人間誰しも“好み“というものがあります。特に私は「〇〇に行ったらオーダーするものは決まっている」「ラーメン屋では冒険せずにいつものアレ」といった“ルーティン”があるようで、どうやら食に対して保守的なタイプだということを30代半ばにして自覚しました。(とはいえ、お酒に関する好き嫌いはあまりなく、行きつけのお店で勧められた珍しい銘柄や、旅行先の土地でしか飲めない銘酒などは積極的に飲みたいと思う方です)
そんな“保守的”な人間だからこそ、普通の人よりも口にした数の多い“偏愛するお酒”があります。このコラムでは、ビール・焼酎・ワイン・ウイスキー…とジャンルを問わず私が偏愛する1本やおつまみをご紹介しつつ、そこにまつわるエピソードや個人的におすすめの飲み方やペアリングなどを紹介していきたいと思います。
お酒選びの参考にしていただいたり、1人での晩酌の際に読むちょっとしたお供にしていただけると嬉しいです。
ビール好きになるきっかけを作った1本。BREWDOG「PUNK IPA」は私にとってビートルズよりも偉大な存在

「あの1曲を聴いて衝撃が走った」「あのアーティストが人生を変えた」みたいなエピソードって、ミュージシャンとかがよく語るじゃないですか?ビートルズとか、サザンとか?たぶん、感性豊かな人が聞くと世界が変わったような感覚になるんだと思います。
かくいう私も昔バンド活動をしていました。もちろん、好きなアーティストはたくさんいましたけど“その1曲があったから人生が変わった!!”みたいな経験はできなかったんですよね。ビートルズは英語の授業で知ってるなくらいだし、サザンは両親世代が聞いてるなくらいで…。きっと音楽の才能がなかったんだと思います。
そんな私でも、お酒に関して決定的に人生を変える出会いがありました。それがBREWDOG「PUNK IPA」。
あれは確か、大学4年生の頃。当時住んでいた池袋をふらついていて、たまたま入ったビアバーのメニューには「PUNK」「HARD CORE」といった音楽ジャンルの名前がついたビールがずらりと並んでいました。お酒に詳しくなかった当時の私は「なんか面白い名前のビールだな」くらいにしか思わなかったのですが、衝撃だったのがその値段。1杯1200円くらいしたということで......面食らったものです。
流石に学生ですから、何杯も飲むお金があるはずもなく「1杯だけ飲んで出るか」くらいになんとなく頼んだのが一番上に書いてあったBREWDOG「PUNK IPA」でした。泡はサーブされず、グラスになみなみと注がれたビールは普段飲んでいたものよりも色が濃く不思議だなと思ったことを覚えています。
そして、グラスに口をつけて一口飲んだ瞬間…。大袈裟でもなんでもなく衝撃が走りました。これまで感じたことのないグレープフルーツのようなフルーティーな香り、ビール自体は苦いはずなのに香りがあるからなんとなく甘く感じるなんとも言えない感覚…。
「今まで飲んでいたビールはなんだったんだ!?」と、一気に新たな世界に誘われた気分になりました。
ある1曲に人生を変えられミュージシャンを目指した人がいるように、まさにBREWDOG「PUNK IPA」に人生を変えられビールの世界の扉を叩くことになりました。だから、私にとってはビートルズよりも「PUNK IPA」の方が偉大というわけです。
日本のビールを飲んでいるだけじゃわからなかった。クラフトビールの世界を知るきっかけとなったBREWDOG「PUNK IPA」

その日は、あまりに衝撃的すぎて店員さんに声をかけることもなく、そそくさと1杯だけ飲んで帰ったのですが「あの味が忘れられない」とPUNKの名前を頼りに酒屋を巡り、見つけたのが青いラベルが特徴的な350mlほどの缶。再び飲んでみると、やはりあの夜の味。
こういうビールを“クラフトビール”と呼ぶらしいということを、その時初めて知りました。
それまで飲んでいたビールといえば、自宅で飲むアサヒ、キリン、サントリー、サッポロといった日本の大手のものか、ライブハウスで飲むハイネケンくらいだったので、ビールにそんなジャンルがあることに驚いたものです。
そして、いろいろ調べてみるとBREWDOGというブルワリーはとてもDIY精神に溢れていて、ビールにPUNK(パンク)なんて音楽ジャンルをつけるくらい破天荒な社長がやっているということも知り、より興味が湧きました。(実は、社長が来日した際にビアバーでサインをいただいたこともあります)ここら辺は、詳細に書かれた書籍があるので気になる方は読んでみてください。
今では当たり前のようにスーパーやコンビニにも並んでいるクラフトビール。2000年代後半の当時はまだまだ“流行前夜”といった感じで、専門店や酒屋にいかないと手に入れられないようなご時世でしたが、その衝撃的な出会いからクラフトビールの虜になった私は地元の酒屋や、有名なビアバーを巡りあらゆるクラフトビールを飲むようになりました。
おつまみがなくても飲めちゃう!単体での力強さがIPAの魅力
今では理解している人も多いかもしれませんが、IPA(インディア・ペールエール)というのはビアスタイルの1つ。18世紀頃のイギリスが発祥のスタイルで、当時イギリスの植民地だったインドに向けてビールを輸送する際に腐食を防ぐために考えられたのが、ビールにホップを大量に入れるという手法。防腐効果のあるホップとアルコール度数を高めたこのビールが「IPA」の発祥とされています。(諸説あるようですが)
ホップを大量に使うことで苦味が増し、ホップ由来の柑橘系フルーツのような香りがするのがIPAの特徴。私があの夜感じた、グレープフルーツのような香りも、強烈な苦味もビールには欠かせない素材ホップ由来のものだと後になって知りました。
IPAにも様々なスタイルが登場!好みの1本を探す前に…まずはBREWDOG「PUNK IPA」をおすすめします

2000年代半ばから起きたと言われる世界的なクラフトビールブーム。私の肌感覚でいえば(間違っていたらすみません)、2015年くらいまでに日本でも様々なビアバーやブルワリーができてクラフトビールが浸透してきた気がします。そんなブームの時に最も飲まれていたと思われるビアスタイル1つがIPA。このIPAにも今ではいろんな種類があり、アルコール度数が高く重めな「ダブルIPA」や、逆にアルコール度数を低めながらIPAの特徴はしっかりと持った「セッションIPA」、液色が濁った「ヘイジーIPA」など本当に様々。種類が多すぎて「IPAが好きなんです!」と簡単にはいえないような状況かもしれませんね。
今じゃコンビニでもIPAが買える時代ですから、いろんなものを飲み比べて好みの1本を見つけてみるのもいいと思います。でも、個人的なおすすめとしては…最初の1本としてぜひBREWDOG「PUNK IPA」を試してみて欲しいものです。
もし私と同じような衝撃を受けた方がいらっしゃれば…“PUNKに人生を変えられた!”同志として一緒にビールを飲みたいものですね!
¥7,700 (¥7,700 / 個)
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)