール度数が40度程度であり、ウイスキーやラム酒、焼酎の原酒などとさほど変わりません。
テキーラをショットで思い切り飲んで楽しんでる映像やシーンを多く見ていることから、非常にアルコール度数の高い危険なお酒というイメージがありますが、焼酎の原酒も同様の飲み方をすれば同じように酔っぱらうのです。
テキーラのアルコール度数の決め方
冒頭でお伝えした通り、テキーラは蒸留酒ですので、一旦醸造酒となるお酒がつくられます。サボテンというイメージが強いのですが、テキーラの原料はリュウゼツラン(龍舌蘭)という植物です。英語では、ブルーアガベと呼ばれており、パイナップルの頭部分のようなカタチをしたとてもユニークな植物です。
そして、このアガベを乾燥させて、粉砕して醪となるアガベの汁を搾り出します。ワインのように、ブドウを破砕する工程に似ていますが、その醪を3日間ほど発酵させ7%程度のアルコール度数となったら、蒸留を行います。蒸留は、単式蒸留という方法が用いられており、この蒸留を2回行います。
1度目だけではまだ雑味などが残っているため、不要なテキーラの原酒は捨てられ、再度蒸留が行われます。二回蒸留を行うと、原酒のアルコール度数は既に50%ほどになっているので、これを薄めたり、そのままで出しているわけです。
熟成度合いで名前が変わる!テキーラ特有の専門用語をご紹介
テキーラは、熟成の度合いによって名前(クラス)分けがされるお酒です。
・オロ:ブランコに他のクラスのテキーラをブレンドしたもの。
・ブランコ:樽熟成期間 0~2ヶ月。
・レポサド:樽熟成期間 2ヶ月~1年。
・ アネホ:樽熟成期間 1~3年。
・ エクストラアネホ:樽熟成期間 3年以上。
上記を覚えておけば、テキーラを選ぶ際の参考になるはずですよ!
ウォッカやウイスキー、ジンなどの蒸留酒との度数の違い
アルコール度数が強いイメージのあるテキーラですが、その他の蒸留酒と比較した場合、意外にもアルコール度数は低い部類の蒸留酒だと言えそうです。
先述したように、テキーラは原産国であるメキシコの法律によってアルコール度数を35%~55%にしなくてななりません。つまり、最も高いアルコール度数でも55%を超えることはないのです。
一方、その他の蒸留酒はどうでしょうか。テキーラ・ラム・ジン・ウォッカの「世界四大スピリッツ」を比較してみましょう。
例えばウォッカ。日本で流通しているウォッカであれば40~50%前後の銘柄が多いかもしれません。しかし、世界一アルコール度数が高いお酒としても知られている「スピリタス」もウォッカの一種。つまり90%を超える銘柄の物も少なくはないのです。
ラムに関しても、40~50%のものを多く見かけますが「ロンリコ151」などのように、70%を超える高いアルコール度数のものもあるほど。また、クラフトジンがブームとなっているジンも多くの銘柄が40%~50%程度。
このように比較してみると、テキーラはイメージでは「強いお酒」という認識があるかもしれませんが、蒸留酒の中ではさほど強い部類とはいえなそうです。
テキーラのショットの飲み過ぎには要注意
日本で最も有名なテキーラの飲み方として挙げられるのが「ショットスタイル」ですよね。パーティーなどの盛り上がるシーンでテキーラのショットを飲む光景が、よく見られます。
キンキンに冷やしたテキーラは飲みやすく、通常よりも量を飲むことができるかもしれません。しかし、アルコール度数40%ほどのものをそのまま飲むわけですから、飲み過ぎは身体に負担がかかります。あれよあれよと飲んでいる間に、泥酔してしまう人も珍しくはないのです。
盛り上がる際に、テキーラショットを飲んで楽しむのは良いですが、「テキーラショットは酔いやすい」ということを念頭においた上で、自身の体調と相談しながら適量を楽しむようにしてください。
テキーラのショットを楽しく飲むため工夫
テキーラショットを楽しく飲むためには、いくつかの工夫があります。
それが、ショットに添えられるライムやレモンといった柑橘類の果物。お店などでテキーラショットをオーダーすると、レモンカットやライムカットが添えられてきますよね。実はあれ、テキーラの原産国であるメキシコでもポピュラーな飲み方なんです。
なぜテキーラにライムを添えられるようになったか、理由は定かではありません。しかし、ライム等に含まれているビタミンCには胃の粘膜を保護する効果があり、さらには二日酔いの防止の効果も期待できるのだそう。つまり、意外にも理にかなった方法なんです。
また、単純に柑橘の酸味がプラスされることでアルコール感を減少させ飲みやすくする効果もありますよね。
ライムは飲む前?飲んだ後?
日本では、テキーラを飲んだ後にライムをかじるのが一般的なようですが、実は現地メキシコではテキーラを飲む前にライムをかじるの人もいるのだとか。確かに、先述した「胃を保護する」といった観点からすれば飲む前のほうがメリットが大きそうですよね。
しかし、これはあくまで個人の好みの問題。テキーラを飲む前に口の中をさっぱりさせたい人は最初に、飲んだ後のアルコール感を和らげたい人は最後にライムを一口かじって楽しんでみてください。
塩をなめるのがメキシカンスタイル
ライムに加え、メキシコでは飲む前に塩をなめるのも一般的。テキーラショットと塩、ライムはセットで出されることも多いのだそう!
最も一般的なショットの楽しみ方は、以下の通り
1.親指と人差指の間のくぼみをライムで湿らせて塩を乗せる。
2.塩をなめて、テキーラを一気に飲み干す
3.ライムをかじる
4.指に残った塩をなめる
パーティーなどでは、このスタイルで楽しんでみるとより一層盛り上がるかもしれませんよ!
また、塩は岩塩を使うのがおすすめ。ミネラルが豊富で粒が立っている岩塩は、通常のサラサラとした塩よりも乗せやすく塩味の滑らかさがあります。
テキーラの美味しく楽しむための飲み方
罰ゲームやパーティードリンクとして定着している影響か、ショットで楽しむことが一般的だと思われがちですが、テキーラはその他の飲み方でも美味しく飲めるお酒です。
以下では、ショットで楽しむテキーラの美味しい飲み方をいくつかご紹介していきます。
ゆっくり時間をかけて飲む
テキーラショットとは真逆の提案にはなりますが、テキーラはゆっくりと時間をかけて楽しむ飲み方もあります。
特に、プレミアムテキーラと呼ばれる部類のテキーラは、ショットで楽しむよりも手で温めたりして温度を変えながらゆっくりと楽しむのが一般的。お酒全般に言えることですが、温度が低いとお酒の特徴的な香りが立たず、ある程度温度を上げることで香りが立ちやすくなるのです。
イメージとしては、ウイスキーのストレートをちびちびと楽しむ形に近いですね!最初は少し冷えた状態のテキーラを、手でじわじわと温めながら飲めば、テキーラが持つ特有の香りや味わいをより鮮明に楽しむことができるでしょう。
チェイサーと一緒に飲む
また、テキーラをストレートで楽しむ場合はチェイサーを用意するのがおすすめ。お水を飲むことで口の中がリセットされるため、温度ごとの味わいの違いを感じやすくなるはずです。
また、テキーラの本場メキシコでは専用のチェイサーとして「サングリータ」という飲み物を飲むこともあるのだそう。サングリータとは、トマトジュースがベースとなった飲み物。お店によってレシピは異なりますが、トマトジュースとオレンジシュースを混ぜ合わせたものに、タバスコや胡椒などの香辛料を加えたものが一般的。サルサソースを飲み物にしたようなイメージが近いかもしれません。
日本人からしたら、「それ美味しいの?」と感じてしまうかもしれませんが、メキシコでは「サングリータが美味しい店は良い店」と認知されているほどポピュラーな飲み物なのだそう。
テキーラと同様、ショットグラスで提供されるため「テキーラを一口飲んだらサングリータを飲む」といった形で楽しまれているようです。
基本的には好みに応じて作れるものなので、もし試してみたい方は自宅で作ってみてくださいね!
カクテルにして飲む
その他、割り物を用いてカクテルのようにして楽しむのもおすすめ!
テキーラを使ったカクテルで有名なのは、「テキーラサンライズ」「テキーラサンセット」「マルガリータ」「モッキンバード」「ストローハット」といったもの。バーでオーダーすれば、必ず伝わるはずの有名なカクテルなので興味がある方はぜひ試してみてください。
その他、シンプルにトニックやソーダで割るだけの飲み方もおすすめ。
自宅で楽しむ際などは、最初にストレートに近い形で楽しんで、好みに応じて少しずつトニックを足していきながら自分に丁度いい割合をみつけてみてください。トニックは上質なものを使用することで、より美味しいカクテルに仕上がりますよ!
初心者におすすめ!アルコール度数の低いテキーラ
アルコール度数が高いと思われているテキーラの中から、初心者にも飲みやすい低アルコールのテキーラをご紹介します。
ドン・アグスティン アネホ・クリスタル
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画像:amazon.co.jp
通常樽で1年以上熟成させることにより、色がウイスキーのような色に近づくアネホ。しかし、こちらの「ドン・アグスティン アネホ・クリスタル」は、樽熟成の後にろ過を行うことで、独特の色味を取り出しているため名前同様クリスタルのように透き通っているのです。
アルコール度数は、テキーラを名乗れるぎりぎりの38%。アネホらしいフレーバーを味わうのにもおすすめです。
アズール
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画像:amazon.co.jp
テキーラに、ストラスを加えた爽やかな青い色が特徴の「アズール」。度数が35%と、テキーラの中ではかなり低い部類に入ります。
アガベの甘みと、シトラスの爽やかな風味が感じられるため初心者にもおすすめです!
パトロンXO カフェ
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厳密にはリキュールに分類される商品ですが、こちらの「パトロンXO カフェ」は人気のテキーラパトロンを用いたコーヒーフレーバーの飲み物。アルコールは35%です。
テキーラの味わいを生かした、甘いテイストから女性などからも人気を博しています。テキーラをそのものを試すのは少し怖い、という方はまずこちらでテキーラのニュアンスを確かめてみてはいかがでしょうか?
アルコール度数より味わいに個性を楽しむのがテキーラ!
原酒のアルコール度数が60%になった場合、加水して55%ギリギリのアルコール度数で出すメーカーもあれば、35%にまでアルコールを薄めるようなメーカーもあります。
ショットで飲めばどれでも味わいは一緒だと思われがちですが、醸造中に使用されている酵母の種類であったり、蒸留後に熟成させられている樽の種類などによって、香りや味わいが全く変わってきます。
さらに、レポサド、アネホ、エクストラ・アネホといったように、熟成期間の長さによってその名称が変わるのもテキーラのおもしろいところです。なかなかテキーラを飲み比べする機会が無いという方も多いでしょうが、実はさまざまなメーカーのテキーラを探してみると、こだわりの製造法でそれぞれに強烈な個性を持ったテキーラが見つかります。
テキーラのアルコール度数は低いわけではありませんが、高過ぎるから危険というイメージとは違っています。ぜひ、テキーラの真実を知って、生産者こだわりの1杯を楽しんでみてください。