スコッチの中において、比較的しっかりしたクセがあるアイラ島のウイスキー。
アイラ島最古の蒸溜所で作られる「ボウモア」は、「アイラモルトの女王」として人々から愛されるウイスキーです。
今回はアイラの有名ブランドであり、一番伝統的な「ボウモア」をご紹介します。
ボウモアとは?どんなウイスキー?
「ボウモア」の特徴といえば、やはりスモーキーさと芳醇なピートの香り。そして、味わいの奥に感じ取れるゴージャスな甘さにあります。
クセが非常に強いものの、鼻が慣れれば芳醇な甘さを体験できるでしょう。この甘さからボウモアは「アイラモルトの女王」と評価されているほどなんです。
非常にスモーキーさと甘さのバランスが良く、創業から長い時が流れた現在も世界中から愛されています。
アイラモルトとは
アイラモルトとは、スコッチウイスキーの種類の1つ。非常に癖の強いウイスキーが多く生産されている「アイラ島」で生産されているウイスキーのことを指します。
アイラモルトは総じて好みが分かれる個性的なウイスキーが多いのが特徴。しかし、その癖の強さから「スコッチウイスキーはアイラモルトしか飲まない」と言う愛好家も数多く存在します。
多くの方から支持を受けているアイラモルトですが、アイラモルト以外にもスコッチウイスキーには大きく6種類に分かれており、それぞれ特徴が異なります。
以下では、6つのスコッチウイスキーの特徴を紹介します。
スペイサイドモルト
スコットランドの中心に位置する地方で生産されるウイスキー。
元々はハイランドモルトに分類されていましたが、蒸溜所の圧倒的な多さから分類された経緯があります。
マッカランやグレンリベットなど、非常に多くの有名銘柄がリリースされており、テイスト・香りと共に非常に爽やかで華やかなのが特徴です。
アイラモルトのような塩気を感じるピート香ではなく、癖のないスモーキーさが特徴なので、ジャパニーズウイスキーが好みの方におすすめしたい地方のモルトです。
ハイランドモルト
スコットランド北部で生産されるウイスキーは、ハイランドウイスキーと呼ばれ親しまれています。ハイランド地方は非常に広く、そのた生産されるウイスキーのキャラクターも様々。
ミネラル質の影響でスペイサイドモルトと比べると、少々土っぽい印象のウイスキーが多いです。クライヌリッシュやグレンモーレンジなどが有名な銘柄で、非常にバランスが良いウイスキーを生産しています。
こちらも、ジャパニーズウイスキーが好きな方におすすめしたい地方のウイスキーです。
ローランドモルト
スコットランドの首都や、主要機関が集まるローランド地方。昔は様々な蒸溜所が稼働していましたが、都市産業が拡大するにつれて自然や風土を利用して生産されるウイスキーの蒸溜所は年々数を減らし、今では10に満たない蒸溜所しか稼働していない状況になってしまいました。
ライトで飲みやすいキャラクターのウイスキーが多く生産されています。
近年では、閉鎖してしまった蒸溜所のモルトを使用したウイスキーが限定で発売されたりと話題になっています。
キャンベルタウンモルト
スコットランドの西側に位置する、人口5000人ほどの街で生産されるウイスキーです。
禁酒法の時代に一世を風靡したキャンベルタウンのウイスキーは最盛期には30以上の蒸溜所が稼働し、当時のスコッチウイスキー産業の中心地でした。
主にアメリカへ向けてウイスキーを輸出していましたが、質より量の政策や禁酒法や大恐慌の影響で多くの蒸溜所が閉鎖されてしまい、今では片手で数えられるほどの蒸溜所が稼働するのみになってしまっています。
しかし、その品質は高くスプリングバンクやロングロウなどのバランスの取れたウイスキーは日本国内でもファンが多い銘柄になっています。
アイラモルト
キャンベルタウンの北西に位置する島、アイラ島で生産されるウイスキーです。
ボウモアをはじめ、数多くの熱狂的ファンを抱える魅力的なウイスキーが生産されています。
人口は3500人ほどとキャンベルタウンより少ないですが、蒸溜所の数は2018年にアードナッホー蒸溜所が操業を開始し、9つの蒸溜所が存在しています。
ボウモア以外にも、ラガヴーリンやカリラなどの世界的にも有名な蒸溜所が稼働しています。
スコッチウイスキー好きとしては一生のうち一度は訪れたいアイラ島は非常に豊かな自然と歴史が存在し、現在においてもアイラ島で作られたウイスキーはファンの心を掴んで離しません。
アイラ島についは「初心者~上級者まで!人気のおすすめアイラウイスキー10選【専門家監修】」 で詳しく解説しています。
アイランズモルト
アイラ島を除いたスコットランドの島々で生産されるウイスキーです。
島ごとに特徴が違うため「こんな味!」とは断言はできませんが、個性的なものからバランスのとれたものまで様々な種類が生産されています。
しかし、島樣といってもアイラ島のようなテイストのウイスキーはそこまで存在しておらず、このことからもアイラ島の特殊さが伺えます。
アイラモルトはなぜ癖が強い?~アイラ島の気候とピート香~
ボウモアをはじめとする、アイラ島で造られるウイスキーの癖の強い香り。
よく薬臭い、煙っぽい、正露丸の匂いなどと言われるこの香りの秘密の1つに、ピートと呼ばれる泥炭に含まれた海水の磯臭さが挙げられます。
アイラ島ではほとんどの蒸溜所が海に面して建てられており、その近くで採取されるピートはふんだんに海水を含んでいます。
さらに、強い海風によって運ばれてくる海藻に含まれるヨード香を強く含んでいるため、さらに個性的なピートに仕上がります。
このピートを使用することによって、あの独特な個性を持つウイスキーが出来上がるのです。
バランスのとれたボウモアのテイスト
そんな癖の強いウイスキーが生産されているアイラ島の中でも、ボウモアはそこまで薬臭さが強い方ではありません。
それでもスペイサイドなどのスムースなウイスキーと比較すればその差は明白なのですが、曲者揃いのアイラモルトの中では穏やかな印象。
ボウモアはアイラモルトの中でも、アイラ島の癖をしっかり出しつつもバランスのとれたウイスキーとして知られており、アイラモルト初心者にもおすすめできるウイスキーです。
ブレンデッドウイスキーのアクセントとしても優秀
ボウモアをはじめとするアイラモルトは、複数のシングルモルトをブレンドして作られるブレンデットウイスキーのアクセントとしても非常に優秀で、様々な有名ブレンデットウイスキーのキーモルトとしても使われています。
癖のあるアイラモルトを少しブレンドすることで、複雑で立体的なテイストを実現することができるんですね!
甘さの秘密は使われる樽の種類
ボウモアの持つ優雅な甘さの理由の1つに、バーボン樽やオロロソのシェリー樽を主に使用していることが挙げられます。
バーボン樽を70%、シェリー樽を30%の比率で使用していますが、ボルドーやマデイラワイン樽、日本のミズナラ樽など様々な樽熟成を行なっています。
熟成する場所は海に面しており、一部は海面より下にあるのもボウモアの特徴です。
ボウモアの歴史と蒸溜所
1779年に商人のデビットシンプソンが創業した、アイラ島の中で最も古い蒸溜所。ゲール語で「大きな岩礁」を示す通り、蒸留所はコンパクトな港の脇に建っています。強風が吹く日には波しぶきが直にぶつかる程の場所にあって、敷地内では絶えず潮の香りが広がっています。
1994年になるまでは、モリソンボウモア社が蒸留所を保有していましたが、サントリーが買い上げました。それにより、サントリーが持つ山崎や白州蒸留所においても、ボウモアの長期熟成系を味わうことができます。
ちなみに、製造工程などは企業にまかせているところが一般的ですが、「ボウモア」は自家製の麦芽にこだわりがあり、約4割の麦芽を「フロアモルティング」と言われている昔からの製造方法によって作っています。
フロアモルティング製法とは
読んで字のごとく、部屋で大麦を発芽させる方法です。水に浸した麦芽を広い麦芽室の床に広げ、発芽を促します。
モルトマンと呼ばれる職人が木製のシャベルを使い空気に触れさせ、この工程がボウモア独自の麦芽を作る重要な作業として世界中で知られています。
アイラモルトの女王となるきっかけ
優美に感じられる甘い香りが人を惹きつける「アイラモルトの女王」の名前の由来は、イギリスのエリザベス女王と関係があります。
1980年、エリザベス2世がボウモア蒸留所を訪れた時に記念として新たなウイスキーが樽詰めされて、女王戴冠50周年を記念する2002年に、このウイスキーが開放されました。
「Bowmore The Queen’s Cask」と称された素晴らしいウイスキーは数百本のボトルに入れられ、そのほとんどが王室に献上されたそう。残りの数本のうち、1本が蒸留所へ、1本がモリソン・ボウモア社のラボ、最後の1本はチャリティーを対象とした競売に出されました。
ボウモアのラインナップ
ボウモアにはいくつか種類があります。それぞれで特徴があるので、簡単に紹介します。
ボウモア 12年
ボウモアとを最初に味わうのであればこのボウモア12年がおすすめです。
ボウモアならではのスモーキーな香りと少し甘いテイストが特徴で、世界中様々な人々から愛される1本。
アイラらしいスモーキー感とピート香。更に、柑橘系の爽やかな香りも感じられます。いわゆる煙いフレーバーだけでなく、甘味やほんのりとしたビターな感覚もあります。
1口飲んだ後に長く続く複雑で繊細な余韻は極上のひとときを演出してくれるでしょう。
強いピート香を持つ、ラフロイグなどの銘柄が苦手だと感じた方でも、ボウモアを味わうことでアイラ系ウイスキーが好きになるきっかけとなるかもしれませんよ。
ボウモア ヴォルト
2018年に発売された、ノンエイジのカスクストレングス。銀行などの貴重品保管室を意味するVAULT(ヴォルト)という名前がつけられており、特別な熟成保管庫で寝かせたウイスキーが使用されています。
この熟成保管庫は、海抜0mの場所に位置するボウモアの熟成保管庫の中でも変わった存在。世界最古の貯蔵庫ともいわれているそう。
限られたバーボン樽で熟成されたアルコール度数51%のボトリング。明るめの液体は、ヴォルト内と変わりなく潮の香りが感じられます。
ボトルに刻印された大西洋の海塩を意味した「アトランティクシーソルト」の文字のごとく、吹き抜けていく大西洋の潮風を感じてください。
ボウモア 15年 ダーケスト
2017年に免税に限り公開されたボトリングの内の1つです。
アイラだからこそできるピート香は言うまでもなく、バーボン樽熟成で生じるチョコレートやレーズンの香りも特徴的。
ボウモア 18年
シェリー樽原酒の割合を高めることで、ボウモアの持ち味のスモーキーさと一緒にシェリー樽からくるスイート感が抜群の豪華なモルトです。
ボウモア ナンバーワン
出典:【ハイボールとの相性抜群】 シングルモルトウイスキー ボウモア ナンバーワン 700ml
2018年5月22日に販売された大胆なタイトルの「ボウモア ナンバーワン」。
ヴォルトと同じく、ボウモア蒸溜所が持つ貯蔵庫の中でも最も古い、「ナンバーワンヴォルト-No.1 Vaults-(第一貯蔵庫)」で熟成させたファーストフィルバーボン樽の原酒を100%使用しています。
シナモンを思わせる味わいに、アイラ系ウイスキー特有の甘じょっぱさ。バニラビーンズの香りと強めのスモーク香が印象的です。
ボウモア ゴールド・リーフ
2014年に発売された限定のボウモアです。
通常はバーボン樽熟成の後にシェリー樽を使って熟成させますが、このゴールドリーフはシェリー樽熟成の後にバーボン樽熟成を行う珍しいボウモアです。
飲んだ後の余韻は軽く、しかし長く続く存在感のある香りがボウモアらしさを際立たせています。
おすすめの飲み方
ボウモアを楽しむためのおすすめの飲み方を紹介します。
お酒の飲み方や楽しみ方に正解はありませんが、ぜひいろんな飲み方を試して自分の1番好きな飲み方を見つけてみてくださいね。
ストレート
アイラ島で有名な「ボウモア」を心置きなく堪能したいなら、スモーキーな香りをエンジョイするためにストレートでいただきましょう。
ソーダで割っても美味しいですが、「ボウモア」の魅力をより感じることができるストレートでまずは飲んでみてください。
ストレートがきついのであれば、ロックや水割りでじっくりと味わって飲むのも◎。
ウイスキー初心者の方は、最初はツンと来るような香りに押されてしまうこともありますが、少しずつスモーキーな香りに適応してくると優美な甘さにめぐり会うことができます。
トワイスアップ
ボウモアのストレートと常温の水を1:1で割る方法です。
加水することによってボウモアの奥に隠れていた甘さやフルーティーな香りが一気に出てきます。
5ml以下の加水でもキャラクターが変化するので、ぜひ試してびっくりしてほしい飲み方です。
少しだけアルコール度数を下げたい場合にもおすすめの飲み方です。
ハーフロック
トワイスアップに氷を入れたハーフロック。
ボウモアは氷を入れて温度が低くなると、香りが少しだけ閉じて穏やかになります。
トワイスアップにしてもアルコール度数がきつい場合におすすめの飲み方です。
氷を入れる場合には冷蔵庫の製氷機で作られる氷ではなく、純氷を使うのがおすすめです。
家庭用冷蔵庫の製氷機は、水の温度を急速に下げて氷を作るため氷に空気などの不純物が入ってしまい、溶けやすい氷が出来上がります。
また、非常に割れやすいためさらに水っぽくなる原因を作ってしまうのでおすすめしません。
コンビニなどでも簡単に購入することができるので、ぜひ純氷で作ってみてください。
水割り
ハーフロックより加水量が多い作り方が水割りです。
水割りは1つのカクテルと呼ばれるほど、作り込んだ時のテイストに差が出る飲み方です。
氷を純氷にするだけではなく、各材料をしっかりと冷やすことが重要です。
まずはグラスに純氷を入れ、静かに混ぜてグラスを冷やします。
氷から水が溶けでるので水を捨て、ボウモアを注いでしっかりとステアし冷やします。
冷やしたミネラルウォーターをそそぎいれ、1回転半ほどステアして完成です。
材料をしっかりと冷やすことにより、アルコール度数は下がってもコシのあるボウモアの水割りが出来上がります。
また、割材のミネラルウォーターはボウモアの仕込み水でもある軟水がおすすめです。
ボウモアと非常によく馴染み、ボウモアの良さを引き立たせてくれます。
まとめ
「ボウモア」の刺激と大胆に味わえる香りは、別のウイスキーの勢いを跳ねのけるような魅力でみなぎっています。
ボウモアを楽しめるようになったら、別のアイラモルトを試してみると国内にいるのにアイラ島を巡っている感覚になって、ウイスキーがとても楽しむなること間違いなし。
ぜひアイラモルトの女王と称される、香り豊かな「ボウモア」を味わってみてはいかがでしょうか?