オーストリアのワインはキリッとした辛口タイプから、フルーティな甘口のタイプ、自然派のオレンジワインやタンニンが強めな赤ワイン…と様々なバリエーションがあります。
実は、オーストリアワインは昔、ある事件をきっかけに国際的に信用を失ってしまいましたが、近年は質の高い美味しいワインがたくさん生産されており、ワイン愛好家に非常に人気が出ているのです。
今回はオーストリアワインの歴史や特徴に触れつつ、ご自宅で楽しめる美味しいワインを10本厳選しました。是非ご覧下さい!
オーストリアワインの歴史
オーストリアワインは、1970年代当初「質より量」を重視しているものが多く、いわゆる粗悪なワインも多数造られていました。そんな中、1985年にオーストリアで発覚した「ジエチレングリコール事件」が当時のワイン業界に大きな影響を及ぼしたのです。
この事件は、当時ドイツに低価格市場向けに輸出をしていたオーストリアワイン業者が、ぶどうの収穫量が十分に取れなかった時に、ジエチルグリコールをワインに入れて、甘みやまろやかさを人工的に作り出していたというもの。
このジエチルグリコールという成分は、工業用化学物質や不凍液として用いられていて、腎臓や肝臓といった臓器を損傷させる有害な物質。この騒動の結果として、併せて2700万リットル(ワインボトル3600万本分に匹敵)がドイツ当局によって廃棄されました。
この事件はドイツのメディアから世界中に発信され、オーストリアワインの信用は失墜してしまったのです。
「量より質」に方向転換!オーストリアの世界で一番厳しいワイン法
抜本的な改革が必要となったオーストリアワインは、国を挙げて「量より質」の方針に転換。そのために独自の厳しいワイン法を制定しました。
このワイン法はKMW糖度によって7段階に分かれていたり、原産地呼称制度も産地ごとに決められた品種を使うなど、非常に細かく制定されています。
KMWは「クロスターノイブルガー・モストヴァーゲ」という1869年に制定されたぶどうの糖度を測る測定基準で、収穫されたぶどうの糖度によって品性分類を定めています。そのため、今ではオーストリアのワイン法は「世界で最も厳しい」と言われているほどなのです。
現在、オーストリアワインが国際的に成功しているのは、ジエチレングリコール事件の後に非常に厳しいワイン法を造ることによって長期的な視野で品質と信頼回復に努めたからだと言えるでしょう。
オーストリアの主要生産地
オーストリアのワイン生産地は、東部側に集中しており、ニーダーエスタライヒ州とブルゲンラント州が全体の9割を占める2大生産地として知られています。その中で、最も重要な生産地がニーダーエスタライヒ州にあるヴァッハウです。
ヴァッハウでは独自の品質基準による格付けをしており、カジュアルな軽いタイプのワインは「シュタインへーダー」、豊かな果実味でカビネットのランクに相当するのが「フェーダーシュピール」、シュぺートレーゼのランクに相当するバランスのとれたワインが「スマラクト」と3つに分かれています。
このニーダーエスタライヒ州で全体の6割を生産されており、ブルゲンラント州が残りの3割、その他は同じく東部に位置しているシュタイヤーマルク州やウィーン州で造られています。
オーストリアワインを語る上で外せないぶどう品種
オーストリアの白ワインに使われるぶどう品種
オーストリアはヨーロッパでも歴史あるワイン生産国であり、オーストリア固有の品種が多いのが特徴。
その中でも、白ぶどうで最も重要な品種が「グリューナー・フェルトリナー」です。この品種はキリッとしたドライな辛口タイプから、重厚な飲み応えのあるタイプまで、バラエティ豊かなワインを造ることができるのが大きな特徴。
グリューナー・フェルトリナーが、最も栽培されているのがニーダーエスタライヒ州。この州で造られるグリューナー・フェルトリナーは、近年ではオレンジワインの原料としても使われています。
また、ドイツ原産のぶどう品種で、今や世界中で作られている有名品種「リースリング」も、オーストリアで古くから栽培されています。生産量は多くないですが、高品質なワインが多いです。
このリースリングとは別に、オーストリアで造られるリースリングの仲間、「ヴェルシュリースリング」は生産量も多く、スパークリングや甘口ワインなど幅広く使われています。
オーストリアの赤ワインに使われるぶどう品種
また、黒ぶどうで最も重要な品種は、オーストリアの黒ぶどうの中で生産量が最も多い「ツヴァイゲルト」。オーストリアで生まれた固有品種で、「ブラウフレンキッシュ」と「ザンクト・ラウレント」の掛け合わせとして、ツヴァイゲルト博士が開発したぶどうです。
タンニンの強いしっかりとした味わいのぶどうで、冷涼な気候でよく育つため、日本でも北海道で栽培されています。ツヴァイゲルトのもとになっている「ブラウフレンキッシュ」は、晩熟タイプで長期熟成に向いているぶどう。こちらもオーストリアを代表する黒ブドウ品種です。
一方の、「ザンクト・ラウレント」は古くから栽培されている伝統品種ですが、現在生産量は減ってきており、香りやアタックも穏やかなミディアムボディのワインに仕上がります。
ソムリエ厳選!オーストリアワインランキングTOP10
10位 マインクラング グラウパート ピノ・グリージョ
まずは、オーストリアのオレンジワインをご紹介。このワインは自然のまま育てるオーガニックのピノ・グリージョが使われています。
赤ワインを造る製法と同様に果皮ごと漬け込み、旨味を抽出したオレンジワインです。 グレープフルーツや白桃などのアロマティックな香りと、フルーティな果実味とフレッシュな酸が広がります。
また、柑橘類の皮のようなほろ苦いタンニンが特徴で、ミネラル感のある飲み口に仕上がっています。タイ料理などのスパイシーな味わいの料理と相性が良いです。
9位 グラッスル ツヴァイゲルト クラシック
深みのあるルビーレッドの色調で、熟した果実の甘みが広がり、柔らかいタンニンが心地良い飲み口です。ビオロジック農法で栽培されたツヴァイゲルトを楽しめます。
3代続く家族経営の小さなワイナリーですが、カリフォルニアのソノマで修行を重ねたオーナーが丁寧に造っているこちらのワイン。
タンニンはしっかり感じますが飲み口はまろやかで、お肉料理全般と合わせることができます。
8位 ユルチッチ・ソンホフ グリューナー・フェルトリーナー ベレナチュレレ
お次はオレンジワインです。グリューナー・フェルトリナーらしい、リンゴや洋ナシ、アプリコットのような果実の香りが広がります。穏やかな酸味で、程よいミネラル感。
ワイン名のは「ナチュラル美女」という意味で、自然体の美しさが味に現れているオレンジワインです。
控えめな酸味で親しみやすい飲み口なので、オレンジワインに馴染みのない方や、抵抗がある方でも楽しんでいただけるかと思います。
7位 カイザー ピノ ノワール
オレンジの皮、イチゴ、チェリーの香りがあり、まろやかな口当たりが楽しめるワインです。
良質なぶどうを収穫するために、一本の樹に対し6~8房のみを残し、葉を剪定することで日光が実へ届くようにするなど、十分な配慮がされているのだそう。
その後、手摘みで収穫・除梗された後、コールド・マセラシオンを施し、28℃で8日間アルコール発酵させます。そしてマロラティック発酵を行い、樽で24ヶ月熟成させます。
エレガントなタンニンで、酸味も程よいのが特徴。ミディアムボディですが飲み口のインパクトと飲んだ後のアロマの余韻が長く続きます。
チーズや生ハムを使った前菜と相性が良いです。
6位 ライナー・ヴェス ヴァッハウグリューナー・フェルトリナー
ニーダーエスタライヒ州のヴァッハウで造られたグリューナー・フェルトリナーです。
口の中がキュッとすぼまるような、洗練された酸味が特徴的。
透明感があり、ミネラルを豊富に感じられ、長く続く余韻がとても魅力的です。 グリューナー・フェルトリナーの魅力がこの1本につまっており、ミモレットやゴーダチーズと相性がよいです。
5位 レステラッセン クレムスタール グリューナー フェルトリナー
香りは、レモンの砂糖漬けや青いパイナップルのような爽やかで、華やかな香り。ミネラルも豊富な味わい深いグリューナー・フェルトリナーです。
口に含むと、オーストリアの爽やかな果実味を存分に楽しめる白ワインです。白身魚を使ったムニエルや、野菜を使ったテリーヌとの相性が抜群です。
その他、さっぱりした和食にも合わせられるので是非試していただきたいです。
4位 ユルチッチ ソンホフ グリューナーフェルトリナー テラッセン
国際的に高い評価を得るオーストリアの生産者「ユルチッチ」が造る、香り高くミネラル豊富な白ワイン。
熟した果実の豊かなボディと、しっかりとした酸味がバランスよく交じり合っています。グリューナー・フェルトリナーの特徴がしっかりと味に現れている一本です。
ニーダーエスタライヒ州にあるカンプタール地方の冷涼な気候で育ったぶどうと、ヴァインフィアテル地方の黄土質土壌で育ったぶどうをブレンドして造られています。
3位 シュタイニンガー グリューナー・フェルトリー ゼクト
グリューナー・フェルトリナー100%の爽やかなスパークリングワインです。木樽熟成による酵母の香りと柑橘類の爽やかなアロマが調和されています。
力強い泡立ちと繊細で凝縮した果実味がリッチな印象を与えてくれます。控えめながら適度な酸とミネラル感を持っており、キリッとしたドライな辛口のスパークリングワインです。
カクテルシュリンプやペスカトーレといった、魚介をふんだんに使った料理と一緒に楽しみたいですね。
2位 ウィーナー ゲミシュター・サッツ
こちらはグリューナーフェルトリナー中心に、ヴァルシュリースリング、ヴァイスブルグンダー、リースリング、シャルドネなど9種類をブレンドした白ワインです。
首都ウィーンの伝統であるゲミッシュター・サッツといわれる混植混醸のワインは、およそ100年前から大衆向けに造られてきたワインで、オーストリアワインの元祖の製法を味わいことができます。
カジュアルな親しみやすい飲み口で、様々な料理に幅広く合わせることができますので、ご自宅で楽しむのにぴったりの1本です。
1位 グリューナー フェルトリーナー ヴァイトガッセ クレムスタール
1位に輝いたのは、オーストリアの王道品種である、ニーダーエスタライヒ産のグリューナーフェルトリナーで造られた、オーガニックワインです!
無農薬、無化学肥料、無除草剤がモットーの造り手で、添加物や合成保存料を使用しない人にも地球にも優しいワイン造りをしています。パイナップルや白桃のような甘くトロピカルな香りと、ハーブや胡椒のような洗練されたアロマ。味わいはフレッシュな酸味が生き生きと感じられ、口がキュッとしまる感覚があります。
バランスが取れた辛口の白ワインなので、お寿司や天ぷらなどの和食との相性は抜群です!
まとめ
いかがでしたか。オーストリアワインは日本への流通量はそこまで多くないですが、自然派ワインをはじめとして、クオリティの高いワインが多いです。
また、今回多く紹介させていただいたオーストリアの固有品種、グリューナーフェルトリナーは、和食との相性がとても良いので、是非ランキングを参考にしてオーストリアワインを楽しんでみてください!