イスラエルと聞いてワインを想像する方は少ないかもしれません。しかし実は、イスラエルのワイン造りは5000年以上の歴史があり、古くからワインが造られていました。
今回は日本ではまだ馴染みがないながらも、世界的に評価が高く人気の「イスラエルワイン」のおすすめ10本をソムリエが厳選してご紹介。
さらに、その味わいや歴史まで詳しく解説していきます。
イスラエルワインの歴史
イスラエルの国土はとても狭く、日本の四国ほどの広さしかありません。しかしながら、300を超えるブティック・ワイナリーが集まっており、高品質なワイン造りをしています。
イスラエルはワイン造りに5000年以上の歴史がある国ですが、第一次世界大戦が終わるまで、約400年に渡ってオスマン帝国に支配されていた背景があります。さらに、イスラム教による支配から数えるとその期間は約1200年。
その期間はワイン作りが禁止されてしまい、当時のイスラエルの土着品種のぶどうは、ほとんどが引き抜かれてしまったと言われています。
そのため、ワイン文化が消えてしまった期間が非常に長く、イスラエルでワインを造っていることを知らない人も多いかと思います。
イスラエルワインが世界に知られるようになったきっかけ
イスラエルでは、1882年にシャトー・ラフィットのオーナーであったエドモンド・ド・ロスチャイルド男爵がイスラエルにカーメル・ワイナリーを設立したことがきっかけで、1990年代以降にブティック・ワイナリーが次々と生まれていきました。
当初はユダヤ人向けの「*コーシャワイン」作りが中心でしたが、次第に様々な品種のワイン造りを造るようになっていきました。
*コーシャワイン= ユダヤ教の教義にのっとったコーシャの認定を受けたワイン。また、ぶどうは神聖なものとされているので、「畑を7年収穫して1年休めせる」「ぶどう畑の10%を収穫しないで誰でも収穫できるようにする」などの細かい規定があります。そのため、コーシャワインを造るときは、この規定に則る必要があります。
有名ワイン評論家ロバート・パーカーによる高い採点で一躍有名になったイスラエルワイン
そして2007年に、ワイン評論家として最も有名なロバート・パーカー氏が、9つのワイナリーのワインに90ポイント以上のスコアを付けたことから、イスラエルワインは世界基準のワインとして世界中に知られるようになりました。
以下、ロバート・パーカー氏が高評価をつけたワインです。
・ヤティール・ワイナリー
・ゴランハイツ・ワイナリー
・ツオラ・ヴィンヤード
・ドメーヌ・デュ・カステル
・ガリル・マウンテン・ワイナリー
・カーメル・ワイナリー
・チューリップ・ワイナリー
・ペルター・ワイナリー
・クロ・ド・ガット・ワイナリー
聞きなれない名前が多いかもしれませんが、日本だと最も有名なのが後ほどランキングでも多数ご紹介する「ヤルデン」を生産しているゴランハイツワイナリーでしょうか。
イスラエルワインの主な生産地とぶどう品種
イスラエルのワイン産業においては、バルカン ワイナリー、カーメル ワイナリー、テパーバーグ ワイナリー、ゴランハイツ ワイナリー、アルツァ ワイナリーといった5つのワイナリーが市場の7割以上を生産しています。
しかしながら、小規模でも高品質のワインを生産している造り手がたくさんあるのがイスラエルワインの面白い部分。世界のワイン好きからも注目を集めており、今後もイスラエルワインの評価は高まっていくことが予想されます。
イスラエルで造られるワインに使用されるぶどう品種は国際品種が多く、赤ワインを造る黒ぶどうはカベルネ・ソーヴィニョン、カリニャン、メルロー、シラーなどが多く栽培されています。そのため、ボディのインパクトがはっきりとした、飲みごたえのあるタイプが多く造られています。また、白はシャルドネ、ソーヴィニヨンブランが多く、次いでエメラルドリースリングが生産されています。
エメラルドリースリングは、リースリングとミュスカデルを交配した品種で、1970年代以降にカリフォルニアから持ち込まれました。エメラルドリースリングは他の国ではあまり造られていないため、イスラエル独自の個性が出ているワインと言えます。
イスラエルは赤ワインの方が生産、消費量共に多いですが、白ワインの中では王道のシャルドネと、このエメラルド・リースリングの人気が高いです。
ソムリエが選んだイスラエルワインランキングTOP10
10位 アヴィヴィム
まずご紹介するのはこちら。ガリルマウンテンで造られた白ワイン「アヴィヴィム」。
アヴィヴィムは、ワイナリー近郊の「モシャブ」と言われるイスラエルの農業共同体の名前で、現地のヘブライ語で「春」を意味する言葉です。
シャルドネに少量のヴィオニエがブレンドされており、フレンチオークの新樽で発酵・熟成ていて、果実味のあるフルーティなアロマが特徴。オーク樽由来のバニラやバターの風味も感じることができます。
後味にかすかに苦味を感じるので、ブレンドされたヴィオニエの特徴がよく引き出されています。
9位 マター キュミラス
マターワイナリーは、コーシャワイン専門のワイナリーです。ワインの銘醸地、ゴラン高原で醸造しています。
カベルネ・ソーヴィニヨン40%、メルロー40%、カベルネ・フラン20%のブレンド比率で、フレンチオーク樽でマロラクティック発酵をし、14ヶ月熟成された「マター キュミラス」は、5000円少々とイスラエルワインの中では高めの値段設定。しかしながら、リッチな飲み口と長い余韻を楽しむことができます。
上ミスジやトモサンカクといった赤身のステーキと相性バッチリです。
8 位 ガムラ・ブリュット
お次にご紹介させていただくのは、ゴランハイツワイナリーで造られたイスラエルのスパークリングワインです。
青リンゴやトロピカルフルーツのような爽やかな香りが特徴で、味わいはキリッとした辛口。お魚料理やオイル系のパスタとの相性が良く、きめ細やかな泡立ちが食欲をそそります。
このゴランハイツワイナリーは比較的新しいワイナリーですが、最先端の科学技術と伝統的な醸造方法を独自に組み合わせて高品質なワインをたくさんつくっています。
スパークリングはもちろんのこと、白や赤もクオリティが高いワインが造られているのでそちらも要チェックです。
7位 レカナッティ シャルドネ
7位は、レカナッティのシャルドネ。リンゴやパイナップルのアロマがあり、樽由来のバニラやクレームブリュレのような樽熟成の風味が相まって、優雅な余韻が長く残ります。リッチな飲み口に仕上がったボリューミーなシャルドネです。
魚介系の料理はもちろんですが、グリルされたチキンや、スモークチーズなどとも相性が良く、幅広い料理に合わせることができます。
6位マウント・ヘルモン・レッド
6位は国際的に高い評価を受けているゴラン・ハイツ・ワイナリーから、「マウント・ヘルモン・レッド」。
マウント・ヘルモン・レッドは、冷涼なゴラン高原で造られたクラシックなボルドー品種5種をブレンドして作られます。カベルネ・ソーヴィニヨンとメルローが主体で、カベルネフラン、マルベック、プティベルドを少量ずつ混ぜています。マロラクティック発酵の後、無濾過で瓶詰めすることで、鮮やかで芳醇な果実味に、スパイスとハーブのニュアンスが香る複雑な味わい。
複雑な味わいのミディアムボディで、ミモレットやゴーダチーズ、トマトベースのパスタやラザニアとの相性はとても良いです。
5位 ユデアン ハイツ プティ・シラー
5位は、ユデアンハイツで造られたプティシラーです。ユデアンハイツは2000年に設立された新しいワイナリーですが、年々出荷量を増やしており、今や世界中に輸出するまで成長したブティックワイナリーです。
口に含むと豊富なミネラルを感じ、溌剌とした酸味が際立っています。タンニンもしっかりと感じられ、凝縮した果実とほんのり感じる苦みの流れを感じることができます。プティシラー100パーセントで造られているので、色味も濃く、インパクトのあるボディです。
グリルしたステーキやBBQなど、味付けのしっかりしたお肉料理と合わせるのがおすすめです。
4位 ビンヤミナ ヨゲブ カベルネ・ソーヴィニヨン プティ・ヴェルド
ビンヤミナワイナリーは、イスラエル建国から4年後の1952年に、ハンガリーから移住してきたJoseph Zeltzerによって設立されたワイナリーです。 2008年にはイスラエルのワイン産業を牽引してきた個人投資家によって買収されました。
カベルネ・ソーヴィニヨンとプティベルドーのブレンドで、アニスのような甘美な香りがします。ワインの一部はステンレススチールタンク熟成で、残りはオーク樽で6ヶ月熟成しているワインは、濃厚な風味が特徴です。
3位 ヤルデン ヴィオニエ
さて、ここからのベスト3は全て同じワイナリー「ヤルデン」から選出させていただきました。
日本国内では「イスラエルワインといえばヤルデン!」と言われるほど認知度があるワインです。アロマ豊かなこのワインからは新鮮なモモ、アプリコット、花を思わせる香りとともに微かなスパイスが感じられ、その背景に広がる滑らかなオークが全てを際立たせています。
ヴィオニエ特有の繊細な苦味が特徴的で、舌に長く残ります。ブルーチーズやエスニック料理といった、少し癖のある料理に合わせることができます。
2位 ヤルデン シャルドネ
アロマ溢れるこのワインは、トロピカルフルーツやパイナップルのような果実味のある香りが広がります。
リッチなオーク樽由来のバニラ香とミネラルのニュアンスがはっきりと感じられ、上品な味わいに仕上がっているのが特徴。ワインスペクテイター誌では、96年ヴィンテージがイスラエルの白ワイン第1位として紹介されました。
魚介料理やグリルチキン、ポークチョップといった脂っこい料理にも合わせられるワインです。
1 位 ヤルデン カベルネ・ソーヴィニヨン
今回、イスラエルワインで1位に選ばせていただいたのは、ヤルデンのカベルネ・ソーヴィニヨンです!
チョコレートやタバコのニュアンス、樽由来のなめし革といったアロマが感じられる複雑性のあるワイン。濃厚な深い味わいで、肉料理全般、ジビエなどとも相性抜群です。
こちらもワイン・スペクテイターなどのワイン専門誌で、イスラエル赤ワインの第1位として紹介されています。また、イスラエル航空のファーストクラスのワインに採用されているワインとしても知られています。
ヤルデンは世界中のワイン評論家から高い評価を受けていますし、日本でも流通量が増え、人気が高まってきています。その中でも、このカベルネ・ソーヴィニヨンは特に秀逸。
煮込み料理やすき焼き、鰻の蒲焼といった和食との相性も抜群に良いです。
まとめ
いかがでしたか?この記事を読んでイスラエルのワインに興味を持っていただけたら幸いです。
イスラエルワインは全体的にやや高めの価格帯が多いですが、今回選んだトップ3の「ヤルデン」は特におすすめなので、是非飲んでみてください!