世界中で広く栽培されている、国際的なぶどう品種「カベルネフラン」。フランス、ボルドーではブレンドの補助品種として使われることが多く、高品質なボルドーブレンドを造る上で、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローの引き立て役というイメージが強いかもしれません。
しかし、近年ではイタリアやチリ、カリフォルニア、日本でも主要品種として使われることも多くなってきました。そこで今回は、主役も脇役もこなすユーティリティプレイヤーなカベルネフランの魅力と、おすすめワインをソムリエの私がランキング形式で10本ご紹介します!
カベルネフランの特徴、味わいって?
カベルネフランってどんなぶどう?
カベルネフランはあの王道ぶどう品種「カベルネ・ソーヴィニヨン」の祖先と言われている品種です。
原産はスペインのバスク地方と言われており(諸説あります)、もともとワイン醸造の際の補助品種として、ブレンド用、つまりはわき役として使われることが多いぶどうでした。
フランスのボルドーではボルドーブレンドを造る上で欠かせない補助品種として使われる一方、ロワール地方では単一品種のワインも造られており、フランス国内ではブルトンやブーシェなどのシノニム(同じぶどうでも違う呼称)があり、古くから親しまれています。
カベルネフランの主な生産地
カベルネフランは世界各地で生産されている国際ぶどう品種ですが、フランスにおける生産量が全体の8割を占めています。フランスの主な生産地としては、カベルネフランの主要産地として知られるボルドー。そして、ブレンドでなくカベルネフラン単体で最高クラスのワインが造られることで有名なロワール地方が挙げられます。(ロワールでは「ブルトン」という別名で親しまれています)
そして、ボルドーと同じくカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローとブレンドして使用される南西地方も知られていますね。
フランス以外でも広まるカベルネ・フランの栽培
ただ、近年では隣国のイタリアでカベルネ・フランに注目が集まっており、カベルネ・ソーヴィニヨンからカベルネ・フランに切り替えて栽培しているところも多くなってきているそう。
その他にも、アメリカのカリフォルニアやハンガリーといった銘醸地をはじめとして、南アフリカや、チリなどでもよく栽培されています。日本でも山梨県を中心に栽培されていて、品質レベルはとても高いです。
また、カナダやアメリカではアイスワインの原料としても栽培されています。
このように年々世界各地で栽培面積が増えているのは、カベルネ・フランは比較的涼しい環境でも成長速度が速い上、素晴らしく出来の良いぶどうが育つという強みがあるからなのです。
カベルネフランの味わい、特徴、マリアージュ
カベルネ・フランで造られるワインを、異なる産地で飲み比べてみると、感じるアロマの違いに驚くかと思います。
フランスのロワールのような、冷涼な地域で育ったカベルネフランは、ピーマンのアロマを感じることで有名です。また、乾燥した地域のカリフォルニアやチリで育ったカベルネフランは濃縮感のあるイチゴジャムのようなベリーの香りがはっきりと感じられるでしょう。
そして、イタリアのフーリアで造られるカベルネフランは、なめし革のような独特の香りを持つことがあります。
全体的な印象で言えば、冷涼な地域で育ったぶどう特有の、青草のようなニュアンスや黒胡椒のようなスパイシーさが特徴的。ペアリングの幅は実に広く、フルーティーで軽いタンニンを持ち、清涼感をも感じさせる繊細な飲み口は、意外にもアジアン料理と合わせると力を発揮します。特に、タイ料理やベトナム料理といった香草やライムを使ったエスニック料理との相性は抜群です。
一方、ボルドーで造られたカベルネ・フランは、タンニンがしっかりしているので、赤身肉をシンプルに焼いたビステッカとの相性が良く、飲みごたえのあるフルボディが特徴。完熟した果実味や、独特のスパイシーなニュアンスが感じられます。
ソムリエが厳選!人気の「カベルネ・フラン」ワインおすすめランキングTOP10
10位 カベルネ フラン リミテッド エディション
まず最初にご紹介するのは、2012年がファーストヴィンテージの新興ワイナリー「ペレスクルス」の1本。
洗練されたスパイシーな香りと、しなやかなタンニンのバランスが良く、エレガントな一本に仕上がっています。
カベルネフランを主体として、カルメネールとプティヴェルドをブレンド。ミディアムボディで柔らかい飲み口で、チーズを使った濃厚な味付けの料理と相性が良いです。
9位 ヴァインランド カベルネフラン
9位に選出したのは、カナダのカベルネ・フラン。カナダといえば甘口のアイスワインが有名ですが、カベルネフランをはじめとした、リースリングやピノノワールといった品種も盛んに栽培されており、昨今ではスティルワインも注目が集まっている国です。
今回紹介する「ヴァインランド」はカナダのオンタリオ州を代表するワイナリー。こちらが経営するレストランは、国内のベストレストランTOP100にも選ばれています。
樽熟成由来の程良い樽香と、土のようなニュアンス。焼き鳥や肉じゃがといった甘辛いタレを使った和食に合わせてみてください。カナダワインの印象が変わるかもしれませんよ。
8位 井筒ワイン NAC カベルネ フラン
続いては、日本ワイン。長野県の塩尻で生まれたカベルネ・フランです。青草や土を想わせる香りが感じられて、下に残る甘味も優しく、上品に仕上がっています。ほど良い酸味とタンニンが心地良い赤ワインです。
うなぎの蒲焼きや、照り焼きチキンとあわせたい1本。和食との組み合わせがよいので、いろいろ試行錯誤が楽しめるワインです。
「井筒ワイナリー」は、カベルネ・フラン以外にも、カベルネ・ソーヴィニョンやシャルドネも非常にクオリティが高いので今後も注目のワイナリーです。
7位 アイアンストーン カベルネ・フラン
7位はカリフォルニアの「アイアンストーンヴィンヤーズ」が手がける、軽快なミディアムタイプのワイン。ブラックチェリーを想わせる甘い果実味が特徴です。
タンニンも程よく、口当たりも滑らかで、心地良い余韻が楽しめる赤ワイン。トマト煮込みやコクのあるチーズと一緒にお楽しみください。
アイアンストーンヴィンヤーズは、ほかの品種のワインも素晴らしい出来なので、ジンファンデルやプティシラーといった品種のワインもおすすめ!価格もリーズナブルなのが嬉しいですね。
6位 デキャゴン
「デキャゴン」のカベルネ・フランは、他のワインと違いコニャック樽とオーク樽で計10ヶ月熟成したカベルネ・フランのみを使った赤ワインです。
コニャック特有のドライフルーツのような凝縮された果実味はデキャゴンならではの個性がよく表れています。ブラックベリーや熟したプラムのアロマが香ります。
ニンニクやコショウをたっぷりと効かせた、濃厚な料理と良くマッチします。コスパも素晴らしいのでリピート確定の一本!
5位 サレンタイン ヌミーナ カベルネフラン
「サレンタイン」は、アルゼンチンワインの主要生産地であるメンドーサ州のウコヴァレーに位置するワイナリー。ワインの生産はアルゼンチンで40年以上の醸造経験を持つホセ・ガランテ氏が監修。カベルネ・フランを100%使用しており、カシスやブルーベリー、アニス等の特徴的な風味が香ります。
アロマと口当たりはボルドー右岸のポムロールを彷彿させる、エレガントな仕上がり。骨格のしっかりとした飲みごたえのあるカベルネフランを楽しむことができます。
4位 ブラック エステート ホーム カベルネ フラン
「ブラック・エステート」はニュージーランドの南島にある、カンタベリーのワイパラ・ヴァレーに位置するワイナリーです。降雨量が少なく、乾燥した気候は病害の心配も少なく、有機栽培を実践しています。
カベルネ・フランだけでなく、ピノノワールやリースリングの評価も良く、今後も目が離せない有力ワイナリーです。
なめらかなタンニンと、程よく香る土のニュアンスのバランスがとてもよいです。ミディアムボディで飲みやすい仕上がりなので、お肉料理全般とのペアリングがおすすめ!特にジビエ料理と相性がよいです。
3位 カベルネフラン 2017 ドメーヌ・モス フランス ロワール
3位はカベルネフラン本場、フランスのロワールからの1本。カシスやブルーベリーのニュアンスと、クローブやナツメグのような独特の香りが特徴。
非常に繊細なタンニンで、後味がすっきりとした清涼感があります。挽き肉を使ったグラタンや濃厚なトマトソースを使ったパスタやピザなどと合わせたい一本です。現地のロワールの風を感じる、上品な仕上がりです。
2位 クロー・ド・ネル アンジュ ルージュ カベルネ フラン
こちらもロワールで造られた1本。完熟したラズベリーやブルーベリーに、アフターは土っぽいニュアンス。ロワールのカベルネフランの特徴がよく表れています。
飲み口はミディアムボディで、余韻も長く残ります。牛スネ肉の煮込みや、牛タンシチューなどといった味付けのしっかりした煮込み料理と相性が良いです。
1位 ルティーニ・コレクション カベルネ・フラン
そして、栄えある1位に選出させていただいたのはアルゼンチンのワイン!世界のワインメーカーTOP30に選ばれた醸造責任者マリアーノ・ディ・パオッラ氏が手掛ける、プレミアムなワインです。
ブラックチェリーやカシスのような果実味のある味わいに加え、チョコレートやタバコのニュアンスも感じられます。アルゼンチン特有の強い日差しと昼夜の寒暖差の中で綺麗な酸味を育んだ、カベルネ・フランの特徴が良く表れているエレガントなワイン。
飲みごたえがしっかりあるフルボディなので、牛肉のステーキや串カツなど、ボリュームのあるお料理とあわせて楽しむのがおすすめです!
まとめ
カベルネ・フランはブレンドされる割合や栽培される環境によって、飲み口や香りのニュアンスが変わり、味わいのバリエーションが豊富です。幅広い料理に合わせることが出来るので、お好みの組み合わせなどを探してみるのも面白いと思います。
まずはボルドーブレンド。そしてロワールやカリフォルニア、アルゼンチンのようなカベルネ・フラン100%のワインを飲み比べて、違いを楽しんでみてくださいね。