日本酒と一言で言っても、様々な種類のものがあります。地方ごとに酒質の特色もあり、現地に赴いた際に地酒を楽しむのは、酒飲みにとっての楽しみの1つですよね。
各都道府県の日本酒をピックアップしてご紹介するこちらの記事、今回は福岡をご紹介!恵まれた環境で造られる日本酒はどのような味なのか。筆者おすすめの10本をランキング形式でご紹介しつつ、福岡の日本酒の特徴や歴史にも触れながら徹底解説します。
福岡県の日本酒の特徴
福岡の日本酒の酒質
福岡県の日本酒は、きめ細かく口当たりまろやかな優しい酒質が特徴です。
これは、福岡県の水が地域によって違いはあれ、大体において軟水が多いことに由来します。全国的に人気のある地酒の多くが軟水で仕込まれていることから、福岡県は時代が求める味に適した水環境が整っている地域と言えるでしょう。
そんな水を運ぶのは、県南東部に位置する1,000m級の台地性の山地や、中部の筑紫山地です。有明海に注ぐ九州一大きな筑後川、響灘に注ぐ遠賀川などの一級河川もあり、あらゆる場所で酒造りに適した水が得られます。
日本酒を支える!福岡の米
日本酒にとって水と同様に大切な米においても、福岡県は大きなアドバンテージを持っています。
そもそも福岡県は、日本でも早くから稲作が行われた地域です。南部の筑後平野には広大な水田が広がり、現在も全国でも有数の米どころとして知られています。
酒米の王様と評される山田錦を、兵庫県・大阪府と並び全国に先駆けて栽培し始めたのも福岡県です。福岡市の西の糸島地区辺りが、稲穂が育つ時期の昼夜の温度差が栽培に適しており盛んに行われました。
その勢いは素晴らしく、山田錦の生産量は兵庫県に次いで福岡県が全国で二番目。山田錦以外の酒米用として使われている酒造用米の生産量では全国一。米は県内で完全にまかなえる県であり、酒用の米作りに関しては全国的に見ても非常にハイレベルな産地であると言えます。
杜氏に関して
最後に、これらの水・米を活かして酒を醸す杜氏についても注目してみましょう。
福岡県には、柳川杜氏・三潴杜氏・久留米杜氏といった大きな集団があります。都会に近すぎることもあり、今では小規模になってしまいましたが、糸島の芥屋にも芥屋杜氏が存在します。
杜氏が持つ独特の流儀や、地域や人によって微妙に異なってくる日本酒の味わい。これらの杜氏が醸した酒は間違いなく"福岡県ならではの味"になっていることでしょう。
全国的に見ても、酒どころとしての条件を備えたトップクラスの地域である福岡県ならではの名酒を、是非堪能してみてください。
福岡県の日本酒ランキングtop10
福岡県日本酒ランキング10位:本醸造「蒼田」
喜多屋の「蒼田(そうでん)」は、酒米の王様"山田錦"を100%使用して作られる本醸造酒。穏やかな香りとしっかりした旨味、スッと消えるような心地良いキレが特徴のフルーティーな味わいです。
このお酒の精米歩合は65%なのですが、吟醸酵母を使用して低温発酵でじっくり仕込まれているなど、本醸造酒ながら実質的には“吟醸造り”で醸されています。限定流通酒ながら通販でも比較的気軽に手に入るのも嬉しいところです。
口中をさっぱりと流してくれる淡麗辛口タイプなので、食中酒として利用するのがオススメ。冷やでも良いですが、冷酒で楽しむと特に良さが引き立つ一本です。和食はもちろん、酢豚のような中華料理とも相性が良いですよ。
福岡県日本酒ランキング9位:熟成 大吟醸 枯淡
高橋商店が造り出す「熟成 大吟醸 枯淡」は、山田錦を使用した精米歩合40%の大吟醸酒を、低温貯蔵庫で3~5年じっくりと熟成させた一本。熟成酒ならではの独特な雰囲気とまろやかで上品な味わいと、大吟醸酒らしいキレの良さがどちらも楽しめるお酒です。
創業300年を超える蔵元では、コンピューター精米機での自家精米やストップウォッチを使用した洗米など、現代技術と伝統を融合させた酒造りを実現。卓越した技術を持つ杜氏の目・鼻・舌で吟味されたお酒は、理想的な環境での熟成を経て出荷されます。
「熟成 大吟醸 枯淡」は、冷酒・冷や・燗酒と幅広く楽しめます。辛口の酒なのですが、大吟醸酒としての雰囲気をストレートに味わうなら冷酒か冷や、少し熟成の良さを膨らませたい時は燗酒で味わうのが良いでしょう。
福岡県日本酒ランキング8位:独楽蔵 玄 円熟純米吟醸
出典:独楽蔵 円熟純米吟醸酒 玄 720ml 【福岡県 杜の蔵】こまぐら げん 四合瓶
久留米市に蔵を置く杜の蔵の「独楽蔵 玄 円熟純米吟醸」は、県産の山田錦を贅沢に使い、定温でじっくりと熟成させた純米吟醸酒です。穏やかながらしっかりした吟醸香と熟成した独特の香りがあり、口に含むと丸みを帯びた酸味や渋みが特徴的です。
このお酒の名前にもなっている「独楽蔵」は、福岡県の無形文化財「博多独楽」が由来。その名に恥じないような伝統文化を大切にした酒造りを行い、吟醸酒をじっくりと落ち着いた円熟の味わいになるまで大切に熟成しています。
オススメの飲み方は、大きめのグラスで空気に馴染ませながら常温でゆったりと。また、少し温めるとより一層柔らかな旨味や酸味が味わえます。和食はもちろん、クリームやチーズを使った料理、発酵食品と相性抜群です。
福岡県日本酒ランキング7位:独楽蔵 無農薬山田錦六十 特別純米
出典:【日本酒】独楽蔵(こまぐら) 無農薬山田錦六十 特別純米 1800ml
「独楽蔵 無農薬山田錦六十 特別純米」は、杜の蔵と4軒の酒米農家の取り組みから生まれた特別な限定酒。お米の良さを感じられるような優しくふくよかな香り、柔らかい旨味と酸味、長く続く余韻が特徴的です。とにかく口当たりがよく、飲む場面を選びません。
このお酒の最大の個性は“酒米の王様”山田錦の無農薬栽培にこだわったこと。ラベルの裏には、苦労して無農薬米を作り出した4人の農家の方の名前が書かれています。その宝石のようなお米を60%まで精米し、じっくりと醸されたお酒です。
辛口で余韻を長く楽しめるタイプなので、普段遣いからハレの日まで、ゆっくりと料理を堪能したい時に是非とも横に置いておきたい一本。香味のバランスが優れ味わいが崩れないので、冷酒からお燗まで好みの温度で楽しんでしまっても大丈夫です。
福岡県日本酒ランキング6位:庭のうぐいす 大吟醸 心
ランキング6位の「庭のうぐいす 大吟醸 心」は、"最高の酒を造りたい"という山口酒造場の杜氏の想いを形にした大吟醸酒。驚くほどフルーティーな吟醸香で、口に含むと落ち着いた上品な膨らみのある旨味とスッキリとした綺麗な味わいが楽しめます。山田錦を精米歩合38%まで磨き込み、フレッシュさを追い求めた一本です。
ラベルにもなっている「庭のうぐいす」は、近くにある北野天満宮から飛んできたうぐいすが、中庭の湧水で喉を潤していた姿に由来。うぐいすも喜ぶ豊かできれいな水が、この味わいをしっかりと造りあげているのです。
「庭のうぐいす 大吟醸 心」はキリッとよく冷やして楽しむのがおすすめ。野菜の天ぷらなどの素材を生かした味わいによく合います。自分で楽しむのはもちろん、プレゼントにもピッタリです!
福岡県日本酒ランキング5位:純米大吟醸 喜多屋 しずく搾り
「純米大吟醸 喜多屋 しずく搾り」は、福岡県糸島産"山田錦"を精米歩合39%まで磨き上げた純米大吟醸酒です。フルーティな香りと豊かな味わいが特徴。甘辛・濃淡の度合いが共に中口で、とても繊細で絶妙なバランスにまとめられています。
極寒期に仕込み、丹念に発酵させ、圧力を与えずに自然の力のみで造られる「しずく搾り」によって仕上げられた同商品。IWC2013サケ部門にて「チャンピオン・サケ」を受賞した経験のある酒蔵の技術の粋を集めて造られた逸品中の逸品です。
その繊細で華やかな香味の真髄を楽しむためにも、最初の一杯は是非とも冷酒で。冷やで飲むとそのバランスの良い味わいも感じ取れるので、料理やシチュエーションにあわせて色々と楽しみましょう!
福岡県日本酒ランキング4位:田中六五 6513
「田中六五 6513」は、白糸酒造を代表する日本酒「田中六五」シリーズの限定原酒。アルコール度数13度の少し優しい旨味のある味わいで、自然で穏やかな果実香と柔らかい口当たり、とても良質な水を飲んでいるような清らかさも感じられるお酒です。
"糸島の清らかな空気を胸いっぱいに吸い込んだ時の心地良さ"をイメージして醸された一本は、地元糸島産の山田錦を65%まで精米して醸されています。素直でシンプルな良さを体現している「田中六五」の中でもとても人気が高い銘柄です。
このお酒の“シンプル”な特徴を生かすためにも、しっかり冷やして楽しむのが何よりオススメ!刺身や天ぷらと言った定番の和食はもちろん、味噌漬けの魚などのしっかりした味わいにも合わせやすいお酒です。
福岡県日本酒ランキング3位:三井の寿 +14 大辛口純米吟醸 山田錦
出典:三井の寿 (みいのことぶき) +14 大辛口純米吟醸 山田錦 720ml
「三井の寿 +14 大辛口純米吟醸 山田錦」は、"大辛口"を名乗るのに相応しい、日本酒度+14の純米吟醸酒です。超辛口でらしいキレと、お米のふくよかな旨味をしっかりと感じられる甘・辛・酸のバランスが非常に優秀です。アルコールも14度に仕上げられており、アルコールによる辛口感ではなく、味わいにより辛口を表現した一本だと分かりますね。
実はこのお酒は特別なダブルA面ラベル仕様なのも大きな特徴。片方のラベルは漫画「SLAM DUNK」の人気キャラクター・三井寿のユニフォームをオマージュしたものです。新作映画も公開されたことで、ファンにはたまらないグッズとも言えるでしょう。
リンゴのような穏やかな香りや、甘・辛・酸が絶妙なバランスで調和した味わいを楽しめる同商品。温度帯は、雪冷え(5℃)や涼冷え(15℃)で楽しむのがオススメです。
福岡県日本酒ランキング2位:繁桝 純米大吟醸
出典:推奨酒 繁桝 純米大吟醸酒720ml 福岡の地酒 【翌日出荷可能品】
高橋商店の「繁桝 純米大吟醸」は山田錦を100%使用。精米歩合は40%で、最後の一滴まで美味しく楽しめる純米大吟醸酒です。うっとりするような大吟醸らしい華やかな香り、しっとりとした純米ならではの旨味を味わいが特徴。アルコールは15度以上16度未満とほど良くまとめられています。
贅沢な造りの純米大吟醸酒ながら気軽な価格帯で入手しやすいのもポイント。特別な日に楽しむのはもちろん普段遣いにも使いやすい、お酒好きの“日常”に添えておきたい逸品です。豊かな八女市の恵みを生かした、誰もが楽しみやすい落ち着いた雰囲気の日本酒です。
日本酒度は+1~+3ほどのやや辛口な味わいは冷酒もしくは冷やで楽しむのがオススメ。お寿司やお刺身など、旬の魚介類とあわせてゆったりとした時間を演出しましょう!
福岡県日本酒ランキング1位:田中六五
出典:田中 六五「たなかろくじゅうご」糸島産山田錦 純米酒 720ml【白糸酒造】【福岡県】
ランキング1位は白糸酒造の「田中六五」です。柔らかな香りと凝縮された米の旨味が特徴。ブドウを思わせる香りが漂う爽やかさで、心地良いフルーティーな酸味もあります。その酸は香りの主張と味の主張をまとめ、それぞれの良さを絶妙に引き立てています。シリーズの中でも最もスタンダードな「田中六五」は"飲んで美味しい、食べて美味しい"純米酒です。
銘柄の「田中」とは、代表取締役の“田中家”の姓であると共に、造られるのが「田んぼの中にある酒蔵で醸された」という意味が込められてます。また「六五」は、糸島産山田錦のみを用い、65%精米によって仕上げられた純米酒」の意味。シンプルな名前の中に、造り手の思いやメッセージがたっぷりと込められています。
このお酒は冷酒で楽しむのが一番のオススメですが、冷やでも楽しめます。和洋中、様々な料理と合う絶妙なバランスは見事の一言。"究極の食中酒"と表現しても差し支えない、大切な食事の際に楽しみたい日本酒です。
福岡県の酒蔵ランキングtop5
福岡県酒蔵ランキング5位:山口酒造場
山口酒造場は、天保三年(1832年)に創業した久留米市の酒蔵です。
由緒正しき蔵であり、創業以来、有馬藩の御用銘柄として毎年篠山神社の境内に奉納されています。昭和の終わり頃から熱心に取り組んだ純米酒造りの成果である、特定名称酒割合が現在90%を越えていることが蔵の特徴。
代表銘柄は「庭のうぐいす」です。
福岡県酒蔵ランキング4位:喜多屋
喜多屋は、江戸時代文政年間(1818~1830年)に創業した八女市の酒蔵です。
創業以来、受け継がれている"主人自ら酒造るべし"という家憲のもと、社長以下多数の酒造技術者が、杜氏・蔵人と一体となって酒造りをしているのが特徴。代表銘柄は、社名及び酒銘になっている「喜多屋」です。
同銘柄は、創業の際の"酒を通して多くの喜びを伝えたい"という志のもと名付けられました。
福岡県酒蔵ランキング3位:みいの寿
みいの寿は、大正十一年(1922年)に創業した三井郡の酒蔵です。
創業以来、酒造りにこだわり続け、製造する日本酒の90%以上が特定名称酒、それも純米酒が占めていることが特徴。近年、全国新酒鑑評会で金賞五回、入賞二回の七年連続入賞という実績を打ち立てました。
代表銘柄は「三井の寿」です。
福岡県酒蔵ランキング2位:高橋商店
高橋商店は、享保二年(1717年)に創業した八女市の酒蔵です。
初代高橋右衛門が米どころ八女で造り酒屋を開業し、十代目繁太郎が大正十五年(1926年)より会社組織に改めて運営。この時、繁太郎の名前の"繁"をとり誕生したのが代表銘柄「繁桝」です。
同銘柄には"酒を量る桝が益々繁栄するように"という願いが込められています。
福岡県酒蔵ランキング1位:白糸酒造
白糸酒造は、安政二年(1855年)に創業した糸島市の酒蔵です。
糸島産"山田錦"の生産地にある恵まれた環境の中で酒造りを実施。名勝白糸の滝の伏流水で仕込み、全量を古式手法"ハネ木しぼり"で醸す酒は、地酒として多くの人に親しまれています。
代表銘柄は「白糸」です。
豊かな環境が生む福岡の日本酒を楽しもう!
歴史ある酒造も多く、日本酒ファンが知っているような有名銘柄も造られている福岡県。お気に入りの1本は見つかりましたか?
今回ご紹介した日本酒は、ほんの1部分。これ以外にも美味しい日本酒がたくさんあるので、ランキングを参考にしつつ好みの日本酒を見つけてみてくださいね。