世界の5大ウイスキーにも数えられている「カナダウイスキー(カナディアンウイスキー)」。日本で取り扱われている銘柄は少ないため、あまり馴染みが無いかもしれませんが、世界的には人気を誇るジャンルの1つです。
実は、日本人の口にも合いやすいとされる「カナディアンウイスキー」は初心者にもおすすめ!この記事では、ウイスキーエキスパートの私が人気のおすすめカナダウイスキーを10本厳選してご紹介。さらに、味わいの特徴から歴史まで詳しく解説していきます。
カナダウイスキーとは
日本ではあまり知名度が高くないかもしれませんが、カナダウイスキー(カナディアンウイスキー)は「世界の5大ウイスキー」として語られることも多い、ブランド価値のあるウイスキージャンルです。
文字通り、カナダで造られているウイスキーではありますが、ただ単にカナダで造られているだけではカナダウイスキー(カナディアンウイスキー)を名乗ることはできません。
カナダウイスキーの条件
カナダウイスキーを名乗るためには、カナダの法律で定められた条件を守る必要があります。
・とうもろこし等の穀物のみを原料に使用する
・酵母による発酵を行う
・製造工程(糖化~熟成まで)をカナダ国内で行う
・瓶詰め時のアルコール度数は40%以上
上記は一例となりますが、これら条件を厳守して造られたウイスキーだけがカナダウイスキー(カナディアンウイスキー)を名乗ることができるのです。
カナダウイスキーの味の特徴
カナダウイスキーは、世界中のウイスキーと比較してかなりライトな口当たりであるのが最大の特徴。穀物由来の風味も比較的穏やかで、アイリッシュウイスキーよりも飲み口が軽いため、初心者でも飲みやすいと言われています。
また、カナダ国内での飲み方としては、日本と同様にハイボールが人気なのだそう。そのため、日本人の口にも比較的合いやすいのではないでしょうか?
カナダウイスキーの値段
先述したように、ライトな飲み口が伝統的だったカナダウイスキーですが、お値段もかなりリーズナブル。
代表銘柄であっても、1000円台で購入できる事が多いためデイリーユースできるウイスキーとしてもおすすめ。
近年では、伝統的だったライトなウイスキーの他、他のジャンルにインスパイアされたより濃密でクラフトなタイプのウイスキーも多数発表されています!
伝統的な味わいからどのようにカナダウイスキーが発展していくのか、今後の動きにも注目です。
カナダウイスキーの歴史と代表格「カナディアンクラブ」とは?
カナダウイスキーを語る上で、「カナディアンクラブ」を避けて通るわけにはいきません。世界に新たなウィスキーの価値を提示したこのウイスキー。
今や世界五大ウィスキーの一角を担うカナダ産のウィスキーですが、全てはこのカナディアンクラブから始まり、一人の男が作り上げて行きました。
創業者の名はハイラム・ウォーカー。彼の功績なくして、カナディアンウィスキーの現在はなかったと言えるでしょう。「慈悲深き独裁者」と呼ばれる彼は、小国の偉大な王の様であり、まるでウォルト・ディズニーのようだとも形容されます。
カナダウイスキーの父 ハイラム・ウォーカーの功績
彼にまつわるエピソードは非常に膨大で、ここでは語りきれないほど。
まず第一に、彼はアメリカ人であるということ。自らの意思で、一度もカナダの市民権を得る事なくアメリカ人としてお亡くなりになっていますが、これにも深い理由があったのだそう。
カナディアンクラブの躍進の背景には南北戦争があり、戦地に赴く兵士たちには気を紛らわせる強い酒が必要でした。戦後も、デトロイトの商業的発展とグレートウェスタン鉄道の開通を元に、どんどんと販路は拡大して行きます。経営者として大きな野心を持っていた彼は、生産環境の拡充へと舵を切って行きました。
その設備投資は我々の想像を遥かに超える壮大な物で、従業員の住居を始め、それらの家族用に学校や教会、警察や消防に至るまでを配備し一つの街を丸々作り上げ、交易に必要なフェリーを走らせる会社を立ち上げるにまで至ったのです。
更に、上下水道やガス、街灯や歩道、はたまた鉄道に至るまでの都市機能をも自費で整えて行きました。
しかし、その街に暮らす従業員たちに土地などの権利を分け与えることは最後までなく、その様から「慈悲深き独裁者」と呼ばれる様になったのです。
独裁者と名につくと悪役の様に感じられますが、彼の誕生日が祝日になっていたとというほど、人々からの支持を得ていたのだそう。
専門家が選ぶおすすめのカナダウイスキー!ランキング10選
Canadian Club 1858
カナダウイスキーを嗜む上で、まずはこの「カナディアンクラブ」の味わいを確認していただきたいです。
当時一般的であったウィスキーよりも長く時間をかけ、高いアルコール度数に蒸留していく事で、他にはないクリーンでピュアなスピリッツを得る事に成功したカナディアンクラブ。こうして丁寧に作り込まれたスピリッツをキーにブレンドする事で、クリアでフルーティーなカナディアンウィスキーの味わいが確立されたのでした。
この1858は、カナディアンクラブのスタンダードな商品で、6年熟成の原酒を基本に作られています。
熟成の温度管理も特徴的で、スコッチなどの諸外国のウィスキーがその土地の気候に合わせ熟成させていくのに対し、一定の温度を維持した熟成庫で熟成させていきます。しなやかで澄み渡る口当たりのこのウィスキーは、ピュアなスピリッツが樽から得たオークの香りをほのかに纏い、クリーンでドライな仕上がりとなっています。
このような特徴から、日本で人気のハイボールとして楽しむのにも最適。
カナダウイスキーの歴史の始まりを、ご自身の舌で確かめてみてください。
Canadian Club 12yo
こちらは、カナディアンクラブの12年熟成。
カナディアンクラブの面白い所は、熟成年数の違いをただの期間で差を付けるのではなく、使用する原種の配合を変え熟成に耐えうる物にそれぞれ仕立てる点にあります。
こちらの12年ものは、スタンダードの物に比べ大麦麦芽を使用した原種の比率を高める事で、よりクリーミーで濃い仕上がりとなっています。
ハイボールはもちろん、ロックで楽しむことでカナダウイスキーの懐の深さを確認できることでしょう。
カナディアン クラブ ブラックラベル(Canadian Club Black Label)
「カナディアンクラブ ブラックラベル」は、日本市場向けに限定でリリースされた、8年熟成物の商品。スタンダードの物は良くも悪くも非常にクリアな為、飲み手によっては少し物足りないと感じる部分もあります。
特に日本の食文化は繊細な上に、スタンダードな飲み方がハイボールや水割りなど、基本的に割って飲む事が多いですよね。そのため、こちらの商品では、日本の飲食シーンを想定した少し濃いめの仕立てにされているのです。
その特徴通り、食中酒としても絶妙なバランス感を保ってくれます。スタンダードなカナディアンクラブでは少し物足りないという方は、ブラックラベルがおすすめです!
カナディアン クラブ 20年(Canadian Club 20yo)
現在、サントリーから発売されているレギュラー商品の中では最も長い熟成期間を経てリリースされるのが、この「カナディアンクラブ20年」。
樽の中で熟成されていく中で得た、ナッティー(ナッツのような)なニュアンスは、長期熟成物のウイスキーにしか出せない醍醐味ともいえる味わい。香りもより豊かになり、甘やかなバニラの香りが加わりフルーティーさもより凝縮された、ドライフルーツの様です。
長期熟成物特有の長く浸れる余韻は、ウイスキー好きにとっての至福の時間。
スタンダード商品はハイボールなどがおすすめですが、こちらの「カナディアンクラブ20年」では、ストレートやロックで円やかな舌触りを楽しんでみてください。
クラウン ローヤル(Crown Royal)
世界中で最も売れていると言われているカナディアンウィスキーが、この「クラウンロイヤル」。
リッチな甘みは、しっかりとチャーをかけたアメリカンオークの新樽での熟成由来。そして、しっかりとしたボディ感はライウィスキーやバーボンを使用した、フレーバリングウィスキーから生まれています。
製造しているのは、シーグラム社が立ち上げたギムリ蒸留所・通称クラウンロイヤル蒸留所。以前は、有名バーボン「フォアローゼス」をブレンドしていたことでも知られています。
立憲君主制を敷くカナダは元々イギリス領であり、その歴史的背景の中でこのクラウンロイヤルは生まれました。
イギリス国王であったジョージ6世への献上品として造られたウィスキーである為、王位を示す格式高い紫色の布袋に包まれ、キャップは金の王冠となっています。
他のカナディアンウィスキーにはない、深みのある味わいはぜひロックでゆっくりと楽しんでほしいです。
Crown Royal Maple
No.1カナダウイスキー「クラウンロイヤル」のフレーバーウィスキーとして発売されているのが、この「クラウンロイヤル メイプル」。
フレーバーウィスキーというとあまりピンと来ないかもしれませんが、はちみつや果物などの原料を用いて造られ他ウイスキーのこと。日本では「ジャックダニエル ハニー」などが、近年人気を集めていますよね。
この商品は、通常のクラウンロイヤルをメープル(かえでの木)の樽で追熟し、香りづけされた物。独特のトロッとした甘みが付加されて、非常に飲みやすい仕上がりとなっています。
ロックでゆっくりと楽しみながら、その甘やかな香りを存分に堪能していただきたいです。
Canadian Mist
カナディアンミストは、カナダでは珍しいウィスキー以外の蒸留を行わない蒸留所でした。
カナダで蒸留された原酒を、アメリカのケンタッキー州ルイヴィルのブラウンフォーマン蒸留所へと運び移し、バーボンのアーリータイムズを加えブレンドされ瓶詰めしています。
3年熟成物のウィスキーで、カナディアンらしくピュアクリアーな仕上がりですが、どこか土っぽいニュアンスがあるのが特徴。こうしたニュアンスは、カナディアンミスト独自の製造工程によるものだと思われます。
地元産のデントコーンとライ麦を使用したウィスキーでありますが、天然酵母を使用して発酵させたり、ジョージア湾の水を通常のウィスキー造りよりも多く加え蒸留する事で、不要な香りをカットしていくなそ、その製造工程は独特。
フルーティーなだけではない、複雑性を兼ね備えたウィスキーとして初心者だけではなく、ウイスキーを飲み慣れている人にとっても面白い1本なのではないでしょうか。
Alberta Premium
“カナダの至宝”プレミアムカナディアンウィスキーといえば、この「アルバータ プレミアム」。
カナディアンウィスキーの王者であったクラウンロイヤルの対抗馬を生み出すべく、アルバータ蒸留所はタングルリッジなど様々な商品を開発し
、試行錯誤を続ける中生まれたのが、真のカナディアンウィスキーとも言える素晴らしいバランスを持ったこのアルバータプレミアムだったのです。
アルバータプレミアムは非常に上質なウィスキーで、ベースウィスキーもフレーバリングウィスキーもライ麦から作られています。有核果実のコンポートのようなの横行な甘みと、樽由来のバニラの香りにライ麦のクリスピーでスパイシーな要素が織り混ざっているのが大きな特徴。
ロッキー山脈の氷河から溶け出す水と、世界最高のライ麦を使用した極上の味わいは一飲の価値ありです!
シーグラム VO(Seagram's VO)
かつて、世界最大規模の会社となったシーグラム社が造るスタンダード商品が、この「シーグラム VO」。
シーグラム社の歴史は古く、1850年代まで遡ることができます。創業から150年の間に買収や売却を繰り返し、クラウンロイヤル製造の他、シーバスリーガルを傘下に収めるなど、石油業からユニバーサルスタジオやユニバーサルミュージックに至るまでを吸収し、世界最大のレコード会社を作るにまで至りました。
想像を絶する巨大企業へと成長していきましたが、元はイギリス移民のシーグラム家とブロンフマン家の両者が築いたカナディアンドリームだったのです。
1907年に発売された、この「シーグラムVO」は6年熟成の原酒を基に作られており、非常にデリケートで円やかな甘みを持つ1本。クラウンロイヤルを生み出す以前は、ブランドを代表するフラッグシップでした。
少し濃い目に作るハイボールが、最高に美味しいので試してみてください。
ブラック ベルベット リザーブ(Black Velvet Reserve)
70年代のカナディアンウィスキー ブームを牽引したヒット作「ブラック ベルベット リザーブ」。
余韻は短いものの、カナディアンらしい軽やかで甘い仕上がりはクセも少なくお手頃感が満載です。フルーティーと言うより、どこか穀物っぽいニュアンスが強くグレーンのスパイシーさが際立っている1本。甘みはキャラメルやチョコレートといった香ばしさが感じられます。
元はジンを蒸留していたパリサー蒸留所で造られていましたが、カナディアンブームとブラックヴェルヴェットの大ヒットにより原酒が不足し、
新しい蒸留所を作り増産体制に入っていました。
世界的にヒットを飛ばしたこの商品は、6年程熟成させたフレーバリングウィスキーを蒸留したてのスピリッツに加える「生誕時のブレンディング」と呼ばれる独自の工程が肝になっています。
ロック、ストレート、ハイボールとお好みの飲み方で楽しんでみて!
日本人の口にもあう!ライトな飲み口のカナダウイスキーを楽しもう
5大ウイスキーの中でも、最も飲み口が軽く初心者にもおすすめしやすいカナダウイスキー。これまでウイスキーを嗜んでこなかった方でも、親しみやすいであろう味わいと、挑戦しやすいお手頃な値段感なので「試しに1本」という形で飲んでみてほしいです。
カナダウイスキーを飲んでみて、ウイスキーの美味しさに気づいたのであれば、そこからジャパニーズ、アイリッシュ、スコッチ、バーボンと他のジャンルのウイスキーも試して、自分好みの1本を見つけてみてくださいね!