カクテルや食前酒として、世界中で親しまれているベルモット。
ベルモットはカクテルにはもちろん、食前酒として、また料理にも使える便利なお酒で、カクテルの王様と呼ばれるマティーニの重要な材料の1つとしても有名です。
ベルモットというと「名探偵コナン」のキャラクターのコードネームとしても国内で知名度が広まりましたが、ベルモットがどのようなお酒なのか詳しく知っていますか?
いざ選ぶとなると、ロッソ、ビアンコ、スイート、ドライなど、たくさんの種類があり迷ってしまいますし、ボトルにベルモットと見やすく表記されていないこともあり少しハードルが高いですよね。
今回はベルモットの基礎知識や保存方法、カクテルや料理、さらに伝説のバーテンダーのマティーニのレシピなどもご紹介します。ベルモットをお店でオーダーしたり、購入する前にぜひ参考にしてくださいね。
ベルモットの基礎知識
まずはベルモットがどのようなお酒なのかしっかり知っておきましょう。以下では、種類ごとのテイストや製法を紹介します。
おすすめの銘柄については「カクテルでも!ベルモットの人気おすすめランキングTOP10 【専門家監修】 」でご紹介しているのでぜひご覧ください。
そもそもベルモットとは
ベルモットは、白ワインをベースにブランデーを加え、様々なハーブやスパイスの風味を加えてつくられる、カクテルや食前酒として親しまれているフレーバードワインです。
ワインといっても、日本の酒税法上では果実酒ではなく甘味果実酒として扱われています。
主に、イタリア、フランス、スペインなどで生産されており、産地ごとにそれぞれテイストが異なりますが、ハーブなどの風味の影響を受け、やや苦味があるのが特徴です。
スイートベルモット
主にイタリアでつくられ、糖分を加えカラメルで色が濃くなっているベルモットです。別名イタリアン・ベルモットとも呼ばれています。
着色しているベルモットは「Rosso(ロッソ)」と呼ばれ、着色を行わず、フレッシュでさっぱりとしたテイストのベルモットは「Bianco」と呼ばれます。
RossoはBiancoに比べて全体的に香りや苦味などが強いのが特徴ですが、どちらも甘口なベルモットです。主にイタリアでは食前酒として楽しむ習慣があります。
ドライベルモット
主にフランスでつくられ、名前の通り辛口でドライなテイストのベルモット。別名フレンチ・ベルモットとも言われています。
名前通りかなりスッキリとしたテイストで、カクテルはもちろん料理の隠し味にも使われています。
使い方はお好みで
スイートベルモットとドライベルモット、どちらを使うのが良いかはどのようなカクテルに、どのような料理にしたいのかによって変わってきます。
例えば魚料理などの隠し味に使いたい場合は甘味を抑えたドライベルモットがおすすめですし、甘めのマティーニをつくりたい場合はスイートベルモットを使いましょう。
スイートベルモットを使う場合は濃いめにしたいか薄めにしたいかによってRossoかBiancoかを決めると、理想の味に近づきます。
肉料理にフランベする場合などは、少量のRossoを使うとちょうど良い風味付けになります。
ベルモットの保存について
ベルモットを食前酒としてそのまま飲むことが多い場合は良いですが、カクテルや料理に使う場合は少量ずつしか使わないため余ってしまう場合が多いです。
ベルモットはワインをベースにしているため、比較的保存しやすいブランデーやウイスキーなどの蒸溜酒とくらべると、しっかりした保存が必要になってきます。
1番良いのは早く飲みきることですが、保存しなければならない場合の方法をご紹介します。また、あらかじめ使用する量が決まっているのであれば、ハーフボトルなどもおすすめです。
ベルモットはワインと同じ
基本的にベルモットはワインと同じ保存方法が適しています。コルクを乾燥させないように横向きに、温度変化や揺れの少ないワインセラーで保存するのがベストです。
ワインセラーをお持ちの方はせひ試してみてください。
ワインセラーがない場合の保存方法
上記はベストな方法ですが、ワインセラーがない方がほとんどだと思います。そのような場合には冷暗所での保存が適しています。
カクテルにする場合は冷蔵庫、食前酒にする場合は野菜室がおすすめです。
カクテルは基本的に氷を使うので、材料そのものを冷やし氷が溶けて水っぽくなることを防ぐ意味もあります。
食前酒の場合は冷やし過ぎてしまうと香りが立ちにくくなってしまいますので、温度変化と高温多湿、さらに直射日光を避けることができる野菜室での保存をおすすめします。
ベルモット使ったカクテルの王様マティーニ
ベルモットは、日本ではカクテルに使われることがほとんどです。特にマティーニは、カクテルの王様と呼ばれるくらい有名なカクテル。
007シリーズのジェームスボンドが「ウォッカマティーニを。ステアせずにシェィクで」と言った名台詞から名付けられた「ボンド・マティーニ」や、イギリスの元首相ウィンストン・チャーチルが好んで飲んだことで知られる「チャーチル・マティーニ」など、様々な作り方が存在し、マティーニのレシピだけで本が出版されるほどのレシピが存在しています。
この自由度の高さや、基本的にはシンプルレシピが故に非常に奥が深いカクテルです。ここでは、そんな様々な伝説を持つマティーニの歴史や豆知識をご紹介します。
マティーニの由来
マティーニの由来は主に2つの説があります。
1つは、マティーニの原型になったカクテル(ジン&イットと言われています)に使われていたベルモットがイタリアのマルティーニ・エ・ロッシ社製であった説。
もう1つは、1860年代はじめにサンフランシスコのオクシデンタル・ホテルのバーテンダー、ジェリートーマスが考案したマルチネス・カクテルが発展しマティーニが生まれたと言う説です。
この他にも諸説ありますが、多く語られているのはこの2つの説です。どちらも現在のマティーニとはレシピが異なり、現在に至るまで様々なバーテンダーの試行錯誤によってつくられたカクテルなんですね。
マティーニの味の歴史
マティーニと言う名前が文献に登場したのは、20世紀のはじめです。
どの文献がはじめに発表したのかは2つの文献で議論が分かれていますが、そのどちらもほぼ同時期の発表なので、どちらの文献が正しいにせよ20世紀はじめにはマティーニが登場していたことになります。
当時のレシピを見てみると、ベルモットはイタリアのスイートベルモットが使われており、テイストも甘めのマティーニが主流だったことがわかります。
現在はかなりドライ・辛口のマティーニが主流ですが、時代の流れとともに変化したと考えられます。
有名なマティーニ6種
そんな様々な逸話があるマティーニですが、ここでは映画や有名なエピソードの中で登場したマティーニや登場当時のマティーニなどをご紹介します。
ジェームス・ボンドのウォッカマティーニ
007シリーズで登場し有名なったマティーニ。
作品ごとに様々なレシピが登場しますが、1番有名なレシピを紹介します。
普通、ジンを使いステアでつくるマティーニですが、「ウオッカマティーニを。ステアせずシェークで。」とボンドはバーテンダーにオーダーします。
このセリフが大流行し、ついにはボンド・マティーニとして現実のBARをにぎわせました。
ドライの極地!チャーチル・マティーニ
イギリスの首相だったウィンストンチャーチルが飲んだと言われているレシピです。
レシピはベルモットのボトルを横目で見ながらドライジンのストレートを飲むという奇想天外なもの。
もともとかなりドライなマティーニを好んでいたチャーチル。
当時イギリスとベルモットの産地であるイタリアは当時戦争中だったためベルモットを入れなかったと言うエピソードが一般的です。
キングスマンに登場する反骨精神のマティーニ
2014年に公開されたスパイ映画「キングスマン」には007へのオマージュとして、またチャーチルマティーニを超えるマティーニが登場します。
主人公が「マティーニを。無論、ウォッカではなくジンで。」さらに「ベルモットは入れず、ボトルを10秒間、かすめ見ながらステアで」とオーダーするシーンは反響を呼びました。
マティーニの生みの親?ジェリー・トーマスのマルチネス
マティーニの生みの親とも言われるジェリー・トーマスの当時のレシピは、甘めのジンであるオールド トム ジンと、スイートベルモットを1:2の割合で、アロマチックビターズとマラスキーノ、シュガーシロップを少しずつ入れてつくられる甘めのカクテルです。
このカクテルを出発点に、どんどんドライになっていったんですね。
ミスターマティーニ今井清 氏のマティーニ
日本のカクテルを語る際に必ずといっていいほど話題になる伝説のバーテンダー。
彼のマティーニはゴードンジンとノイリープラットというベルモットを10:1で、更に材料や器具を冷蔵庫で保管し、しっかりとステアしてつくられたと言われています。
オレンジビターズを加え、レモンピールも行なっていたようですが、お客さんに合わせて配合をコントロールしていたようです。
毛利マティーニ
銀座の名店「モーリ・バー」のマスター、毛利隆雄 氏がつくる毛利マティーニ。
こちらもかなりドライなマティーニですが口当たりがよく、ドライなのに飲みやすい芸術的なマティーニとして有名です。ジンはオールドのブードルスジンを使っていましたが、終売になってしまったため、現在はNo3ジンとシップスミスをブレンドして提供しているそう。
ステアの回数はかなり多く「100回ステア」と言われるほど。使用するベルモットはもちろんドライベルモットです。
ベルモットを使った主なカクテルレシピ
マティーニ以外にも、ベルモットを使ったカクテルはたくさん存在します。以下では、ベルモットを使った代表的なカクテルをレシピと一緒にご紹介します。
マンハッタン
レシピ
・ウイスキー:45ml
・スイートベルモット:15ml
・アンゴスチュラビターズ:1dash
・マラスキーノチェリー(赤):1個
使用グラス:カクテルグラス
技法:ステア
作り方
1:マラスキーノチェリー以外の材料をミキシンググラスに入れてステアした後、カクテルグラスに注ぎます。
2:カクテルピンに刺したマラスキーノチェリーをそっと落として完成です。
ベルモットを使った代表的なカクテル。マンハッタンの夕焼けをイメージしています。
お好みでレモンピールを浮かべて楽しんでくださいね。
マンハッタンは「カクテルの女王「マンハッタン」とは?魅力や飲み方・作り方(レシピ) 」でアルコール度数やテイストを詳しく解説しています。
ネグローニ
レシピ
・ドライジン:30ml
・カンパリ:30ml
・スイートベルモット:30ml
・オレンジスライス:1枚
使用グラス:オールド・ファッションド・グラスまたはロックグラス
技法:ビルド
作り方
1:氷を入れて冷やしたグラスの水分を捨てて、各材料を注ぎ、軽くステアします。
2:最後にオレンジスライスを乗せて完成です。
イタリアのネグローニ伯爵の食前酒として制作されたカクテルです。
その後、伯爵の許可を得てカクテルの名前にもなりました。
カンパリのほろ苦さとスイートベルモットの甘さがちょうどよく調和しているカクテルです。
アメリカーノ
レシピ
・スイートベルモット:30ml
・カンパリ:30ml
・ソーダ:適量
使用グラス:オールド・ファッションド・グラスまたはロックグラス
技法:ビルド
作り方
1:氷を2~3入れて冷やしたグラスの水分を捨てて、スイートベルモット、カンパリを注いで軽くステアします。
2:冷やしたソーダを注ぎ、軽くステアして完成です。
イタリアを代表するリキュールを使ったカクテルです。
ネグローニにはジンが入りましたが、アメリカーノには入っていないため、よりスイートベルモットのテイストを楽しむことができます。
カンパリについては「超万能リキュール!?あなたの知らない「カンパリ」の世界!」で詳しく解説しています。
そのままベルモットを楽しむ方法
カクテルの他にも食前酒としてワインと同様に楽しむことができるベルモット。
ここではおすすめのベルモットの飲み方、さらにベルモットに合うおつまみもご紹介します。
飲み方
ストレート
全てのベルモットに共通しておすすめなのがストレートです。
ワイングラスに注いでさながらワインのように楽しみます。
ワインよりアルコール度数は高いですが、蒸留酒ほどではないので香りや深いテイストを楽しみながら飲むことができますよ。
特におすすめなのはドライベルモットです。
ドライなテイストの奥に様々な香りやテイストを楽しむには1番の方法です。
ロック
イタリアのスイートベルモットにおすすめな飲み方です。
甘口のスイートベルモットを冷やすことによってすっきりと楽しむことができます。
Biancoが特におすすめで、氷が溶けるごとに少しずつ変化するテイストを楽しめるはずです。
ソーダ割り
ドライベルモットとスイートベルモット、特にRossoにおすすめな飲み方です。
Rossoはストレートでは濃く感じる方はぜひ試してほしい飲み方で、ちょうど良い甘さに調節して味わうことで今まで隠れていたベルモット特有の香りが感じやすくなります。
ドライベルモットは更にすっきり楽しむことができますし、レモンを加えれば更に飲みやすくなりますよ。
レモンやライムと合わせる
ロックスタイルに酸味が強い柑橘系を合わせるだけでかなり印象が変わります。
さっぱりと飲みやすくなるので、ドライベルモットにおすすめの飲み方です。
冷やすとどうしても香りが閉じやすくなってしまうので、冷やしたくない方はストレートに加えてもても楽しめますよ。
合わせるおつまみは
基本的にベルモットは食前酒のため、そのまま楽しむ場合は前菜のような軽いものがおすすめです。
ドライベルモットは白身魚のカルパッチョやピスタチオなどのナッツ。
スイートベルモットの場合なら、生ハムやクリームチーズなどがおすすめですよ。
食前酒については▷食前酒に向いているお酒ってどんなもの?食前酒の効果について調べてみた で詳しく解説しています。
料理に使う
白ワインとブランデー、ハーブで作られるベルモットは様々な料理やソースに使われています。
料理にワインを使う方は多いと思いますが、ベルモットのその複雑なテイストは両氏の隠し味にもぴったりなんです。
家庭でもできる作り方をご紹介するので、普段の料理が少し華やかになること間違いなし!
カレイのソテーにベルモットのソースを合わせる
上品なカレイのソテーにベルモットのソースを合わせるレシピです。
カレイは片栗粉と小麦粉を1:1でつくった下地をまぶして余分な粉をよく落としてから、バターを敷いたフライパンの上で焼いていきます。
ソースのレシピ
・ドライベルモット:90ml
・バター:15g
・塩:適量
・黒胡椒:適量
・顆粒コンソメ:1~5g
・レモン汁:5ml
作り方
1:ベルモットを弱火でおよそ半分になるまで煮詰めます。
2:レモン汁以外の材料を合わせたら、カレイをソテーしたフライパンに移して弱火で温めます。
3:最後にレモン汁で味を整えたら完成です。
さっぱりとした中にコクがあるベルモットソースです。
お好みでレモン汁の量は調節してくださいね。
他の白身魚や、ホタテなどにも合うのでぜひ試してみてくださいね。
赤身肉のステーキの仕上げに
ステーキの仕上げにベルモットをフランベさせて香りをつける方法です。
45mlほどをステーキの調理工程の最後にフランベすることによって、ベルモットの華やかな香りを食材に移すことができます。
ポイントとしては必ず強火で行うことと、周辺に燃える物を置かないこと。
弱火だとアルコールが着火しにくいため、香りが移りにくくなってしまいます。
火柱が上がるフランベは、パーティーなどでも驚かれること間違いなしですよ!
ベルモットは合わせるステーキソースによって選びましょう。
甘口のステーキソースや塩胡椒メインで食べる場合はドライベルモット、醤油ベースのソースはスイートベルモットがおすすめです。
野菜のグリルや素揚げにベルモットとバルサミコ酢のソースを合わせる
新鮮で旬の野菜をグリルして、コクのあるベルモットとバルサミコのソースに合わせると、レストランのような料理に大変身します。
基本的なレシピをご紹介しますが、素揚げなどの油分が多い調理法の場合はオレンジジュースやバルサミコ酢の酸味を、グリルの場合はマンゴーやベルモットの甘みを足してあげるとより野菜の味が引き立ちますよ。
レシピ
・マンゴー:1/2個
・オレンジジュース:30ml
・ベルモット(Bianco):60ml
・バルサミコ酢:5~10ml
・バター:15g
・塩:適量
・黒胡椒:適量
・固形ブイヨン:半分~1個
・ナツメグ:少々
作り方
1:マンゴー、オレンジジュースはフードプロセッサーでジュース状に合わせておきます。
2:バター以外の材料を弱火で煮詰め、煮立ったら1を合わせて煮立てます。
3:バターを入れてさらに煮立て、どろっとするまで煮詰めれば完成です。
糖分が多いレシピなので焦がさないようにじっくり火を入れましょう。また、マンゴーの色味を綺麗に出すためバルサミコ酢とベルモットは白いものがあれば綺麗に仕上がりますよ。
スパイスはお好みでナツメグ以外にもクローブなども合うのでチャレンジしてもてくださいね。
まとめ
ベルモットは様々なシーンで使える便利なお酒です。
食事を出さないBARでは、カクテルに使われることがほとんどですが、ご紹介したように使い方はたくさん存在します。
家庭でマティーニをつくってみたけど余ってしまった際にはぜひ料理にも活用してみてくださいね。