突然ですが皆さんは、日本酒のラベルに「BY」と記載されているのを見かけたことはありますか?
BYというと手紙やメッセージカードで「〇〇より」と差出人を書くときによく使うイメージがありますが、日本酒業界ではBYの前に来るのは数字。
私たちが想像しているBYとは違うものなんです。
ということで今回はそんな「日本酒のBY」の意味について詳しくご紹介していきます。
日本酒業界のBYの意味
BY=「Brewery Year」
Breweryは日本語で「醸造」という意味です。
つまり、「Brewery Year」はそのまま「醸造年度」を指します。
日本酒の他にも焼酎やみりん、果実酒などがこのBYという表記を使用していますね。
同じ意味で「酒造年度」と表記されていることもありますよ。
また、このBYは少し難しいところがあります。
例えば29BYと表記されていたら平成29年1月~12月の期間に造られたものだと思いますよね?
実はこれ、間違いなんです。
日本の学校が29年度で平成29年4月~平成30年の3月の期間を指すように、日本酒業界でも同じように決められた期間があります。
日本酒の場合、29BYは「平成29年7月から平成30年6月の間」を指すのです。
BYは夏から始まる、と覚えておくとわかりやすいかもしれませんね。
ちなみにこのBYはラベルに表記するものではなく、もともと生産の見込み申告のために用いられるものだったそうです。
ラベルにBY表記が増えたのはなぜ?
もともと生産の見込み申告のために用いられるものだった日本酒のBY表記。
ですが、最近ではラベルに大きく醸造年度が記載された日本酒が増えてきました。
これは昔に比べて「熟成酒」という概念が広まったことが理由の1つとされています。
もともと日本酒は「しぼりたて」や「ひやおろし」など、新酒(記載されたBY内に造られ、さらに市場に出されたお酒)の状態で飲みきってしまうのが普通だったから。
そのため、あえてBYなど記載する必要がなかったのです。
しかし今では日本酒の「長期熟成酒」なども一般的になってきました。
新鮮な味わいの日本酒はもちろん、1年以上熟成させることで深みのある日本酒も増えてきたのです。
「その日本酒がいつ作られたのか」が重要視されるようになってきた時代に合わせて、BY表記のある日本酒が増えてきたのです。
BYとVintageは違う!!
ワインでよく使われているVintageとBYは少し意味が違います。
昔の日本酒は、秋に収穫されたお米を原料として使用し、気温が低く衛生管理のしやすい冬に酒を醸造する「寒造り」が主流でした。
しかし、冷蔵設備が進歩し、現在では温度管理や衛生管理が徹底された設備の中で年間を通して醸造する「四季醸造」をする蔵元も増えてきました。
そのため、一般的には「上槽(もろみを搾る工程)」した日を基準にBY(酒造年度)を決めます。
言い換えると、その年に収穫した新米を使わずに、前年度に収穫されたものやそれ以前のものを使用しても、新しいBYの日本酒として販売できてしまうということです。
一方で、ワインで用いられるVintageはブドウの収穫年を示しています。
日本酒も近年、上槽日を基準とするBY表記の他に、ワインのVintageに倣って原料としているお米の収穫年を表示する蔵元が増えてきています。
BYだけじゃない!!いろいろな年度表示方法
さて、今回は日本酒のBYを詳しくご紹介しましたが、実は日本酒にはBY以外にも年度を表す方法がいくつか存在します。
基本的にラベルに記載されているのはBYですが、参考までにBY以外の年度表示方法少しご紹介しますね。
⚫︎暦年(CY=Calendar Year)
1月1日~同年12月31日
⚫︎会計年度(FY=Fiscal Year)
4月1日~翌年3月31日
⚫︎米穀年度(RY=Rice Year)
11月1日~翌年10月31日…米の収穫時期を基準にした1年間
このように様々な年度がありますが、日本酒は秋に収穫したお米を使用して、10月頃から春先にかけて完成するものなので、暦年や会計年度を基準にしてしまうと、日本酒の製造期間の途中で年度が変わってしまうことになります。
これは税務検査上でもすごく不便…ということでBYが採用されているのです。
ちなみに日本酒メーカーでは圧倒的に6月決算が多いのもこのためです。
まとめ
日本酒の知識が増えると、今まで以上に楽しく飲めるようになるはず。
さらなるお酒ライフ充実のためにも、覚えておきたい豆知識をご紹介しました!!