「ワインの王」と呼ばれ、世界最高峰のワインであり続けるブルゴーニュワイン。たとえワイン愛好家でなくても、一度はその名を聞いたことがあるのではないでしょうか。
ブルゴーニュといえば、ロマネ・コンティのような高級ワインのイメージが強いかもしれませんが、比較的手頃な価格で楽しめるブルゴーニュワインも多数存在します。
今回は、ブルゴーニュワインの特徴やぶどう品種などの基礎知識を解説しながら、1万円以下で楽しめるおすすめのブルゴーニュワインを10本ご紹介します。
ブルゴーニュの特徴
ブルゴーニュは、フランス北東部に位置する地方。ボルドーと並び、4世紀には銘醸地として知られていました。
ブルゴーニュの歴史を語る上で欠かせないのが、キリスト教修道院の存在です。ブルゴーニュでは中世以降、各派の修道院がワイン造りを洗練させてきました。中でも、ベネディクト派のクリュニィ会とシトー会による貢献は大きなもので、たとえば「クロ・ド・ヴージョ」や「クロ・ド・タール」などの銘醸畑も彼らによって築かれたものです。
畑による個性が際立つブルゴーニュのワイン
ボルドーなどの他地域に比べて、ブルゴーニュでは畑による個性の違いが顕著に現れます。ブルゴーニュのぶどう畑は小さな区画に分類されており、その区画を「クリマ」と呼びます。クリマごとに「グラン・クリュ」「プルミエ・クリュ」などの格付けがなされており、ある区画とすぐ隣の区画とで何倍もの価格差が生じることも少なくはないのです。
気候は、夏は暑く冬は寒い半大陸性気候。また、ブルゴーニュ全域の9割以上が粘土石灰質土壌です。ここに含まれる石灰岩は、ブルゴーニュの地がかつて海であった頃の、海洋性生物の死骸が堆積してできたものなのだそう。
なおワインの世界では、ボージョレ地方をブルゴーニュに含めることがありますが、この記事ではボージョレワインには触れません。
ブルゴーニュワインに使われるぶどう品種
いくつかの品種をブレンドするボルドーワインとは対照的に、ブルゴーニュワインはひとつの品種から醸造されます。
主に使われているぶどう品種は、赤ワインではピノ・ノワール、白ワインではシャルドネ。どちらも、ブルゴーニュが原産のぶどうだと言われている品種です。
赤ワインに使われるピノ・ノワール
ピノ・ノワールは、果皮が比較的薄い黒ぶどう。そのため病気に弱く栽培が難しいのですが、同じ理由から、出来上がる赤ワインはタンニンが少なめのやわらかいものになります。
ブルゴーニュでは、バラの花を思わせる華やかさ、繊細な果実味と心地よい酸味、スパイスやなめし革などの複雑なニュアンスなどを含む、エレガントなワインができあがります。
白ワインに使われるシャルドネ
シャルドネはさまざまな環境に適応することができ、かつ、その土地の気候と土壌によって味わいを大きく変える、変幻自在なぶどうです。
原産地であるブルゴーニュのシャルドネからは、白桃や洋梨などの上品な果実感と上質なミネラル感、樽熟成に由来する香ばしさなどが同居したワインが造られます。
1万円以下で楽しめる!ブルゴーニュワインおすすめ10選
それでは、筆者おすすめのブルゴーニュワインをランキング形式でご紹介します。今回は、赤・白ワインのそれぞれについて5本ずつを選んでみました。
赤ワイン編
5位 ブルゴーニュ・ピノ・ノワール/ルイ・ラトゥール
ルイ・ラトゥールは、200年以上の歴史を持つ醸造家兼ネゴシアン。ブルゴーニュの2大白ワインのひとつ、「コルトン・シャルルマーニュ」の生みの親でもあります。多くの畑を所有するブルゴーニュを代表する造り手でありながら、今も家族経営を貫き上質なワインを提供しています。
こちらのワインは、お手頃価格でオーソドックスなブルゴーニュの風味を味わえるのが魅力。ラズベリーやバラ、リコリスや腐葉土など、ブルゴーニュのピノ・ノワールに典型的なニュアンスがバランス良く感じられます。ブルゴーニュ入門の1本におすすめです。
4位 ブルゴーニュ・ピノ・ノワール/ジョゼフ・ドルーアン
ジョセフ・ドルーアンもまた、120年以上家族経営にこだわって、ハイクオリティなワインを造りつづけているワイナリーです。環境にやさしく、かつテロワールをじゅうぶんに表現できるワイン造りを目指し、1990年代からビオディナミに取り組んできました。
また、ぶどうはすべて手摘みし、天然酵母で発酵しています。
栽培、収穫、発酵に至るまで丁寧に手間をかけて造られるこちらのワインは、たいへんエレガント。さくらんぼを思わせるきれいな酸味とやわらかいタンニンが心地よく融和します。コストパフォーマンス抜群の1本です。
3位 ブルゴーニュ・ルージュ/ダヴィド・デュバン
造り手のダヴィド・デュバン氏は、ブルゴーニュの若手醸造家の中でもとりわけ高い注目を浴びる実力派の造り手。2015年、著名ガイドブック「ル・メイユール・ヴァン・ド・フランス2015」において、三ツ星生産者に認定されました。これまでに三ツ星認定を受けているのは、ルロワやDRC、ポンソなど、ブルゴーニュ最高峰のドメーヌばかりです。
まさに一流生産者と肩を並べることになったデュバンですが、まだまだ入手しやすい価格のワインも造っています。そのひとつが、今回ご紹介するブルゴーニュ・ルージュです。
ビオロジックで造られるこちらのワインは、ほどよい力強さとエレガントさがバランス良く両立するハイクオリティな1本。今後ますます評価が上がりそうなデュバンのワイン、今のうちに試しておきたいものです。
2位 ブルゴーニュ・ルージュ/ルー・デュモン
続いてご紹介するのは、日本人醸造家の仲田晃司氏が手掛けるワインです。仲田氏は、「ブルゴーニュの神様」ことアンリ・ジャイエにもその腕を認められた実力派。新進気鋭の造り手として世界中から高い評価を得ています。
こちらのブルゴーニュ・ルージュは、平均樹齢30年以上のぶどうを使用し、さらにそのうちの20%にジュヴレ・シャンベルタンとオー・コート・ド・ニュイをブレンドしているという贅沢なもの。
ブルゴーニュらしい繊細さに加えて、ぶどう本来のパワーを感じさせる仕上がりは、ブルゴーニュ好きとワイン入門者のどちらにもおすすめできます。
1位 ブルゴーニュ・ヌメロ・アン/ドミニク・ローラン
赤ワイン編1位にピックアップしたのは、ブルゴーニュ屈指の醸造家ドミニク・ローラン氏によるワイン。
ドミニク・ローラン氏は、元洋菓子職人というユニークな経歴を持っています。偉大な醸造家たちに学びながら独自のワイン造りを研究。ロバート・パーカー『ワイン・バイヤーズガイド第7版』にて最高評価の五ツ星を獲得し、ブルゴーニュでも5本の指に入る醸造家として高い評価を得ています。
こちらの「ヌメロ・アン」は、その名の通り洗練度においてナンバーワン(No.1)を表現したワインだそう。他のブルゴーニュ・ルージュよりも上質なぶどうを使用しています。コート・ド・ニュイの村名のものを80%使用しながらも「ブルゴーニュ」という広域の名称でリリースしているため、コストパフォーマンスの面でも非常に優れています。
ラズベリーやいちご、バラやすみれを思わせる甘やかなニュアンスにほんのりと樽の香りが加わります。酸とタンニンのバランスも抜群。10年熟成にも耐えるとも言われている、高いポテンシャルを持つワインです。
白ワイン編
5位 ブルゴーニュ・シャルドネ/ルイ・ラトゥール
赤ワインに続いて、白ワインにもルイ・ラトゥールのワインがランクイン。
先述の通り、ルイ・ラトゥールは白ワイン「コルトン・シャルルマーニュ」で有名な造り手です。しかし、ブルゴーニュの偉大な白ワインの多くは、なかなか手が届かない価格で販売されています。
そこで、ブルゴーニュの白ワイン入門の1本としておすすめしたいのが、こちらのスタンダードなブルゴーニュ・ブランです。豊かな果実感とクリームのようななめらかな味わい、そしてフレッシュな余韻が魅力的。2~3年ほど熟成させるのもおすすめです。
この美味しさがこの価格で楽しめるとは、さすがブルゴーニュの名家ですね。
4位 ブルゴーニュ・アリゴテ/マニュエル・オリヴィエ
ブルゴーニュの白ワイン用ぶどうといえばシャルドネが有名ですが、「アリゴテ」という品種からも上質なワインが造られています。
シャルドネに比べて酸味が強く、爽やかな味わいがアリゴテの特徴。またアリゴテのワインは、カクテル「*キール」のベースワインとしても有名です。
*キールに関する情報はこちら「ワインベースのカクテル「キール」とは?美味しい飲み方や作り方徹底解説」
今回ご紹介するアリゴテワインは、ブルゴーニュの新星、マニュエル・オリヴィエ氏の手によるものです。
オリヴィエ氏は、あのロマネ・コンティの熟成コンサルタントを30代の若さで務めた」という経歴の持ち主。その実力をもって造られるこのワインは、いきいきとした酸味と果実味がたいへん魅力的な1本です。普段はシャルドネ派の方も、美味しいアリゴテをぜひ一度試してみてください。
3位 シャブリ/ウィリアム・フェーブル
おいしい白ワインの代名詞として日本で広く知られる「シャブリ」も、ブルゴーニュワインの一部です。数ある造り手の中で今回は、250年以上の歴史を持つ名門、ウィリアム・フェーブルのシャブリをセレクトしました。
全体の98%が機械収穫だと言われているシャブリにおいて、ウィリアム・フェーブルでは手摘み収穫を行っています。
また醸造所では、ポンプを使わずに重力によって果汁を移動させる「グラヴィティ・システム」を採用。果実にかかるストレスを減らし、ピュアな味わいを実現しています。爽やかさな風味とミネラル感あふれる、シャブリのお手本のような1本です。
2位 ブルゴーニュ・ブラン・キュヴェ・サン・ヴァンサン/ヴァンサン・ジラルダン
続いてご紹介するのは、手間ひまかけた栽培と自然な醸造、そして最新技術にもとづく設備でワイン造りを行っているヴァンサン・ジラルダンのブルゴーニュ・ブランです。
こちらのワインは「ブルゴーニュ・ブラン」という広域でリリースされていますが、その内容はとても贅沢。なんと「ムルソー」「ピュリニー・モンラッシェ」「シャサーニュ・モンラッシェ」という名だたる銘醸地で造られたシャルドネをブレンドして造られているのです。
レモンのようなフレッシュな酸とミネラル感、そしてほどよい樽香。上品でありながら、ふくよかさと凝縮感があります。「お手頃価格でも、しっかりとした味わいがほしい」という方におすすめしたいワインです。
1位 ブルゴーニュ・レ・セティエ/オリヴィエ・ルフレーヴ
白ワインの1位は、オリヴィエ・ルフレーヴによるこちらの1本。オリヴィエ・ルフレーヴは数多くのブルゴーニュワインをリリースしていますが、どのワインも繊細で優しく、気品があるのが特徴。さらに、ヴィンテージに左右されない安定した品質は、レストランでも高い評価を得ています。
こちらのワインは、「ピュリニー・モンラッシェ」を60%、「ムルソー」を40%使用したワンランク上のブルゴーニュ・ブランです。レモンの爽やかさ、白桃のジューシーさ、白い花やはちみつ、バターなどの上品な甘やかさ、そしてミネラル感……さまざまなニュアンスが美しく溶け合います。
深みのある余韻も魅力的。ブルゴーニュのシャルドネが持つ優雅な香りと味わいをお値打ち価格で味わえる、たいへんおすすめの1本です。
まとめ
今回の記事では、手頃な価格でブルゴーニュの魅力をしっかり味わえるワインを10本ご紹介しました。ブルゴーニュにはたくさんの造り手がいます。同じ「ブルゴーニュ・ルージュ」「ブルゴーニュ・ブラン」でも、生産者によってその味わいはさまざまです。いろいろなワインを飲み比べて、お好みの造り手を見つけてみてください。
また、本稿では「ブルゴーニュ」という広域で採れたぶどうを使ったワインを取り上げましたが、最初に述べたようにブルゴーニュにはたくさんの畑や区画があります。広域のブルゴーニュワインに魅力を感じたら、次は村単位や区画単位のワインも試していただければと思います。たいへん奥が深いブルゴーニュワインの世界を、ぜひいろいろと探検してみてくださいね。