何ものにも染まらず、他の色までもを塗りつぶしてしまう黒。力強いイメージは、ビールの世界においても同様です。それゆえ、黒ビールってものすごく飲みにくそう、と敬遠している方も多いのでは?
確かに、焦げ味を伴う苦味は黒ビール独特のもの。しかし、口に含めば意外や意外。コーヒーやチョコレート、フルーツの香りなどの甘みを感じることもできます。
そもそも黒ビールとは?
黒ビールに明確な定義はありません。色が黒ければ、みんな黒ビール。すべてに共通するのは、コーヒーのように麦芽を焙煎することによる独特の色と焦げ味です。造り方の違いによって、大きく次のようなスタイルに分けられます。
スタウト
焙煎した麦の深い苦味が感じられる、アイルランド発祥の上面発酵ビール。クリームのようななめらかな泡が特長です。
シュバルツビア
シュバルツとは、ドイツ語で「黒」のこと。下面発酵で、苦味だけでなく、カラメルやチョコレートのようなほのかな甘味を感じます。日本の大手メーカーの黒ビールはこのスタイルです。
デュンケル
ドイツ語で「濃い」という意味を持つデュンケル。深いブラウンであることが多いデュンケルですが、もはや黒ビールの域と呼べるほど暗い色のものも。下面発酵で、苦味よりも甘みや香ばしさが引き立ちます。
おすすめの黒ビール~海外ビール編~
ギネス・エクストラ・スタウト(Guiness Extra Stout、アイルランド)
世界で最も有名な黒ビールといえば、ギネス。グラスの向こうが見えないほどの漆黒に強烈な苦味を想像してしまいますが、その実とてもクリーミィ。ちなみに、ギネスの醸造所で飲めるできたてスタウトは、まるでカフェラテのような香味と甘味がいっぱいに広がり、スタウト=苦いという概念が一瞬にして吹き飛びます。
ヴェルテンブルガー・バロックデュンケル(Weltenburger Barock Dunkel、ドイツ)
ワールドビアカップをはじめとする国内外のコンペティションで多くのメダルを獲得するドイツの老舗ブランド。醸造所のあるヴェルテンブルガー修道院では、夏になるとビアガーデンが開かれます。まさに、聖地。
ケストリッツァー・シュバルツビア(Kostritzer Schwartzbier、ドイツ)
かの文豪ゲーテが愛した黒ビール。ゲーテの友人いわく、「彼はビールとパンで生きている」のだそう。フルーツをビターチョコレートでコーティングしたような味わい。
ライオン・スタウト(Lion Stout)
アジアのビール=さっぱり系というイメージを払拭するスリランカ産スタウト。しっとりクリーミィな口当たりと、しつこくない香味のバランスが秀逸。アルコールが鼻に抜ける感覚も心地いい黒ビールです。
おすすめの黒ビール~国産クラフトビール編~
箕面ビール・スタウト
ドライな口当たりと豊かな風味がベストマッチしたスタウトは、黒ビール初心者にもおすすめ。ラベルもかっこいいですね!2009年にイギリスのビアコンペティションでワールドベストスタウト第1位に輝いています。
COEDO 漆黒(シュバルツビア)
焙煎麦芽のこっくりとした風味を楽しみたいならこれ。苦味や酸味など黒ビール独特のクセを減らし、香ばしさを前面に押し出しています。「Shikkoku(漆黒)」というサブネームもステキ。
まとめ
ごっくんごっくんと喉越しを楽しむピルスナータイプのビールと違い、その風味と余韻をちびちびと味わいたい黒ビール。夜が長くなるこれからの季節におすすめです!