南部杜氏の伝統により、洗練された日本酒造りが盛んな岩手県。その中でも、「南部美人」は評価も高く国内外で数々の賞を受賞する優れた酒蔵。、
今回は、幅広い層の日本酒ラバーから親しまれている酒蔵「南部美人」についてご紹介していきます。
「南部美人」とは
南部美人は岩手県北部の二戸市に本社蔵を置く、明治35年創業の酒蔵です。豊かな自然に囲まれたここ南部地方で、雪国の女性から連想されるように「綺麗で美しい酒を造りたい」という思いのもと、昭和26年に「南部美人」と命名されたそうです。
常に妥協せず改良を重ね、より美しく美味しい日本酒を造り続けている同蔵。2011年の東日本大地震の際、お花見の自粛ムードが広がる中、東北の酒蔵が集まり始まった「ハナサケニッポン・プロジェクト」では、南部美人の五代目蔵元・久慈浩介さんらが、花見をして岩手や東北のお酒を飲むことを呼びかけたYouTubeの動画が話題にもなりました。
南部杜氏の技と伝統、そして蔵元の情熱で磨き上げられた美酒
酒造りの工程を管理する、いわば酒蔵の最高責任者でもある杜氏。この南部美人も、岩手県を拠点とする杜氏集団「南部杜氏」により製造が管理されています。
南部杜氏は全国の杜氏集団の中でも随一の所属人数を擁し、新潟県の越後杜氏、兵庫県の丹波杜氏と並び、日本を代表する杜氏集団のひとつと言われています。五代目蔵元の久慈浩介氏はアメリカでの留学中に日本酒の魅力を再発見し、南部美人を継ぐことを決意し帰国。大学で醸造について学び、様々な酒蔵で修行を重ねた後に南部美人へ戻り、酒造りを根本から見直しを図りました。
久慈浩介氏は日本酒本来の味わいを伝えるため、炭素フィルターでろ過をしていたそれまでの技法をやめ、今でこそ主流となった無ろ過の技法を取り入れました。当時は受け入れられませんでしたが丁寧な酒造りにより、ろ過を必要としない、本当に美味しい酒が完成したのです。
◆南部美人 純米吟醸
丁寧な仕込みにより完成した、南部美人定番の銘柄。濃醇な米の甘さと旨味、そして心地よい吟醸香が広がります。後味淡麗なキレも兼ね備え、和食など上品な味わいの食事と合わせて飲みたい一本です。
日本酒だけじゃない、南部美人こだわりの糖類無添加果実酒
そして日本酒ばかりではなく、日本酒を飲めないひとのための酒造りとして果実酒を造りはじめました。梅酒などの果実酒は、砂糖などの糖類が多く使われ、甘いものが一般的でした。しかし、糖類が少ない酒や甘すぎない酒へのニーズが高まり、南部美人の個性として糖類無添加の梅酒の開発を始めたのです。
南部美人で取り入れている日本酒醸造の技術「全麹仕込み」を応用することにより、砂糖や甘味料、アミノ酸など糖類や添加物を一切使用せずに醸造することに成功。純米酒の自然な甘みと、果実の旨みが凝縮された飲みやすい糖類無添加の“和”のリキュールを開発、特許を取得しました。
昨今の健康ブームの流れにも沿った同商品。ヘルシー志向の女性をはじめ、幅広い世代の方が楽しんでいるようです。
◆南部美人 糖類無添加梅酒
「全麹仕込み」で仕込んだ純米酒に、梅を低温で短期間漬け込むことで、純米酒の甘みと旨味の生きた味わいのある梅酒。すっきりと飲みやすい、大人のための糖類無添加リキュールです。
岩手から世界へ羽ばたく「南部美人」
海外で日本酒の知名度を上げ普及させようと、1997年には海外への流通販路の拡大を志す酒造を集め、任意団体「日本酒輸出協会」が立ち上げられました。
海外で日本酒のセミナーや試飲会を行ったり、名称やラベルに改良を重るなどした結果、南部美人は多くの国で「サザンビューティー」と呼ばれ親しまれるようになったのです。
2013年には、海外の航空会社「エミレーツ航空」や「エティハド航空」の機内酒としても採用。数々の世界的なコンクールで受賞を重ね、2017年ロンドンで毎年開催されている世界的なワインのコンクール「IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)」の日本酒部門で、「南部美人特別純米酒」が最も優れている日本酒「チャンピオン・サケ」に選ばれました。
和食とともに日本酒への関心も高まり、その輸出量は年々増加。現在では世界34ヶ国へ販路を広げています。
◆南部美人 特別純米酒
「IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)2017」において、9部門・全1,245銘柄の中から「チャンピオンサケ」に選ばれた一本です。地元、岩手県二戸市産の酒造好適米「ぎんおとめ」を55%まで磨き上げ使用。折爪馬仙峡のミネラル豊富な伏流水を仕込み水とした、やさしくフルーティな香りと、しっかりとした米の旨みを堪能できます。「究極の食中酒」を目指して醸造され、飲み方や合わせる料理を選ばない、南部美人の定番酒です。
まとめ
国内のみならず、世界から注目される銘酒「南部美人」。北国の酒蔵からはじまった世界への夢に、思いを馳せてみてはいかがでしょうか。