ウイスキー好きの方なら知っている方も多いであろう「エンジェルズシェア」!
エンジェルズシェアとは樽熟成用語の一つで、日本では「天使の分け前」とも言われています。
実はウイスキーを美味しく造るために欠かせない重要なものなのです。
天使の分け前「エンジェルズシェア」とは?
日本語に訳して「天使の分け前」、もしくは「天使の取り分」とも言われているこの現象。
「天へと蒸発したウィスキーを天使たちが飲んでいる」という、なんともロマンチックな想像からこのような呼び名がついたのだとか。またウィスキーの品質を向上させ、最高の状態に仕上げるために必要な目減りなので、「天国へのお供物」という意味も込められています。
エンジェルシェアとは、ウィスキーを樽熟成する過程の中で、水分とアルコールが少しずつ蒸発によって減る現象を指します。
ちなみにエンジェルズシェアはウィスキーによく使われる言葉ですが、実はワインやブランデーなど樽熟成を行う全てのお酒で起こる現象です。
天使の分け前が起きる仕組み
では、実際にエンジェルシェアが起こる仕組みを解説しましょう。
樽の呼吸と共にアルコールが外に放出される
天使の分け前は樽熟成の特性からくるもの。樽はもちろん液体が漏れないよう密閉されていますが、木材なので気体は通してしまいます。そのおかげで空気を取り込んでは放出する、という現象を繰り返し、「樽が呼吸をしている」状態になります。
この樽が呼吸する際に、一緒に蒸気となったアルコールが外に放出され、量が減っていくのです。
エンジェルシェアを繰り返し、ウイスキーと樽の木の成分が溶け合いながら、深い味わいのウイスキーが出来上がるのですね。
一般的な目減り量は条件によって異なりますが、年間でだいたい2~3%、10年熟成になると全体の18~34%にもなるんです!
熟成期間が長いほどお酒の値段が上がっていくのは、エンジェルズシェアによって熟成開始時と最終的な出荷時の量が減ってしまうことも理由の一つに挙げられます。100年もののウイスキーがないのもエンジェルシェアが影響しているからなんですね!
生産者に毛嫌いされる?
エンジェルシェアが起こることによって、必然的にウイスキー自体の量が減ってしまうので生産者からは迷惑がられそうですよね。
しかし、エンジェルシェアが起こることによってウイスキーの味がより美味しくなるため、生産者の間では「天使が飲んだ分だけ美味しくなる」なんて言われたりもするんだそう。
ただし、量がたくさん減ったからといって味わいもよくなるというわけではありません。
エンジェルシェアによって起こる変化
条件によって目減りする量が変わる
エンジェルズシェアで目減りする量は様々な要因や条件が関わってきます。
まず重要な要因が湿度と温度。これらによって目減りする量は大きく変化します。
エンジェルシェアは温度が高く、湿度が低いほど天使の取り分は多くなります。例えば、涼しい気候のスコットランドでは目減りは年間約2~3%ですが、海に近いアイラ島で作られるスコッチは年間1~2%程度。
さらにバーボンの主産地であるケンタッキーでは寒暖差が激しく乾燥しているので、熟成初年度で約10~18%、2年目以降でも4~5%、そして10数年経つと全てなくなってしまうほど!エンジェルシェアは環境に左右されやすい現象なのです。
アルコール度数の変化
水分とアルコール分が蒸発して起きる天使の分け前ですが、水よりもアルコールの方が揮発性が高いため、目減りした結果ウィスキーのアルコール度数も下がります。
とはいえアルコールは揮発するものの、香りの成分は残ったままになります。凝縮された香りと樽の木の成分が混ざり合い、樽熟成の醍醐味を感じられる味わい深いウィスキーが生まれるのです。
ただし、バーボンにおいては稀に度数が上がるケースも。それは熟成庫の最上部に置かれた場合にのみ発生します。気温の影響を受けやすい最上部に置かれたことにより、一般的にはアルコールが優先して蒸発するところを、水がより多く蒸発することによって、アルコールの割合が高まるのです。
まとめ
実際に目減り量が多いほど味が良くなる、というわけではないのですが「天使が飲んだ分だけ美味しくなる」という言い伝えもあるほど、エンジェルズシェアは樽熟成において重要な役割を果たしています。
美味しいウイスキー造りには「エンジェルシェア」が欠かせないのです!