近年、個性溢れる味わいのクラフトビールが人気です。
フルーティーな香りであったり、アルコール度数が高かったり、カラフルな色であったりと、その種類はさまざま…。
ドライなビールに慣れていた日本人にとって、自由度が高い個性的なクラフトビールの世界は、ちょっぴり新鮮なものかもしれませんね!
さて、そんなクラフトビールのなかでもとりわけ個性を爆発させているのがベルギーの「ランビック」というビール。
今回は独特の製法で造られる「ランビック」について紹介します。
ベルギーの自然醗酵ビール!
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そのため、やや強めの酸味や特有の風味が感じられ、ほかのビールにはない個性溢れる仕上がりとなります。
一般的なビールを想像してランビックを飲むと少し違和感を覚えるかもしれませんが、この味わいに慣れると普通のビールでは物足りなくなってしまうほどなんですよ!!
獣臭がする酵母が使われている!
培養酵母ではなく、天然酵母を使用して醗酵させている「ランビック」。
そんなランビックの独特の味わいを作る上で欠かせないのが、汚染酵母と呼ばれている「ブレタノマイセス」です。
通常、お酒を作る際に使用されている酵母は「サッカロミセスセレヴィシエ」を用います。これはアルコール耐性などが強いため、日本酒やワインなどでも活躍している酵母です。
一方のランビックで使われるブレタノマイセスは、日本酒やワインの中で悪さをする汚染酵母として忌み嫌われている酵母。馬小屋、汗、獣が濡れた香りなど、“悪臭”を放つキッカケとなる酵母なのです。
個性的な味わいを目指すという生産者のなかには一部歓迎する方もいるようですが、基本的には存在してはいけない酵母の一種。
しかしランビックはこの「ブレタノマイセス」を使うことで、ランビック独特の味わいが作り出されるという、世界的にみてもかなり珍しいビールなのです。
醸造所の蔵付酵母が鍵を握る!!
醗酵についてあまり興味がない方にとっては、醸造所はきれいなほど良いという意見を持っている方もいるでしょう。
当然、細菌などが入り込んでしまうと、品質が著しく劣化してしまうため、清潔な状態での仕込みをすることは基本中の基本です。
しかし、ランビックのような天然酵母で昔から造られているビールの場合、下手にきれいにしてしまうと、それまでいた蔵付酵母までも消え去ってしまい、狙い通りの味わいにならないというリスクがあるのです。
そのため、ランビックの醸造所はあえてキレイすぎないよう、工夫されているのだとか。
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グーズ
1年熟成したランビックと、2~3年程度熟成させたランビックを瓶に入れたお酒。熟成期間が1年程度のランビックは完全に発酵していないため、二次発酵が起こり炭酸ガスが発生します。瓶に入れた状態で最長20年の保存ができます。
ファロ
醸造したての薄めのビールとランビックを混ぜて、黒砂糖を加えたビール。低アルコールで薄く、低価格なので毎日飲めるビールと言われています。しかし、後味はあまりよくないようです。
クリーク
ランビックにクリーク(さくらんぼの一種)を加え、瓶に詰めて二次発酵したもの。製法によっては辛口なものや酸味をもつものもあります。
その他のランビック
クリークのようなさくらんぼを入れたランビック以外にも、ラズベリーや桃などのフルーツをランビックに入れて、瓶内で二次発酵させたものもあります。
また、現在は生産されていませんが、「マールス」というランビック製造後に作る薄いビールもありました。
個性と認めて楽しむこと
ランビックは、人によっては「苦手」だと感じる方もいるでしょう。通常のビールやIPAなどの苦味のあるビールが好みの方にとっては特にそうかもしれません。しかし、これを個性として捉えることが何よりも大切です。
お酒や酵母にはいろいろな種類が存在しています。ぜひ、毛嫌いせず、さまざまな個性を持ったビールを飲み比べ、楽しんでみてください。