近頃、ウイスキーが面白い。こう感じてきた方も多いと思いますが、ウイスキーといっても種類や銘柄も豊富であり、どこからどう手を付けてよいのか分からなくて困っているという声もよく聞きます。
今回紹介する「カティサーク(CUTTY SARK)」はバランスのとれた素晴らしいウイスキー。
村上春樹の小説『1Q84』『ダンス・ダンス・ダンス』『ねじまき鳥クロニクル』など数々の作品に登場したウイスキーとして話題となりましたが、その味わいの良さも手伝ってか、今でも日本で大人気の一本として知られています。
しかも、価格も手頃なんです!!
今回は、この魅惑のウイスキー「カティサーク」おすすめの飲み方やキーモルト、歴史や種類まで徹底的に解説します。
カティサークというウイスキー
カティサークはスコットランドで作られるスコッチウイスキーの1つです。ここでは、まずスコッチウイスキーについて詳しくご紹介します。
スコットランドの「スコッチウイスキー」
スコッチウイスキーは、日本でいう「地酒」のような立ち位置をスコットランド内で確立しているウイスキーです。
地域によって製法、味や香りが違うので、様々な種類のスコッチウイスキーが作られています。大まかに区別すると、ブレンデッドウイスキーとシングルモルトウイスキーに分かれます。
ブレンデッドウイスキーとシングルモルトウイスキー
カティサークはブレンデッドウイスキーに分類されます。
この2つの種類の大きな違いは、様々な蒸留所のスコッチウイスキーを混ぜて作るか、1箇所の蒸留所のみで作るかの違いです。
樽によって熟成させるのはどちらも共通して行われています。
この2種類については「今更聞けない!ウイスキーの「モルト」「ブレンデッド」ってナニ?」の記事内で詳しく解説しています。
ブレンデッドウイスキーとは
複数の蒸留所のシングルモルトに、大麦ではなく小麦やトウモロコシなどを使い作ったグレーンウイスキーを混ぜて作られるブレンデッドウイスキー。バランスが良く、スムースな味わいにも仕上げられています。
どのようなウイスキーをどのような配合で作るのかはほとんどが企業秘密ですが、使われるシングルモルトの銘柄は公表しているところも多く、これらはキーモルトと呼ばれています。
シングルモルトウイスキーとは
複数の蒸留所のウイスキーで作られるブレンデッドウイスキーに対して、1つの蒸留所で作られるのがシングルモルトウイスキーです。
基本的には同じ蒸留所で作られたウイスキーの樽を混ぜることによってテイストに統一感を出しています。樽を複数使わないで、1つの樽のみをボトリングしたものはシングルカスクと言われます。
「カティサーク」に使われているキーモルト
カティサークがスコットランドで作られる「スコッチ」で、複数の蒸留所のウイスキーを混ぜて作られる「ブレンデッドウイスキー」という種類だということはわかりましたが、そうなるとレシピが知りたくなってきますよね。
ウイスキーのテイストは、蒸留所の位置によって大まかに区別できます。もちろん、どのような場所で作られたウイスキーを使用したかによって、もちろんテイストは変わるのです。
次に、スコッチウイスキーが作られる場所と、カティサークに使われている代表的なキーモルトをご紹介します。
地域によって味わいが違う
スコッチは、基本的にピートとよばれる「泥炭」の香りが特徴的なウイスキーです。
このピートの香りが土地ごとによって違うので、蒸留所の場所によってテイストが違う一つの理由になります。
(ピートに関しては「スコッチになくてはならない存在!豊かな味と香りを生む「ピート」とは」の記事内で詳しくご紹介していますので、読んでみてくださいね。)
以下では、大まかな土地ごとによってのテイストの違いを解説します。
スペイサイド
マッカランやグレンリベットなど、スコッチの王道ともいえる有名な蒸溜所が集まっています。
飲みやすくスムースな味わいのウイスキーが多く、多くの人々に親しまれているウイスキーがたくさん生産されています。
ハイランド
ハイランドは、スコットランドの北部の大部分を占めている地域です。非常に広いため、ハイランドの中でも東西南北で区別することも。
そのため、様々なテイストのウイスキーが生産されていますが、東部と北部の方が癖はないのにピートを感じる印象です。
ローランド
スコットランドの南部に位置するエリアです。
スコットランドの首都があるこの場所は、経済成長と反比例して蒸溜所の数が減ってしまいました。
中心部に蒸溜所はなく、外側に6つの蒸溜所が現在も稼働しています。少し辛口に感じるテイストで、ピート香より麦芽を感じる印象です。
アイラ
アイラ島という島で作られるウイスキー。
癖が強いスコッチの代名詞アイラウイスキー。薬品の香りが特徴的で、好き嫌いははっきり分かれます。
好きな人は、アイラしか飲まないくらい愛好家が多い地域です。
キャンベルタウン
人口5000人ほどの小さな町、キャンベルタウン。かつては30以上の蒸溜所が稼働していましたが、今では3つのみの蒸溜所が稼働しているのみです。
ハイランドとアイラの中間くらいのテイストは、今も根強い人気を誇っています。
アイランズ
アイラ島以外の、小さな島で作られるアイランズウイスキー。
具体的にはスカイ島、オークニー諸島、ジュラ島、アラン島、ルイス島で作られるウイスキーです。キーモルトの1つ「ハイランドパーク」はこのアイランズウイスキーです。
それぞれ島の個性があり、テイストはそれぞれです。
カティサークのキーモルト5つ
カティサークには、5種類のシングルモルトが代表的なキーモルトとして使われています。
各キーモルトの特徴を知ることで、カティサークを飲んだ時に複雑に絡み合う余韻が感じられるはずです。
グレンロセス
スペイサイドのグレンロセス蒸溜所で作られます。日本のウイスキーの父、竹鶴政孝の修行先として有名です。
グレンロセス自体、生産される大部分がブレンデッドウイスキーに使われますが、シングルモルトとしても絶大な人気を誇っています。
水を数的垂らしただけで爽やかな香りが開くのが特徴。
熟成は主にシェリー樽で行われるが、バーボン樽で行われることも最近は多いです。
カティサークのキーモルトとしては、配合率が1番高めです。
ザ・マッカラン
グレンロセスと同じく、スペイサイドにある蒸溜所。
スコッチで1番有名といっても過言ではないウイスキーです。
シングルモルトのロールス・ロイスとも比喩されるほど高い完成度で、熟成はシェリー樽を使って行われます。
昨今良質なシェリー樽の品薄も重なり、新樽やバーボン樽を使ったものもリリースしています。
ちなみに、前述のグレンロセス蒸溜所の設立者とマッカラン蒸溜所の経営者の1人のJames Stuart & Coは同一人物です。
ブナハーブン
アイラ島のジュラ島の目と鼻の先にある蒸溜所で作られる、ブナハーブンはアイラモルトの中ではかなりライトなテイストが特徴です。
ピートを使用しない製法を採用しているので癖が少なく、アイラが苦手な人にもオススメしたいウイスキーです。
タムドゥー
スペイサイドの中央に位置する蒸溜所タムドゥー。ゲール語で「黒い丘」を意味します。基本的にはブレンデッド用に作られることが多いウイスキーです。
1900年代に2回、2000年代に1回稼働をやめていた時期もありますが2013年から操業を再開しています。
全体的に柔らかく、爽やかなスペイサイドらしいウイスキーです。
ハイランドパーク
シングルモルトの蒸溜所としては最北端に位置する蒸溜所「ハイランドパーク」。
「ハイランド」と表記されていますが、オークニー諸島の蒸溜所なのでアイランズウイスキーに分類されます。
華やかで深みのあるテイストと、奥にしっかり隠れているピートの香りが程よいウイスキーです。
カティサークの歴史
スコットランドで複数のシングルモルトをブレンドして作られるカティサーク。実は、元々アメリカ用に作られたウイスキーでした。
当時、アメリカは「禁酒法」の真っ只中。そのような状況の中、どのようにカティサークは生まれてこんなに有名になったのでしょうか。
ここでは簡単にカティサークの歴史を紐解いてみます。
※歴史には諸説あります。
名前の由来
カティサークとは、19世紀に中国からイギリスまで紅茶を輸送する目的で建造された快速帆船の名前です。
このお茶の輸送はティー・クリッパー・レースと言われ、この船は数多くの記録を打ち立てた伝説の船として今もイギリスで見学することができます。
1895年にポルトガルに売却されてしまったカティサーク号ですが、1922年にイギリス人船長ウィルフレッド・ドウマンによって買い戻され、イギリスの人々の格好の話題となりました。
1923年3月23日、ロンドンのセント・ジェームス通り、3番地。
ワイン商の「ベリー・ブラザーズ&ラッド社(BB&R社と記載されることが多い)」の経営者の1人のフランシス・ベリーは禁酒法のアメリカに向けたウイスキーブランドの立ち上げを考えていました。
ある日のBB&R社の昼食会に招待されていたフランシス・ベリーの友人でもある、芸術家ジェームズ・マクベイが、新しく発売するウイスキーの話をしていた頃、カティサーク号がロンドンに戻ってきた噂で街は持ちきりでした。
この噂を聞いたジェームズ・マクベイが「新しいウイスキーの名前にこの船の名前をつけよう」と思いついたのが始まりだったと言われています。
禁酒法とリアル・マッコイ
カティサークは、アメリカ人向けのウイスキーとして誕生しました。
アメリカでは、ライトで淡い色合いのウイスキーが好まれるとされており、カティサークはその嗜好に合わせ淡い色になったと言われています。
スムースでライトな飲み口はまずイギリスで話題になり、すぐにバハマを通して禁酒法時代のアメリカに密輸されました。
これを運んだのがウィリアム・フレデリック・“ビル”・マッコイ通称マッコイ船長。
禁酒法時代のアメリカでは粗悪品のスコッチが多く、多くのスコッチがキャンベルタウンで生産されていたものだと言われています。
その悪評がキャンベルタウンの蒸溜所が激減してしまった理由とされていますが、真相はわかりません。
マッコイ船長はバハマを経由して東海岸へと輸出をしていました。
粗悪品のスコッチがはびこる中、マッコイ船長が持ち込むカティサークは「本物」だとギャング達につけられた相性が「リアル・マッコイ」。
今ではこの愛称が英語の慣用句で「本物」という意味で使われています。
禁酒法後の流行
禁酒法の時代が終わり、カティサークはアメリカでも人気のスコッチになり、その後は日本でも愛飲されるウイスキーになりました。
BB&R社は2010年にカティサークのブランド権を、マッカラン蒸溜所などを所有するエドリントングループに売却。同年エドリントングループからグレンロセス蒸溜所を購入しています。
同じ、または近しい企業が経営している蒸溜所をキーモルトとして使用することで、この手軽な価格を実現しています。
2018年6月、エドリントングループが買取先を探していると報道され、同年11月にはグレン・マレイ、スターローの2蒸溜所やブレンデッド・ウイスキー「ラベルファイブ(Label 5)」を傘下に持つ仏酒類大手ラ・マルティニケーズ・バーディネに売却されました。
現在国内の流通はバカルディ・ジャパンが行なっており、現在も様々なカティサークが親しまれています。
カティサークのおすすめの飲み方
歴史を知ると、ますますカティサークが飲みたくなってきませんか?
ウイスキーは、様々な飲み方を知っておくとシチュエーションに合わせて楽しむことができます。
以下では、カティサークを美味しく飲む方法をいくつかご紹介します。
トワイスアップ
カティサークと常温の水と1:1で割る飲み方です。
ウイスキーを冷やし過ぎてしまうと香りが立ちにくくなってしまいます。
香りを楽しみつつ、ウイスキー本来の味を楽しむには1番おすすめの飲み方です。
水道水ではなく、スコットランドのミネラルウォーターや軟水のミネラルウォーターを使うと更に美味しく味わえます。
カティサーク オリジナルの持つ若い原酒のアルコール感は少しトゲがあります。そのトゲを丁度よく丸くするイメージを持って水の量を調節すると様々なテイストが楽しめますよ。
味わいはもともとまろやかなのですが、さらにクリーミーな印象となり、さらにはフルーツ系エステルの香りがふわっと優しく広がっていくため、フレッシュかつ心休まる味わいを楽しめると思います。
ハーフロック
先ほどのトワイスアップに、氷を入れる飲み方がハーフロックです。
香りはトワイスアップに比べて劣ってしまいますが、カティサークを強く味わうことができます。
常温のカティサークに抵抗がある方におすすめです。氷が溶けるにつれて変化する味を楽しむのもハーフロックの醍醐味ですよ。
水割り
ハーフロックに比べて、氷の量と水の量を増やしたものが水割りです。
水割りは居酒屋などでも手軽に注文できますが、こだわって作ると家でもBARクオリティの水割りを作ることができます。
グラスに氷を入れて、その状態でグラスを冷やすようにバースプーン(マドラーでも代用できます)で混ぜます。ガシャガシャさせずに静かに混ぜましょう。
その後、溶け出した水を捨ててカティーサークを注ぎます。そしてカティサークをゆっくり冷やすイメージで混ぜましょう。
混ざったら、冷蔵庫で冷やしておいたミネラルウォーターをゆっくり注ぎます。
そして静かにバースプーンを氷の隙間からグラスの底に落として静かに氷を持ち上げます。グラスの半周ほどバースプーンを回して静かに引き出します。
これでとても美味しいカティサークを楽しむことができますよ。
ハイボール
ハイボールは、水割りの水をソーダ(炭酸水)に変えた作り方です。
作り方は水割りと一緒ですが炭酸が抜けないように注ぎ方、混ぜ方に気をつけると、美味しいハイボールを作ることができますよ。
カティサークは、色合いが淡いために爽やかな印象を与えることができ、ハイボールを作った時の炭酸との見た目の相性もバッチリです。
詳しい作り方は「【永久保存版】定番ウイスキーでハイボールを美味しく作るコツ」の記事内で詳しく解説しています。
お湯割り
お酒は、温めることでぐっと甘みが引き立ちまろやかになります。そのため、カティサークはお湯割りも案外おすすめです。
ちょっとカティサークを多めにしたお湯割りは、冬場の寒さを吹き飛ばすパンチ力です。ぜひ、カティサークの個性を活かした、楽しい飲み方にいろいろ挑戦してみましょう。
コークハイボール
コカコーラを使ったハイボールを「コークハイボール」と言います。禁酒法時代のアメリカには、すでにコカコーラは存在していました。
禁酒法時代には、スープだと言い張るために作られたカクテルも存在するくらいです。
もしかすると、禁酒法時代の人はカティサークをコーラで割って飲んでいたかもしれませんね。
ハイボールと同様に、炭酸を抜かないことが美味しく作るコツ。お好みでレモンやライムを絞るとよりさっぱりとした味わいになりますよ。
甘さをプラスできる飲料で割る
カティサークの特徴は、フルーティーでスッキリとしていて、甘みが強いところです。
もちろん、カティサークにもさまざまな種類が用意されており、それらがそれぞれに個性を持っていますが、定番の一本は価格もカジュアルですので手に入れやすく、アレンジ用に使ってもさほど罪悪感はありません。
カティサークの甘みを活かすとしたら、トニックで割る、甘みの強い炭酸飲料で割る、紅茶と合わせるなど、甘さをプラスすると美味しくなるような割材と加えても面白いでしょう。
また、バニラアイスにかけてみたり、ステーキを焼いた後に残った肉汁の中に入れてアルコールを飛ばしてソースにする、という料理にアレンジしても良いですね。
いろいろと試せるのが、カティサークの魅力です。
カクテルにも挑戦
カティサークをアレンジして楽しむ場合、まずはハイボールをつくってみるのもおすすめです。グラスがやや緑がかったものを使うと、より清涼感が出て美味しさを感じられますのでお試しください。また、カクテルアレンジとしては、ケイブル・グラムもおすすめです。
レモンジュース、砂糖、ジンジャーエールをカティサークに入れて混ぜ合わせるだけです。柑橘系のレモンのフレッシュさをジンジャーエールがより刺激的に変化させ、さらに、砂糖とまろやかなカティサークがそれを包み込む一体感は、飲んでみなければ分からない最高の相性です。ぜひ、カクテルやハイボールでもカティサークを楽しんでみましょう。
カティサークの種類
カティサーク オリジナル
カティサークといえばこのボトルを思い浮かべる方が多いと思います。
スムースでライト、禁酒法時代そのままの淡い色味が特徴です。
価格も非常にお手頃なので、まずはこのカティーサークから。
カティサーク 12年
蒸留所の原酒も上質なモルトからつくられているために、味の良さは間違いなく、まずは味わいを消さない飲み方で楽しんでいただくことをおすすめします。
ただし、ストレートだと少々厳しいという方もいるでしょうから、常温の水で半々に割ったトワイスアップにすると甘みが強調されよりマイルドに。
カティサーク 18年
12年よりさらにシェリーの華やかさが強いです。
キーモルトのマッカランやハイランドパークのテイストが熟成感とともにしっかり感じることができます。
フルーティーな香りが強いので、トワイスアップでも苦手に感じる時はキンキンに冷やしてロック、ハーフロックという手もあります。酸味が少ないため、冷やした飲み方でもエグさは感じず、すっとのど元を通り抜けるのでおすすめです。
カティサーク プロヒビション
プロヒビションとは、英語で「禁酒法」の事。
禁酒法時代にアメリカにカティサークを運んだ「リアル・マッコイ」への業績を讃え、2015年にリリースされました。
カティサークシリーズの中ではかなりパンチがあります。
アメリカンオークを使用し、アルコール度数も50%と高いので、普段のカティーサークと思い購入するとびっくりするはずです。
禁酒法当時の伝統だった黒のボトルとコルク栓が使用されており、禁酒法時代にタイムスリップしたかのように楽しめます。
スコッチでアメリカを楽しめる数少ないスコッチかもしれません。
まとめ
カティサークは、知れば知るほど奥が深いブレンデッドウイスキーです。しかも、コストパフォーマンスも高くスムースでライトな味わいは誰もが虜になるでしょう。
さらに、12年や18年を味わったらキーモルトの余韻がさらに感じられ、ますます魅力にはまってしまいます。カティサークが手元に届くまでの歴史や人々を知る事で、あなたにとってさらに特別なウイスキーになるはずです。
今日はぜひ、カティサークと一緒に過ごしてみてはいかがでしょうか。