ウイスキー好きなら、1度は飲んでみたいと思うであろう「ミズナラ樽」を使ったウイスキー。種類によっては、市場にほとんど回らないその希少性と世界で評価されるその味わいについて徹底解説します。
希少性や味わいを知れば、飲んだ時の感動が大きくなること間違いなし!他の樽材の特徴や簡単にミズナラの風味を楽しめるテクニックも紹介するので必見です!
ミズナラ樽とは?
ミズナラ樽とは、ウイスキーの醸成に使われる木樽の一種で、日本に多く自生するミズナラの木を使った樽のことです。白檀(ビャクダン)や伽羅(キャラ)などの香木を彷彿とさせる、独特の香りが特徴です。
ちなみに白檀や伽羅は線香に使われることも多いため、日本人には馴染み深い香りだと言えるでしょう。
ミズナラとは
そもそも、ミズナラという言葉自体聴き慣れない人も多いと思いますが、ミズナラとは主に北海道などに生息する落葉広葉樹の楢(ナラ)の木の一種です。
どんぐりが実る木といえばイメージが湧くと思います。水分が多く燃えにくいことからミズナラと呼ばれます。
ナラの木は英語でオークと呼ばれ、ウイスキー樽として古くから使われています。代表的なものにはアメリカオーク、ヨーロピアンオークの2種類があります。
ウイスキーの熟成樽の他にも、古くから床材や家具、船舶などの材料にも使われています。
ナラの木は世界中に数百もの種類がありますが、ミズナラは日本の広葉樹林を構成する主要な樹木として北海道から九州まで広く分布しています。
ミズナラ樽の特徴
独特の香りが特徴のミズナラ樽ですが、ミズナラ樽で長期熟成されたジャパニーズウイスキーはその華やかな香りで世界的な評価を獲得しています。
また、ミズナラ樽は日本固有のオークなため、ジャパニーズオークとも呼ばれています。
今ではミズナラ樽はジャパニーズウイスキーを象徴する存在の1つとなっていますが、ミズナラ樽は元々ウイスキーの貯蔵に使われるシェリー樽の代用品でした。
ミズナラ樽の歴史
ここからは、ミズナラ樽の歴史を紹介します。歴史を知ることでよりミズナラ樽熟成のウイスキーを飲む際の感動も増えること間違いなし!
ミズナラ樽は元々はシェリー樽の代用品
元々ウイスキー、特にスコットランドで生産されるスコッチウイスキーやその流れを踏襲したジャパニーズウイスキーは、ミズナラ樽ではなくシェリー樽で熟成させるのが主流でした。
ミズナラ樽のウイスキーを初めて利用したのは国産ウイスキー造りに最初に挑戦したサントリーです。
山崎蒸留所で国産ウイスキーの製造を手掛けていた当初は、ヨーロッパから輸入したシェリー樽を輸入して使用していました。
その後1941年から始まった太平洋戦争によってシェリー樽などの輸入が困難となったことにより、国内で最適な樽として選ばれたのが北海道が主産地のオークの1種のミズナラでした。
ミズナラ樽での熟成が困難を極める
ミズナラに代替が決まったものの、ミズナラは木の香りが強く当初は必ずしも評価が高くありませんでした。
加えてそもそもミズナラの木自体は高級家具の材料に使われていましたが、材質的には原酒が漏れやすいことから、材木の選別と製樽作業は大変困難な状況だったと言われています。
しかし企業努力により、新樽で熟成した場合は強すぎた香りですが、樽を繰り返し使うことで白檀や伽羅などの香木を思わせる日本に馴染みの深い独特の香りをウイスキーにもたらすことがわかったのです。
ミズナラ樽からの代替がすすむ
素晴らしいウイスキー熟成ができることがわかったミズナラ樽ですが、ミズナラ樽が主流だったのは戦後しばらくまででした。
戦後安価な海外産のオーク材が輸入できると次第にミズナラ樽からの代替が進んでいきます。
というのも、ミズナラの木が樽材に使用できるほど成長するまでには長い年月がかかるのに加えて、加工の難しさもありコストも高くなってしまうからです。
実際に樽にできるミズナラの条件は樹齢200年以上と、一般的に高級と言われているオーク樽よりも高級品とされています。
こだわりのメーカーも多い
コスト面からミズナラ樽で熟成するウイスキーが減少しつつありますが、独特の香りにこだわるウイスキーメーカーもあります。
例えばサントリーは稀少なミズナラ樽を維持するためにミズナラ林の保護・育成に注力し、樽用の樹木を選定する際にはブレンダー自らが森に赴くこともあるそうです。
また富山県砺波市の三郎丸蒸溜所では、地元の林業家と木工職人と連携して地元のミズナラを使ったウイスキー造りに挑戦しています。
ミズナラの歴史をみると市場に出回る数が少なく大変貴重なのも納得できると思います。飲む機会があればありがたくいただきましょう!
そのほかにウイスキーの貯蔵に使われる樽の種類
ミズナラ樽の他にもウイスキー貯蔵に使われる樽は多くの種類があります。
それぞれの木の特徴や他のお酒の風味がウイスキーに深みを与えているため、ぜひ好みの樽を見つけてみてください!
バーボン樽
バーボン樽は、その名の通りバーボンウイスキーを貯蔵するための樽のことです。
元々スコッチウイスキーはシェリー樽を用いられていましたが、樽詰めから瓶詰め輸送が主流になることでシェリー樽不足となり、バーボン樽が使われるようになりました。
スコッチウイスキーやその他のウイスキーの貯蔵に用いられますが、特に現在のスコッチウイスキーの90%はバーボン樽を使っていると言われています。
スコッチウイスキーとの相性は抜群と言われており、バーボンの風味とアメリカンオーク由来の香りがモルトウイスキーをまろやかにしてくれます。
シェリー樽
シェリー樽はその名の通りシェリー酒を貯蔵していた樽を再利用したもので、シェリー酒とはスペイン南部、アンダルシア州のヘレス地方で造られる酒精強化ワインの一種です。
シェリー酒自体は様々な種類があるので、シェリー樽がウイスキーにもたらす効果を一括りにはできませんが、シェリー樽自体は他の樽と比較して強く華やかな香味が特徴です。
シェリー樽に関して覚えておきたいのが、シェリー樽によってウイスキーの樽熟成が始まったことです。
18世紀のスコットランドで重税に苦しめられた生産者たちが樽に入れて隠して保管していたところ、それまでのウイスキーになかった豊潤な香りと味わいが生まれたそうです。
ウイスキーの貯蔵に使われる木材
世界中で、ウイスキーやワインなどの樽にはオーク材が使われています、
オーク材が使われる理由は、オーク材の持つタンニンやポリフェノールなどが独特の香味を作るのに必要であり、また繊維の目が細かいので漏れにくく保存に適しているからです。
ここではミズナラの他にも主に樽材として使われるアメリカンホワイトオーク・コモンオーク・セシルオークを紹介します。
アメリカンホワイトオーク
北米産のホワイトオークという木材の種類で、ウイスキー産業で使用されている樽の90%がアメリカンオーク製で、バーボン樽に至ってはほとんど全てと言われています。
バニラなどの甘いフレーバーとナッツなどの香ばしさをウイスキーに与えると言われています。
コモンオーク
ヨーロッパ産オークの二大オークのひとつです。
コニャックやブランデー、ワインの熟成に使われています。
コモンオーク樽で熟成されたモルト原酒は、独特の赤褐色となり、甘くて重みのあるフルーティーさを与えると言われています。
セシルオーク
このセシルオークがヨーロッパ産オークの二大オークのもうひとつです。
主にワイン樽材として使用されますが、近年ではスコッチウイスキーでも使用されています。
ミズナラを使用したウイスキー
ミズナラを使用したウイスキーの銘柄を紹介します。
ミズナラ樽はとても貴重なものなので、見つけた際にはぜひ飲んでみてください。
山崎 ミズナラ
世界一に輝いたこともある日本を代表するジャパニーズウイスキー「山崎」ですが、ミズナラ樽で熟成した限定の「山崎 ミズナラ」も販売されています。
大変希少性が高く、プレミア価格がつく銘柄なので見つけたらぜひ飲んでみて欲しいです。
山崎については「今さら聞けない!世界一に輝いたジャパニーズウイスキー「山崎」ってどんなウイスキー?」で詳しく解説しています。
シーバスリーガル ミズナラ12年
世界的に有名なブレンデッドウイスキーの1種であるシーバスリーガルの名誉ブレンドマスターが日本ファンのために作った「シーバスリーガル ミズナラ12年」
そもそもシーバスリーガルが飲みやすいのに加えて、ミズナラで寝かせられることによってより甘みを感じることができる銘柄です。
イチローズモルト ミズナラウッドリザーブ
株式会社ベンチャーウイスキーが生産する「イチローズモルト ミズナラウッドリザーブ」
秩父で熟成されたイチローズモルトの生姜を彷彿とさせるブレンディングがミズナラの風味とマッチしています。
こちらも生産量が限られているので見かけたらぜひ購入を検討してください!
簡単にミズナラの風味を楽しめるミズナラスティック
ウイスキー瓶の中に入れるだけで、ミズナラの風味を楽しむことができるミズナラスティック。ウイスキーのボトルの中に12時間以上7日間以内漬け込むと風味の変化を楽しむことができます。
ミズナラ樽のウイスキーは高いので、少し試してみたい方はスティックからはじめてみるのも良いかもしれません。
ミズナラスティックと果実などを漬け込む様々なアレンジレシピが公開されています。
また、アメリカンホワイトオークなどの棒フレーバーもあるのでぜひ気になった方は試してみてください。
まとめ
ウイスキー好きであれば1度は飲んでみたいミズナラ樽ウイスキーの魅力や希少性を知るとより興味が湧きますよね!
飲む機会があればぜひ飲んで欲しいです。
樽の性質によってお酒の風味が変わってくるので、樽の特徴にも注目してお気に入りの銘柄を探してみるのはいかがでしょうか?