「ちゃんぽん」という言葉はご存知ですか?ちゃんぽんとは「さまざまな物を混ぜること、もしくは混ぜたもの」を意味する日本語の表現です。お酒好きの方にとっては「ひとつのお酒の種類に限らない飲み方」と知られています。悪酔いの原因と考えられていますが、どうやらお酒の混ぜ合わせによる悪酔いは医学的に証明されていません。
悪酔いの原因は、主に、飲み合わせによって楽しむ味が変わるので、大量に飲んでしまうことが挙げられます。それならば節度をもてば、ちゃんぽんを楽しんでいいのではないでしょうか。ということで、今回はクラフトビール、自然派ワイン、そして日本酒など様々な種類のお酒を取りそろえる現代の大衆酒場をご紹介したいと思います。
東急目黒線西小山駅から歩いて5分ほど、閑静な住宅街にある大衆酒場「タヰヨウ酒場」にお邪魔してきました。
真っ赤な日よけに、大きく書かれた店名。提灯には、クラフトビール、地酒、焼酎ハヰボールの文字が並んでいます。
中に入ると、どんと金宮の大きなボトルが鎮座したL字型のカウンターが目に入ります。そしてその上には酒瓶がずらり。
オーナーの鳴岡さんは元々、クラフトビールの醸造・販売の他飲食店を展開するベアード・ブルーイングで働いていました。開店準備期間中に他店でお手伝いをし、今年5月にこちらのお店をオープン致しました。
前職では、ベアードビールと焼き鳥を楽しむことができる、原宿のタップルームを店長として立ち上げています。それらの経験を踏まえ、開店したこちらのお店のコンセプトとは?
「下町の飲み屋さんが理想です。下町情緒溢れて、値段も安くて、入りやすい。自分が『近所にこういうお店があったら仕事帰りとか、ちょっとしたときに気軽に入りたいな』と思うお店を作りました」
もっとお客さんにクラフトビールを知ってもらいたいという想いから、このコンセプトにしたそうです。オープンして半年以上経った今、30~40代のお仕事帰りの方、近所の年配の方、そして女性おひとりでも来店して頂いているようです。
基本メニューは写真の通り、またその時のスペシャル・メニューが壁に青いテープで貼られています。仕入れによって内容は異なりますが、厳選されたクラフトビール、地酒、自然派ワインがホワイトボードに書かれています。
ではいよいよ、今回の目的、お酒のちゃんぽんを存分に楽しみたいと思います。
飲みごたえばっちりのクラフトビール×争奪戦が起こりそうな串焼き
まずは乾杯も兼ねて、お店自慢のクラフトビールをいただきます。東京都・品川で醸造している「デビルクラフト」という琥珀色のライペールエールビールをご紹介頂きました。
ライペールエールとは、ライ麦を使用したペールエールでスパイシーさが特徴的です。しかし、デビルクラフトはホップの苦味が効いており、ボディ感、のみごたえがあります。こちらのグラスの大きさは250ml(¥600)で、一杯目にはちょうどいい量です。
合わせるおつまみは、つくね(150円)と牛ハラミ(250円)の二つ。牛ハラミは、お肉の旨みが口の中に広がり、コクのあるビールの苦味にベストマッチです。
つくねは、かじると肉汁がしたたるジューシーさに舌が喜んでいるよう。鼻孔をくすぐる爽やかな香りは、大葉が細かく刻まれてミンチ肉に混ざっているから。こってりとした肉の脂をバランスよく整えてくれます。これはグループで訪れたら、争いになるうまさです。
企業秘密のブレンド・焼酎ハヰボール×優しさと愛がつまった煮込み豆腐
次にお店の定番メニューからお酒とおつまみをそれぞれチョイスしました。黄金色の焼酎ハヰボール(¥350)は、基本金宮焼酎を使用したハヰボールですが、企業秘密の下町エキス入りです。下町エキスとはなんでしょう?
どうやら色々ブレンドをしているらしいのですが、いくら飲んでもわかりません。ただ、おつまみに合い、クセが強すぎず、自然とグラスに手を伸ばしてしまう魅惑のお酒だということだけはわかりました。
そして合わせるのは、煮込み豆腐(¥300)です。口に入れると、おばあちゃんの顔を思い出すような、優しくて心からほっこりする味わいです。しょうゆベースの秘伝の煮込み汁で一日煮込んだ豆腐は、たっぷり味が染みこんで、もう一口もう一口と箸が進みます。しかし、おばあちゃんからの愛のムチが飛び出すことも。
鳴岡さんの故郷、愛媛のおでんには必ずついているという、からし酢味噌が煮込み豆腐についています。つんと鼻を突き抜けるからし酢味噌の愛のある辛さは、目に沁みます。そしてそこにお酒を流し込めば、お酒とおつまみが相まって、至福の瞬間に早変わり。ああ、酒飲みって幸せ。
フルーティな自然派赤ワイン×愛媛の思い出の味「かめそば」風焼きそば
最後は、気になっていた自然派ワイン。いただいたのは、自然派ワインや地酒をつくる四恩醸造(新潟)の製造責任者が独立して立ち上げた「共栄堂ワイン」(山梨)の赤です。こちらのボトル名は個性的で、品番のようにK16FY_AKとついています。
こちらはどうやら、K(独立された小林さん)、16(2016年)、FY(冬)、AK(赤ワイン)をそれぞれ意味するそうです。一杯700円のこちらは、テーブルワインのため、お値段もリーズナブル。フルーティで飲みやすく、赤ワインらしい渋味が少なく、すっきりとした後味をしています。
一緒に頂くのは、店主の想い出の焼きそば(¥580)。こちらは愛媛の有名飲食店「かめ」でつくられていた思い出の味「かめそば」をベースに、タヰヨウ酒場風にアレンジしたものです。飲食店「かめ」は24年前に閉店しましたが、地元の人にその味は受け継がれ、今は松山のB級グルメとして有名のようです。
長短ある麺には柔らかい部分と固い部分の両方があり、独特な食感です。あっさりとしたソース味は、噛めば噛むほど味の深みが出てきます。上にはちりめんじゃこと、削り節がふんだんにかかっていますが、こちらの削り節は、いわしぶしを使用しているこだわりよう。鰹節よりも香りが立ちます。焼きそばと赤ワインという、贅沢な組み合わせも大衆酒場だからこそできること。
今回はこのような組み合わせでいただきましたが、もちろんお酒とおつまみの組み合わせをシャッフルしてもOK。
ちょっと食べ散らかした画像で申し訳ないのですが…(我慢できなかったのです)あまりの美味しさに、ごはんもお酒もちゃんぽんして、きれいに平らげてしまいました。幸せ。
タヰヨウ酒場こだわりのお酒はまだまだある オーナー絶賛の日本酒も
今タイヨウ酒場では、国産のクラフトビールしか取り扱っていません。その分、醸造所に足を運んだり、テイスティングしたり、慎重に、そして確実に厳選しています。大手のビールと違って、クラフトビールは1パイント¥1,000と値段も少しお高めのため、お客さんも時間をかけてゆっくり飲まれます。そのため、ビールの温度が少し上がった状態でもお出しできるものを選んでいるようです。
こだわりはクラフトビールだけではありません。今回ご紹介できなかった日本酒も基本、純米酒です。ホワイトボードにはそのときの仕入れが反映していますが、中でもお燗の「十旭日(じゅうあさひ)」と、冷やの「伊予賀儀屋」は鳴岡さんが惚れこんだ日本酒。
愛媛の「伊予賀儀屋」は、食事シーンでの「食べながら飲む」口中調和を目指した食事との相性へのこだわりをもったお酒です。地元・愛媛の酒米、地下水を使い、丁寧に手作業で丁寧に作りこむ酒造りの考えに、賛同されたそうです。
また鳴岡さんが燗酒を好きになるきっかけとなった「十旭日」は、クセが強いお酒です。「お燗が苦手な人飲んでもらいたい」というこの酒は、日本酒の旨みと酵母の香りがバランスよく作られています。次回は日本酒も、ちゃんぽんしたいものです。
「あまり変わらない」お店を目指しているタヰヨウ酒場。普段いつ来ても安心するお店にしたいため、酒場には定番ともいわれた喫煙は店内では禁止を徹底しています。
「来店していただいたお客さんにビールの香りも楽しんでもらいたい、また隣の人に気を使わずに、ごはんをおいしく食べてほしい」
鳴岡さんの「おかえりなさい」という心の声が聞こえてくるような、大衆酒場に一度訪れてみませんか?気持ちのこもったあたたかいごはんと、おいしいお酒がお待ちしております。
店舗概要
店舗名 | タヰヨウ酒場 |
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TEL | 03-6886-4533 |
住所 | 東京都品川区小山5-23-16 |
営業時間 | 営業時間火~土 16:00~23:30 日・祝 12:00~21:00 |
定休日 | 月曜日 | HP | http://tabelog.com/tokyo/A1317/A131710/13195780/ |