いい日本酒造りの基本は「一麹、二酛(もと)、三造り」。
日本酒造りの3つの重要要素にも入っているくらい「酒母造り」は大切な工程なんです。
酒母を造る際には「酵母」を利用するのですが、本日はこの酵母に注目していきます。
日本酒を造るための酵母だけでも実は様々な種類があるのですが、今回は「真澄酵母」と呼ばれる酵母、“協会7号”について解説していきます!
酒母ってなんだろう?
酵母のお話をする前に、まずは「酒母」について少しご説明します。
酒母の具体的な定義は「水・麹・蒸した米を用いて優良な酵母を培養したもの」になります。
優良な酵母は酒母の中で、「糖分」を「アルコール」と「炭酸ガス」に分解します。
この作業には大量の酵母が必要になるので、まず酵母をたくさん増やしてからアルコール発酵をさせよう、となるのです。
酒母は「酒の母」と呼ぶように、日本酒造りにおいて根幹になる重要な役割を担います。
つまり、優良酵母をたくさん培養した酒母が良い酒母となるのです。
この酒母造りは「一麹、二酛(もと)、三造り」のうちの「二酛」にあたる工程で、上手く酵母を培養できるかどうかも造り手の腕の見せ所となっています。
「協会7号(真澄酵母)」ってなに?
協会7号は、日本醸造協会が頒布する酵母の一種です。
日本酒はもともと、蔵に住みついている微生物(酵母)の働きを利用して行われていました。
そのため蔵によって酒質にかなりのばらつきがあったのです。
しかし、明治期に入ってから日本酒を醸すのに必要となる「清酒酵母」の存在が確認されました。
そこで国は「優良な清酒酵母を見つけて純粋培養し、それを全国の酒蔵に提供しよう」と考えたのです。
日本酒の酒質安定と生産量増加を目指し、国家予算の柱となっていた「酒税」を安定的に徴収しようというわけです。
明治37年に設立された国立醸造試験所は、全国各地の蔵を回り醪(もろみ)を集め、明治39年に兵庫県・灘の「櫻正宗」の蔵から清酒酵母を分離するのに成功しました。
「櫻正宗」の蔵から発見され、培養されたものが「協会1号酵母」として限定的に頒布されました。
その後、協会2号…3号と培養されていき、「真澄」を製造する長野県の蔵元・宮坂醸造で発見されたものが「協会7号酵母」です。
「真澄」を醸造する蔵から発見されたため、「真澄酵母」という別名も持ちます。
また協会7号現在は最も多く使用されている酵母であり、「きょうかい酵母の横綱」と呼ばれているんです!
「協会7号(真澄酵母)」の誕生秘話
協会7号を発見した宮坂醸造のホームページにはこう記されています。
真澄が全国清酒鑑評会で上位を独占した昭和21年、醸造試験所の山田正一博士は、真澄諏訪蔵で醗酵中のモロミから極めて優れた性質を備えた酵母を発見。
「醸造協会酵母7号」と命名された真澄酵母はまたたく間に全国の酒蔵へ普及しました。「醸造協会酵母7号」と命名された真澄酵母はまたたく間に全国の酒蔵へ普及しました。 出典:宮坂醸造
神戸・灘の櫻正宗で発見された「協会1号」から、酵母の頒布が進められてきましたが、その7号である真澄酵母は、戦後すぐの1946年に発見され、協会7号として現在でも多くの酒蔵で使用されています。
七号酵母はもともと真澄の酒蔵に住み着いていた「蔵つき酵母」で、宮坂勝や窪田千里が育種したものではありません。二人が酒蔵や道具類の清掃を徹底させた結果、優良酵母が育つ環境が整ったということはあったと思います。 出典:宮坂醸造
酵母は生き物。
「いい酵母を作ろう!!」と思ってもすぐに成果が現れるものでもありませんし、成果が出ないことだって十分にありえます。
それでも蔵の衛生管理を徹底し、酵母が好む環境を作ろうとした真摯な姿勢のおかげで、今の協会7号が存在するのですね。
「協会7号(真澄酵母)」で醸したお酒の特長
この酵母を使用した「真澄」は、昭和21年の全国新酒鑑評会と全国清酒品評会の両方で3トップを独占するという異例の快挙を成し遂げました。
発見当初の七号酵母は華やかな吟醸香を醸し出す酵母でしたが、時間の経過とともに少しずつその性格を変えてきました。
こういったところも酵母の面白さですよね。
現在の協会7号は芳香がよく、発酵力が強いことから、普通醸造用として広く使用されています。
酵母に協会7号を使用した日本酒は、落ち着いた香りとバランスのとれた味わいが特長的。
クセが少なく万人ウケする安定した味わいのため、多くの蔵から採用されているのです。
まとめ
いかがだったでしょうか。
酒米や精米歩合に注目するという方は多いと思いますが、ぜひ使用酵母にも注目して「日本酒ツウ」に近づいてみてくださいね!!
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