日本酒の味わいでよく使われる言葉が「甘口」「辛口」。
辛口ブームと言われていた時期もあり、「日本酒は辛口!」と言い切る方も多いのではないでしょうか。
しかし現在は、個性的な日本酒も多く様々な味わいの銘柄があります。そこで、今回は「甘口の日本酒」の魅力をお伝えしましょう!甘口日本酒とはどういうものなのかを解説しながら、おすすめの甘口日本酒をランキング形式で15本ご紹介していきます!
日本酒の甘口とは?
ラベルに「辛口」と書かれた日本酒は見かけますが、「甘口」と記載された商品は少ないですよね。では、どういったものが甘口なのでしょうか。
実際のところ、呑んだ本人が「甘い」と感じれば甘口だと言えます。しかし、甘口の日本酒というのは様々な要素があり、甘口とひとくくりにすることは難しいのです。そこで、判断の仕方を解説しましょう。
『日本酒度』
日本酒の甘辛を判断する上で、一つの目安となるのが日本酒度。
日本酒度とは、お酒の中にどれくらい糖分が入っているかの指標。日本酒度計(浮秤)を使用し、水との比重を測定します。糖含量が多ければ比重が大きくなりマイナスに傾き甘口、糖が少なくアルコール含量が多ければプラスとなり辛口となります。
では、マイナス表記であれば全て甘く感じるのかと言うと、そうではありません。しかしながら、甘口・辛口の指標としては非常に参考になる数値だと言えるでしょう。
『酸度』
日本酒の製造工程では、乳酸、コハク酸、クエン酸とった様々な酸が発生します。
日本酒の酸は果物などの酸と違って、酸っぱいという印象より味を引き締めたりキレをよくする役割を果たします。これにより、酸度が高いものはキレが良く辛口と感じ、酸度が低いものはより甘さを感じやすくなるでしょう。
しかし、甘酸っぱい日本酒も存在するため、酸度だけでも甘口とは決められないということです。
『アミノ酸度』
酸の中でも、重要なのがアミノ酸度。文字通り日本酒に含まれるアミノ酸の量ですが、グルタミン酸、アラニン、アルギニンなど種類によって苦味やコクなどが変わるのです。
アミノ酸は多ければ旨みが多くふくよか、少なければ軽快で淡麗なお酒となります。
アミノ酸の量によっても酸度や日本酒度の感覚は変わってくるため、甘口と感じるのは全体のバランスが重要です。
『香り』
メロンやバナナのような酢酸イソアミル、りんごのようなカプロン酸エチルといった香り成分を持つお酒が多くあります。こういったフルーティーな香りは、実際には日本酒度がプラスだったとしても甘口だと感じる場合があり、香り高いお酒は影響が大きいでしょう。
上記で紹介したように、日本酒の味わいに影響を与える様々な要素があります。これらは目安になりますが、甘いと感じる度合いは人それぞれ。実際に呑んでみて、自分好みの甘さを見つけてみてくださいね!
甘口の日本酒を選ぶ際のポイント
日本酒度を参考にするのは、甘口日本酒を選ぶ上では勿論ポイントです。しかし、もう少しこだわって製造方法で甘口の日本酒を見極めてみるのはいかがでしょうか。
多くの日本酒でみられる『三段仕込み』
日本酒の安定した醸造方法として、「段仕込み」という手法が深く関係します。
日本酒造りは、水・麹・蒸米・酵母を小さめのタンクに入れて酛(もと)というまさにお酒の元を造るのが主流。この酛が完成したら「段仕込み」に入ります。
酛を大きいタンクに移し、水、麹、蒸米を投入する「初添」という作業。この後、1~2日仕込みをしない日を挟み、更に量を増やして水、麹、蒸米を投入する「中添」。翌日、更に水、麹、蒸米を投入する「留添」。
この「初添」「中添」「留添」の工程を「三段仕込み」といいます。三段仕込みが終わった後、温度を調節しながら発酵させていくのです。
『四段仕込み』
段仕込みとは麹と掛米を入れる回数で、「三段仕込み」が基本ですが、「四段仕込み」と書かれた日本酒を見たことはありませんか?
三段仕込みの翌日、もう一度麹と掛米を入れる方法を四段仕込みといいます。実は、五段、六段…といったものも中にはあり、回数が増えるほど甘口傾向になります。
そしてこの四段仕込み、実は様々な種類があるのです。
麹、蒸米、お湯で甘酒をつくって加える「甘酒四段」、うるち米やもち米を蒸して醪に入れる「うるち四段」「もち四段」、蒸米に水と酵素剤を入れて糖化させてから醪に添加する「酵素四段」、かつては酒粕を添加する「粕四段」という方法もあり、それぞれ甘さの種類が違います。
『全麹仕込み』
通常の日本酒の仕込みに使う蒸米と麹米の割合、は8対2という場合が多いのですが、この全麹仕込みは0対10ということになります。つまり、麹と水だけで仕込まれたお酒。甘さだけでなく、麹由来のふくよかさと香ばしさが残っているのが特徴です。
『貴醸酒』
日本酒を造る手法の三段仕込み、この三回目の「留添」の際、水の代わりに日本酒を使用するという贅沢な造りをするのが貴醸酒。
お酒を加えることによりアルコール度数が一定以上に達して発酵が緩やかになり、分解されるはずだった糖が多く残り甘くなるのです。
とろりとした口当たりと熟成をさせて琥珀色になったものが多くあります。
味わい深い甘口の日本酒15選
それでは、甘口の日本酒としておすすめの商品を15個ランキング形式でご紹介します!目安としての日本酒度も記載しますので、参考にしてみてくださいね。(日本酒度は、醸造年度によって変わる場合があります)
15位 伝家のカスモチ原酒 弥右酒衛門(日本酒度ー20)
1790年創業の大和川酒造店は、自社田や契約栽培農家で収穫された無農薬、減農薬無化学肥料の良質な米を使用して仕込みを行っています。
こちらは、福島県の酒造好適米「夢の香」を65%精米して醸した純米酒。通常の日本酒を仕込む際と比べ、倍の量の麹を使っているため、コクのある甘口で、滑らかな口当たりと豊潤さがあります。
ローストビーフやお肉のソテーなどと一緒にどうぞ。
14位 伊根満開 (日本酒度ー20)
京都の「伊根の舟屋」。海上に浮かぶように建つ舟屋の様子は、観光スポットとしても人気です。そんな向井酒造は、1754年創業という歴史ある蔵。
女性杜氏が醸したこちらの「伊根満開 」は、赤い古代米を使用した鮮やかな色の日本酒。ベリー系の甘酸っぱい香りと、爽やかで軽い甘み。
ベリー系のフルーツや、オレンジピール、またはビターなチョコレートとペアリングを楽しんでみてください。
13位 越後鶴亀 ワイン酵母仕込み 純米吟醸 (日本酒度ー32)
わかりやすくおめでたい商標をと「鶴亀」の名を冠した(株)越後鶴亀。全国初の地ビール「エチゴビール」を立ち上げたことでも知られる蔵です。
新潟らしい淡麗辛口のお酒を造る他、現代の食生活に合った日本酒造りへの研究にも力を注ぎ、ワイン酵母で醸した「越後鶴亀 ワイン酵母仕込み 純米吟醸」はまさに白ワインを思わせるフレッシュな酸とフルーツのような香り。
15度前後で呑むのが一番バランス良くおすすめです。
12位 花巴 水酛×水酛 (日本酒度ー42)
「花巴」を醸す美吉野醸造(株)は、自然の淘汰と共存を意識した酵母無添加での酒造りに辿り着き、2017酒造年度より全てのお酒を酵母無添加で醸しています。
こちらの「花巴 水酛×水酛」は、生米と蒸米を水につけて乳酸菌を増殖させ、その水を仕込み水として使用する醸造手法「水酛」で醸し、その水酛で醸した純米酒を仕込み水の一部として使う、貴醸酒の手法で醸造されました。
チーズに似た酸と香りがあり、厚みのある甘酸っぱい味わいです。
11位 華鳩 貴醸酒8年貯蔵(日本酒度ー44)
広島県呉市にある榎酒造(株)は、1974年に全国で初めて貴醸酒を醸造した蔵で知られています。仕込み水の一部を日本酒で仕込む貴醸酒は、リッチな甘さのお酒。
「華鳩 貴醸酒8年貯蔵」は、その貴醸酒を8年熟成させたもの。とろみのある口当たりで、濃醇、熟成による複雑な香りが特徴です。
世界最大のワイン品評会のSAKE部門で何度も受賞しており、世界からも認められている同商品。
濃厚な料理、またはキャラメリゼされたデザートと相性抜群。
10位 満寿泉 貴醸酒 (日本酒度ー50)
海の幸、山の幸に恵まれた富山県富山市にある桝田酒造店。「能登四天王」と言われる三盃幸一元杜氏と共に、吟醸酒がまだ一般的でなかった頃から吟醸造りに力を注いでいました。
現在も酒質の向上に取り組む他、「お酒は文化とともにある」という考えのもと、伝統工芸や若いアーティスト、飲食店などが集まる街づくりもしています。
こちらの「満寿泉 貴醸酒」は、とろりとした甘さとカラメル感のあるお酒ですので甘口のお酒を飲みたい方におすすめ。
9位 大関 極上の甘口(日本酒度ー50)
兵庫の酒どころ「灘五郎」にあり、日本人なら誰もが知ってるであろう「大関」。
ワンカップのイメージが強い大関ですが、当時は固定概念を払拭する革命的な商品でした。若者をターゲットにし、コップで呑むことを格好良くアピールしていました。
この「大関 極上の甘口」も若い世代に受け入れられる日本酒です。10度程度に冷やすとすっきりとした酸が心地よいのでおすすめ。
8位 復古酒 (日本酒度ー50)
北海道旭川の地酒を造る男山(株)。日本百名山に数えられる大雪山の伏流水が仕込み水です。淡麗でキレの良い味わいの日本酒を多く造っていますが、この「復古酒」は全く逆の超甘口。350年前の古文書に残された仕込み方法で再現されたといいます。
麹の濃厚な甘みと、とろみのある口当たり。
前菜と共に食前酒として、チーズケーキなどデザートと一緒に食後酒としてお楽しみください。
7位 富久錦 純米 Fu.(日本酒度ー60)
兵庫県加西市にある富久錦株式会社 。こちらの「富久錦 純米 Fu.」は地元加西産のキヌヒカリで仕込んだ、アルコール度数8%という低アルコールのお酒で、富久錦の中でもロングセラー。
人気があるのは、やはりその味わい。原酒のまま低アルコールに仕上げているため、フルーティーさとすっきり感の中にコクもあります。
酸が高めでキリッとしているので、食中酒として大活躍するでしょう。
6位 醍醐のしずく (日本酒度ー40~ー70)
千葉県神崎でお酒を醸す(株)寺田本家は、全量無農薬米、蔵付きの菌で発酵させていく酒造り。
こちらの「醍醐のしずく」は、天然乳酸と蔵付き酵母を自然に採り込んだ水を使用する菩提酛(水酛)で仕込まれています。黄金色に輝くこの日本酒は、発酵食品特有の香りを持ち、香ばしさもあり、濃厚な甘み。
しかし、ロットごとにスペックは大きく変わり、味わいもかなり違うというマニアックなお酒です。
5位 讃岐くらうでぃ(日本酒度ー70)
香川県で「川鶴」を仕込む川鶴酒造(株)。この「讃岐くらうでぃ」の誕生は、丸亀市の郷土料理「骨付鳥」のラベルを使った日本酒を発売して欲しいという話が持ち上がったから。骨付鳥に合うよう、ゴクゴク呑める味わいに仕上げてあります。
大人の乳酸菌飲料といった印象で、クリーミー。3倍の量の麹を使用して豊かな甘さがあり、白麹による柑橘類のような酸が爽やかです。
氷に注いでロックで呑むのが断然おすすめ!!
4位 すず音(日本酒度ー70~-90)
今では定番でもあり人気のある低アルコール発泡清酒。このジャンルを最初に発売したのが宮城県の(株) 一ノ蔵です。
1998年に誕生した「すず音」は、当時の社長が海外研修でベルギービールに出会ったことがきっかけ。瓶内で発酵する低アルコールの清酒開発に取り組み、商品化しました。
グラスに注ぐと繊細な泡が立ち上り、甘酸っぱく爽やか、洗練された完成度の高い日本酒。乾杯酒にも最適です。
3位 澪(日本酒度ー70)
大きな酒造メーカー、宝酒造(株)の神戸・灘にある白壁蔵は、最新鋭の設備と伝統的な人の手で行う酒造りの両方を併せ持つ蔵。ここから2011年に誕生した「澪」は低アルコールのスパークリング清酒。
「澪」には、浅瀬の流れや船が通った後にできる泡の跡といった意味があり、“浅さ”を低アルコール、“泡の跡”を発泡酒に例え、日本酒の新しい流れ生み出そうという思いで名付けられました。
澪の大ヒットによりスパークリング清酒への注目度が高まったといえます。
2位 玉川 Time Machine(日本酒度ー90)
京都の木下酒造(有)は、2007年に迎え入れたフィリップ・ハーパー杜氏により銘醸蔵として全国に知られるようになりました。
名門オックスフォード大学卒業後、日本の英語教師派遣プログラムで来日し、日本酒の魅力に取り憑かれ、2001年に南部杜氏の資格を取得。日本酒史初、外国出身杜氏の誕生しました!
こちらの「玉川 Time Machine」はとろみのある口当たり、お米由来の香り、果実のような爽やかさにビターな味わいも重なっていく上質なお酒です。
1位 僧房酒(日本酒度-100)
1718年、河内長野で創業した西條合資会社が醸す「僧房酒」。日本最古の酒造文献「御酒之日記」に伝えられている僧坊酒製法を用いて再現したといいます。
琥珀色をしていて、発酵した香りと蜂蜜のような甘い香り、しかし口当たりはさらりとしていて、膨らみもあり、芳醇。
アルコール度数が15度前後で、ボリュームとキレも兼ね備わっています。
まとめ
単に甘口と言うだけでなく、甘口の味わいは奥が深いのです。その日の料理や気分に合わせて甘口の日本酒を選んでみれば、楽しみも増えること間違いなし。普段は辛口派の方も、甘口の日本酒を味わってみて、今よりもっと日本酒の世界を広げてみてはいかがでしょう。