お店で見かける日本酒に「特撰!うまい!」と書いてあるラベルをよく見かけませんか。
「特撰」と書いてあったら、確かにおいしそうですよね!
日本酒のラベルに記載されている特撰、上撰、佳撰とは一体どのようなものなのでしょうか?
「特撰」「上撰」「佳撰」とは?
法律で基準などは存在しない
日本酒の商品名で「特撰」「上撰」「佳撰」という表記はよく見られますが、このランクには法律的な基準や定義があるわけではなく、ラベルに記載する義務もありません。
一方で、「純米酒」や「本醸造酒」、「大吟醸」のような言葉には、酒税法で定められた厳密な定義があります。
では、「特撰」「上撰」「佳撰」とは一体なんなのでしょう?
酒蔵が独自に設けた酒のランク
「特撰」や「上撰」とは、酒蔵やお酒の販売会社が独自の基準でつけたランクです。
これは各蔵元が酒の原料にした米の品種や精米歩合、その他の製法の違いとテイスティングに基づいた官能検査による判定を踏まえて、独自の基準でランクづけをしています。
つまり、法律に基づいた基準ではなく、蔵元の”本気度”がランクになったもの。したがって「『上撰』だから高級」と一概に言えるものではないことに注意しましょう。
「特撰」「上撰」「佳撰」はなぜ生まれた?
「特撰」「上撰」「佳撰」という言葉は、今は廃止になった日本酒の級別制度の名残から来ています。
昭和時代の日本酒の級別制度
戦時中の日本では米が不足していたので、米の消費を抑制するために米をたくさん使う上級の酒であるほど高い酒税を掛ける法律ができました。この法律が1943年に施行された、日本酒の級別制度です。この制度は1992年まで続きました。
この級別制度のもとでは、日本酒はその品質の高いものから「特級」、「一級」、「二級」、「三級」、「四級」、「五級」の6段階に区別されました(その後、「特級」「一級」「二級」に分類される)。
このランクは、専門家で構成された酒類審議会という組織が決定しました。テイスティングなどを通した官能審査を行い、アルコール度数や酒質などのステータスで判断していたのです。
級別制度の終わりとその名残
級別制度は米の消費を抑制するために、吟醸酒などの贅沢な酒に高い税金を掛ける目的で設けられたルールでした。
しかし、その目的が形骸化してしまったために級別制度は終焉を迎えます。
第二次世界大戦後も日本酒の級別制度が継続されていましたが、アルコール度数が主な基準であったので、つけられた等級と酒の品質が一致していないことが多々ありました。
この形骸化に対する疑問の声が多くの蔵からあがったので、ルールを無視する酒蔵も出るようになったのです。
ちなみに、特級と二級の税金の差額は特級が二級の4倍ほどだったのだとか!
特級か二級かで税金の額はかなり変わってしまうため、いくつかの酒蔵は高品質の酒をわざと監査を通さずに、税金が少額な等級の低い酒として販売するようになりました。
そのため“非常に質の高い二級酒”などが出回るようになってしまい、日本酒の級別制度はその役割・意味を失ってしまいます。
その結果、1992年に日本酒の級別制度は終焉を迎え、現在の酒税の額になりました。
廃止の際、呼び名に戸惑う消費者のため、今までの「特級」「一級」「二級」に合わせて、「特撰」「上撰」「佳撰」がつけられるようになったのです。
型にハマらない色んなランクづけ
最後に、特撰、上撰、佳撰以外のランクがついた日本酒を紹介します!
「超特撰」: 越乃寒梅 大吟醸 超特撰
「特撰」を超える「超特撰」というランクづけがあります。ここで紹介するのは越乃寒梅の「超特撰」吟醸酒!
上位等級の山田錦を贅沢に使い、精米歩合30%まで磨き上げた素材で、蔵の技術と想いを結集させた「越乃寒梅 超特撰 大吟醸」。
品格ある吟醸香と繊細で綺麗な味、喉を通った後の余韻まで、器に注いだ瞬間から飲み終わりまでを存分に楽しめる至極の一杯です。
「粋撰」:阿蘇の酒 れいざん 粋撰
熊本県にある山村酒造合名会社が造る「阿蘇の酒 れいざん 粋撰」。
阿蘇の米・水・人によって造り上げられた粋撰酒。程良い軽めの味わいとキレが特徴。
辛口ですが、スッキリとして飲みやすい味わいです。
燗・冷どちらで飲んでも美味しくいただけます。
その他の呼び方
ここまで紹介したランクの他にも、「金撰」・「銀撰」・「精撰」などの表記も存在します。
このような表記でも、「特撰」などと同様に、法律で決められた厳密な定義はありません。
まとめ
特撰や上撰というのは酒蔵独自に付けた等級です。
そのルーツは、戦時中のコメ不足を背景にした制度の名残によるものでした。
日本酒を選ぶ際は、ラベルの「特撰」や「佳撰」の表記に注目してみてくださいね!