杜氏と聞くと、なんとなく男性を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?
というのも昔は酒蔵は聖域とされ、女性は蔵に立ち入ることを敬遠されていたのです!
その名残からか、現在でも女性の杜氏は男性に比べるとかなり少なめ。
そんな数少ない女性杜氏が生み出した銘酒「川中島幻舞」を今回はご紹介します。
「川中島 幻舞」とは?
長野県最古の蔵元の醸す酒
川中島幻舞を醸す株式会社酒千蔵野は1540年創業。
長野県内で最も古い酒蔵です。
全国でも7番目に長い歴史をもつ酒蔵で、武田信玄と上杉謙信が戦った"川中島合戦"では、武田信玄が千野の酒を飲んだとも言われています。
「川中島 幻舞」の味
川中島幻舞は全国新酒鑑評会で金賞を受賞するなど輝かしい受賞歴があり、その味はお墨付き。
日本酒に慣れてない人でも非常に飲みやすく、口に含めば果実のような華やかな香りが広がり、スッキリとした酸味が口の中を駆け巡ります。日本酒ならではの、伝統的な旨みやふくよかな味わいも感じることができるでしょう。
また、味わいの変化を楽しむことができるレビューも多数あることから、ご自分の好みに合わせて寝かせてみるのもいいかもしれません。
酒千蔵野の酒造りを支える信州の「米」と「水」
酒千蔵野の日本酒の味を支えているのは、信州の「米」と「水」です。
千曲川と犀川に囲まれた豊かな伏流水は460年以上前から用いられており、蔵の中にある井戸から湧きだしている水を使用しています。
また、地酒の蔵として地元の酒米を使うことにもこだわっています。特に信州で栽培されている酒造好適米と言えば「美山錦」。
地元の農家と契約栽培しており、土造りから農家とともに自らも取り組んでいるというこだわりっぷりです。
ハイテクな蔵で小ロットの酒造りが可能に!
450年も続く蔵でありながら、実はかなりハイテクな設備をもっているのです。
というのも、第18回長野冬季オリンピックの際の道路拡張工事で蔵の一部がひっかかってしまい、蔵の建て替えを行ったため、設備が新しいのです。
通常日本酒は寒い時期、晩秋から初春にかけて行います。
しかし、酒千蔵野の蔵内にはクーラーの効いた部屋があり、冬の環境を再現できる仕込み部屋があります。
この仕込み部屋のおかげで、6月までお酒造りを行うことができる状態なので一度に多くの仕込みをせずに、小ロットで何度も繰り返し醸造をすることができます。
一度に多くの仕込みをしてしまうと、どうしても目が届かない部分が出てきてしまいますが、小ロットでの醸造にすることでひとタンクごとに納得した酒造りをすることができるのです。
ハイテクな蔵と、丁寧な酒造りも川中島幻舞の品質の高さに大きく影響を与えているのでしょう。
杜氏・千野麻里子氏とは?
その昔、酒蔵に女性が入ることは許されざることでした。
そこは蔵人たちの"聖域"だったのです。
江戸時代では「和を以って醸すと良いお酒ができる」という"和醸良酒"という考え方があり、"聖域"に女性が踏み込むと、男性の気が逸れてしまうことから女性が遠ざけられたそうです。
そんな男性側の都合で作られてしまった壁を乗り越え、歴史を塗り替え、女性杜氏になったのが”千野麻里子氏“です。
日本酒界の歴史を変えた"女性杜氏"
千野麻里子氏は一人娘だったので、祖父母から酒蔵を引き継ぐための教育を受けてきました。
醸造学・微生物について学ぶために東京農業大学へ進学。
そこで微生物の世界に魅了され、国の研究所に入り2年間の研修を積み、日本酒の世界に魅力を感じて長野県の地に帰ってきました。
千野氏は自ら蔵にもどり、当時の杜氏のもとで10年修行した後に杜氏を引き継ぐことを決意。
しかし先代杜氏の急病により、10年たたないうちに急遽杜氏を引き継ぐことになります。
当時の日本酒業界は焼酎ブームに押されて向かい風状態。
つぶれてしまう酒蔵も多かったようですが、謙虚に一切手を抜かず気候を読みながら旨い酒を醸し続けています。
また、酒造りの合間をぬって、自らお得意先への酒の配達も行っているんだそう。
お酒の評判などを直接会って聞くことで今後のための情報を得るだけでなく、お得意様との信頼関係も築いているのです。
伝統の味と新しい味の二刀流
酒千蔵野は川中島 幻舞の他にもう一つ、伝統的な味を保ち続ける「桂正宗」という酒も醸しています。
桂正宗はいかにも伝統的な辛口!という日本酒で、古くから愛飲家たちに愛されています。
一方、より広いニーズにこたえるために作り上げたのが「川中島 幻舞」。
若い層に向けた新しい酒「川中島 幻舞」と、代々築き上げてきた「桂正宗」を醸すことで、自分たちのお酒をいろんな人に広く楽しんでもらおうと研究を重ねているのです。
「川中島 幻舞」が人気な3つの理由
「川中島 幻舞」が人気の理由は大きく3つあります。
①誰でも“おいしい”と感じる味わい
「川中島 幻舞」は米の旨味やふくよかな味わいを前面に出した日本酒です。
コクや華やかな香りがありながら、スッと消えるようなべた付かない酒質のため、日本酒初心者の方でもおいしいと感じられます。
クセも少なく、王道でおいしい、日本酒の優等生のような感覚。
1度口にした時の感想が忘れられない!という方も多く、実はリピート率がすごく高いお酒でもあるのです。
②コスパの高さ
米や水などの原料にもこだわり、手造りで丁寧に、小ロットで醸すと大変な手間がかかっているにもかかわらず、価格がお手頃なことも人気の理由の1つ。
さらに無濾過生原酒でありながら720mlで1500円前後で買えてしまうのです。
また、季節限定酒となっている中取り系でも通常の商品と変わらない価格帯での取り扱いとなっています。
③地酒専門店向けの商品
実は「川中島 幻舞」は地酒専門店向けのお酒。
酒質にこだわりを持った専門店に向けた商品だけあって、杜氏1番のこだわりブランドなんだそう。
そのため人気も高く、22年度の醸造では5回仕込んだにもかかわらず発売と同時に一瞬で売り切れてしまったんだそう…
見つけた際には迷わず買いたいところですね。
まとめ
長野県一の古い歴史をもつ酒千蔵野は、伝統的な酒造りと新しいテイストの日本酒造りに挑戦し続ける蔵でした。
杜氏は男性がなるものとされる暗黙の了解を見事に打ち破った、千野麻里子氏の今後の活躍に目が離せません!
大切な人と一緒に「川中島 幻舞」を楽しんでみてはいかがでしょうか!