本格焼酎と呼ばれるものには、醪取焼酎(もろみとりしょうちゅう)と粕取焼酎(かすとりしょうちゅう)の2つがあることをご存知でしょうか?
製造工程が異なる2つの焼酎。当然、できあがる味わいも変わってきます。
今回はその中でも、現在の焼酎業界に大きく貢献している醪取焼酎の製法や歴史を紹介します。
醪取焼酎と粕取焼酎
まずは醪取焼酎とは何かについて解説していきましょう。また粕醪取焼酎・粕醪取焼酎についてもご紹介します!
醪取焼酎
醪取焼酎とは、醪を蒸留して造る焼酎。現在、国産焼酎の大半が醪取焼酎だと言われています。
製造工程は以下の通り。
まず、麹(米麹か麦麹)と水の混合物に、酵母を加えて発酵させ、醪(一次熟成もろみ)を造ります。
これに、主原料(蒸した米、麦、甘藷、ソバなど)を仕込み、発行させもろみを造ります。この際に、原料の糖化と発酵が並行して進んでいきます。
そして、酒質に応じて必要な期間熟成させることで完成となります(二次熟成もろみ)。
粕取焼酎
粕取焼酎とは、散水し再発酵させた酒粕を蒸留して造る焼酎。
清酒を絞った後の酒粕をセイロ式蒸留機でそのまま蒸留する方法と、蒸気の通りをよくするため籾殻(もみがら)を混ぜてから蒸留する方法があります。
この"籾殻を混ぜる"ことが粕取焼酎の独特の風味を生むのだそう。
粕醪取焼酎
また、粕醪取焼酎(かすもろみとりしょうちゅう)というものもあります。これは酒粕を原料とした焼酎で、酒粕を水に溶かしたものに酒母を加えて醪を造り、それを発酵させた後、蒸留したものです。
粕取焼酎と異なるのは、醪を造って発酵させるというところ。完成した焼酎は、粕取焼酎と似た風味を持ちながら、一般的には粕取焼酎より飲みやすいと言われています。
最近では減圧蒸留したものも造られ、従来の粕取焼酎と違う清酒香の強さは人気です。
醪取焼酎の歴史
日本では16世紀から製造されている焼酎。17世紀後半以降になると、いくつもの文書に焼酎の製法が記されています。
そしてそれらの文書から、基本的には酒粕か変敗酒(品質劣化した清酒)を原料にした、粕取焼酎が全国各地で製造されていたことが分かります。
これは、当時の稲作が関係しており、粕取焼酎を抽出した後に残った酒粕が、良い肥料として利用できたことが大きな要因であるとされています。
全国で重宝されていた粕取焼酎。しかし、鹿児島など日本酒造りに向かない地域では、酒粕や変敗酒といった原料を使用する粕取焼酎ではない、焼酎の製法が採用されていました。
それが醪取焼酎。各家庭の米や雑穀などを水で仕込んだ醪を発酵させて蒸留し、焼酎を造ったのです。
醪取焼酎には、雑菌の繁殖により醪が腐敗するなどの難点がありましたが、この製法は決して廃れませんでした。
サツマイモの栽培が盛んになった18世紀以降には、サツマイモと麹で醪を造るなど、むしろ製法のバリエーションが増えたほどです。
新たな蒸留機輸入によって焼酎に革命が起きる
時は流れ、明治28年頃。イギリスから連続式蒸留機が輸入されたことにより、焼酎業界に革命が起きます。
それまでは、製造に単式蒸留器を用いて焼酎乙類のみを製造していたのですが、連続式蒸留機の登場により、高純度アルコールを安価に大量生産できるようになったのです。
明治43年には、"連続式蒸留器で作られた製品を任意アルコール度数に和水したものを焼酎とする"ということが決定。この製法のものは「新式焼酎」として広まっていき、今までの焼酎は「旧式焼酎」と呼ばれるようになりました。
また、この技術革新の時代に、雑菌の繁殖により醪が腐敗するといった、醪取焼酎の難点も改善されていきます。
そして大正時代初期。新式焼酎の流行と清酒の腐造により、醪取焼酎は全国各地で製造されるようになったのです。
このことにより、逆に南九州の焼酎メーカーは市場を圧迫されてしまいますが、対抗するため黒麹の本格導入を開始します。そして、クエン酸生産能力が高く、雑菌の繁殖を抑制する黒麹と二度仕込み法により、質と量の向上が図られました。
技術革新の時代に、全国に広まっていった醪取焼酎。戦後の焼酎市場拡大が起きるとより重宝され、今でも大半の焼酎がこの製法により造られた醪取焼酎なのです。
まとめ
醪取焼酎は焼酎業界に大きく貢献しているお酒でした!
醪取焼酎の特徴を知っておけば、その他粕取焼酎などの特徴なども理解しやすいはず。
次に焼酎をいただく際は、それが醪取焼酎か、それとも粕取焼酎なのか、少し気にして飲んでみると面白いかもしれませんね。